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2017/10/24 18:18 |
あの日々はもう二度と戻らない 〜 outsider's report 前編
このお話は、NEW WIND管理人Nの書いた『もう一度あの日のように~再会~』を、「Heel So Bad」のHIGEさんが別の視点から描いてくださった作品です。
 なおHIGEさんの承諾を得て、転載させていただいております。
 ~再会~ と合わせてお読みいただければ幸いです。





以下のSSはレッスルエンジェルスの世界観や、「NEW WIND」のN様により執筆された「NEW WIND」の設定、キャラクターを参考に描かれていますが、内容についてはHIGE個人の創作となります。必ずしも公式設定や開発者の意図、「NEW WIND」の原作、ファンの皆様一人一人の世界観に沿う内容ではない場合がありますことを予めご了承願います。
  ++  ++  ++  ++  ++
週刊セキララ 春季特大号
この世の真実を追い続けるコラム「outsider's report」NO.74
「NEW WINDという風の行方 〜伝説の終焉〜」
まず始めに言っておきたい。
18年もの長い間プロレスを見続けて来た私にとって、最も許し難いことがひとつだけある。
それは、不様な老醜を晒すプロレスラーの存在だ。
かつて得た栄光の輝きを食い潰し、残滓の一滴まで絞り切ってもなお、真剣な闘いの場であるリングに上がり続ける厚顔無恥さ。
いつか憧れたスーパースターの成れの果ては、無残に老いた初恋の相手に近しい残酷さで、ファンの胸をえぐる。
在りし日の勇姿が遙か高みにあるからこそ、現実のうらぶれた姿との落差の分だけ、人々は深い落胆を禁じえない。
昨今、女子プロレス界の盟主であるNEW WINDが、落日の兆しを見せている。
選手層の質と厚み、試合内容の評価、観客動員数……どれをとっても、頂点を極めた頃には程遠いのが現状だ。
大きな団体であるが故に、多数の選手を抱える体力の消耗もまた大きく、フロントサイドは団体を存続させるだけで精一杯なのだろう。確かにこれは、紛う事なき窮状ではある。
しかし、だからと言って、絶対に踏み越えてはならない一線があるのではないか。
プロレス界の盟主として、決して捨ててはならない矜持があるはずではなかったのか。
NEW WINDは、17周年記念興行として新日本ドームで興行を打つという。
この苦しい時期に日本最大級のドーム会場で大会を開催するリスクは計り知れない。
盟主が打ち出した窮余の策は、とうの昔に引退した選手を引っ張り出し、郷愁を餌に昔日のファンたちを会場に呼び込もうという悪趣味なものだった。
引退して久しい彼女たちはもはやプロレスラーではない。プロではなく、素人である。
つまり社運を賭けた世紀のビッグマッチで、素人が大トリを飾るというわけだ。
この苦しい時期にも応援し続けてくれるありがたいファンにとっても、応援すべき“今”をないがしろにされ、ロートル同士の戯れでお茶を濁される屈辱は甘受できまい。
我々プロレスファンは、断固たる意思を持ってこの試合を評価しなければならない。
決して淡い思い出のフィルタにかけることなく、目を背けることなく、今を闘い続ける現役選手たちに引き比べて、正当な評価でもってこれを断じなければならない。
おそらく試合が終わった時、我々は破壊し尽くされた憧憬と共に思い知るだろう。
南十字星はもう輝くことなく、不死鳥は甦りなどしないのだと。
夢の終わりを目撃する覚悟がある者は、新日本ドームまで足を運ぶべきだ。
あの日、美しい夢を魅せてくれたスカイブルーのリングに宿った、伝説の終わりを見届けるために。
(マスターシュ黒沢)
 --- --- --- ---
自分の署名で締め括られた記事を推敲し終わり、仰向いて紫煙を噴き上げる。
短くなった煙草を灰皿の端で乱暴に揉み消すと、今にも崩れそうな吸殻の山にひとつ加えた。
くだらないゴシップ以外の記事……それもプロレス絡みの記事を書くなど、随分と久しぶりではあったが、筆は軽やかに走った。
俺の記事はやたらと辛口な批評が多く、一部の捻くれた層にウケがいい。
そして当然ながらその何倍も、多方面から忌み嫌われている。ペンネームにも使っているトレードマークの口髭を揶揄した「毛虫」なんて仇名は、嫌われ者の代名詞としてもなかなか当を得た表現だ。
何にせよ、箸にも棒にも掛からない虚実入り乱れたゴシップ記事を、いかにももっともらしく書き殴ることのできる俺の執筆スタイルは、その手の雑誌に重宝されている。
そんなろくでなしの記者が、義憤に駆られて書き上げたろくでもねぇ記事。
義憤?そう、ゴシップ記者が口の端に上らせるのはお笑い草だが、これは義憤なのだ。
NEW WINDが押しも押されぬ最高のエンターテインメント足りえた頃。
俺はまだ鼻ったれの若造で、駆け出しのプロレス記者だった。NEW WINDの興行に帯同し、あの熱狂的な年月を共に駆け抜けた。
今思い返せば、あれこそ黄金時代というものだったろう。
追い続けた不死鳥が真っ白な灰に燃え尽きた時、俺のプロレスへの情熱も燃え尽きた。
それからフリーの記者となって、新しく燃えられるものを探し続けたが、結局あんなにも熱く胸を揺さぶるものは見つからなかった。
——あの日々はもう二度と戻らない。
それは、分かりきった事実だ。曲げることのできない現実だ。
だというのに、過去を掘り起こして道理を強引に捻じ曲げようとしている奴らがいる。
ファンの心に綺麗に収まった思い出を切り売りする、あくどい商売根性が気に食わない。
戦い終えて安寧なる日常に帰還した戦士を、再び戦場へと駆り立てる酷薄さが許せない。
俺のような三流週刊誌を根城にするゴシップ記者にだって、誰にも汚されたくない大切な思い出ってものがある。
それを土足で踏みにじると言うのなら、この薄汚れたペンを手に戦うまでだ。
曖昧模糊とした業界の実情を衆目に晒し、裏切りの存在を示してファンに警鐘を鳴らす。
薄汚れているからこそ書ける記事を書いてやる。
ふと、机に無造作に転がるガールズゴングの、読み返しすぎて勝手にページが開いたままの記事を見やった。
伊達遥と、南利美の手記。
麗しき友情。清廉な決意。純粋な情熱。プロレスへの真摯な想い。
なんとも彼女たちらしい、数年分の想いの丈が綴られた、心に響く熱い文章だ。
だが、業界の暗がりを見続けて、荒んでしまった俺の心が囁く。果たして本当に、そんなにも澄み切った心を、未だに持ち続けていられるのだろうか。これが、彼女たちの本心を綴ったものである保障など、どこにもないではないか。
目蓋を閉じれば、それらの言葉は確かに、彼女らの声音で素直に胸に沁み入る。
だが、ひとたび目を開ければ、モニタに映る年を重ねた自分の顔が、色々なものが失われるには十分すぎる時間の流れを、否応もなく突きつけるのだ。
とうに終わった夢なんぞに惑わされるな、現実を見ろ——と。
少し斜めに傾いだカレンダーに、首をめぐらす。赤く丸で囲われたNEW WINDの新日本ドーム興行開催日。今日幾度目だかの確認をしてから、煙草に火を点けた。
煙草を咥え、胸一杯に発ガン性物質を吸い込む。
立ち昇る煙の中、燃え尽き、灰と化して、短くなっていく煙草が、夢の終わりを思わせた。
  ++  ++  ++  ++  ++
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2015/05/20 23:27 | Comments(0) | あの日々はもう二度と戻らない 〜 outsider's report 

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