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2017/07/26 17:28 |
あの日々はもう二度と戻らない 〜 outsider's report 後編_3
このお話は、NEW WIND管理人Nの書いた『もう一度あの日のように~再会~』を、「Heel So Bad」のHIGEさんが別の視点から描いてくださった作品です。
 なおHIGEさんの承諾を得て、転載させていただいております。
 ~再会~ と合わせてお読みいただければ幸いです。






以下のSSはレッスルエンジェルスの世界観や、「NEW WIND」のN様により執筆された「NEW WIND」の設定、キャラクターを参考に描かれていますが、内容についてはHIGE個人の創作となります。必ずしも公式設定や開発者の意図、「NEW WIND」の原作、ファンの皆様一人一人の世界観に沿う内容ではない場合がありますことを予めご了承願います。
  ++  ++  ++  ++  ++
目的地に近づくにつれて進みが鈍くなっていたタクシーを降りたとき、運転手の「あの付近が混雑している」という言葉の意味を正しく理解した。
巨大な新日本ドームを取り囲むように、人、人、人の群れが蠢いている。
NEW WINDの興行の他に、著名アーティストの路上ライブでもやっているとでもいうのか。
しばしの間、人々の連なる雑然とした光景を前に立ち尽くす。
俺は火を着けた煙草を深呼吸のように吸い込んでから、人の海へとダイブしていった。
掻き分けて行くうちに分かった。ざわめく人波の正体はNEW WINDの興行そのものだった。
会場の周りに張り巡らされたロープ際には、警備員と多数のアルバイトからなるスタッフが、沖に浮くブイよろしく人波に翻弄されている。
当日券を求める長蛇の列が、いまだ大会場に入りきらずにのたうっている。
会場外に設置されたいくつものビジョンを、足を止めて眺めている人々。
祭りの出店並に立ち並んだ、様々なグッズショップに群がる大勢のファン。
NEW WIND絶頂期もかくやという人込みに飲まれて溺れかける。
この荒波を一息で泳ぎきるのは、運動不足の体には不可能だった。道のり半ばで雑踏に立ち止まり、遠泳をした後のように荒い息をついていると、どよめきが耳に届いた。
顔を上げると、大きな野外モニターに試合の模様が映し出されていた。
小兵の選手が、大柄な選手をパワーボムで叩きつけるハイパースローの映像。
目を疑うような力の入った一撃だったが、相手もさるもの、これを返す。
闘っているのはノエル白石と八島静香だ。
確か第三試合だったはずだが、先にタクシーで見ていた試合とは段違いのエナジーを迸らせている。
テレビのバラエティなどでよく見かける白石だが、まさかこれほどのパワーの持ち主とは思わなかった。小柄な体格で「天然パワーファイター」などという触れ込みは、多分に色のつけられたものだと思い込んでいたが、どうやら色眼鏡をかけていたのは俺の方だったようだ。
いい膝が入って折れ曲がった八島の長躯を、リング中央で高々と抱え上げる。
そのままコーナー方向に駆けてのジャンピングボム。ターンバックルに豪快に叩き付けられた八島の体が、冗談のようにコーナーから跳ね返ると、もんどり打ってエプロンサイドに倒れこむ。紅い長髪が尾を引いて、そのまま場外へと転げ落ちる。
衝撃的な一撃を捉えた映像に、どよめきが波を打つ。
まだ底冷えする春の宵闇が、熱を孕んで膨れ上がる。
場外での致命的なパワーボムは危ういところで切り返され、今度は八島が主導権を奪った。
安堵の溜息と歓声が、夜の雑踏に満ちる。
八島静香の経歴はNEW WINDの中では随分と異色だ。ラフファイトを主としたヒールという、純粋な実力勝負で輝いてきたNEW WINDには相応しくない色物。
その印象もまた、色眼鏡の産物だったようだ。
荒削りな動きは荒々しい豪快さとなり、単純な鉄柵や鉄柱攻撃に力強い説得力を与えている。
場外戦で水を得た魚となった八島と対照的に、先ほどまで凄まじい殺気を見せていた白石は、完全に戦意を喪失していた。その姿は、高いポテンシャルを持ちながらも、なぜ彼女がトップに届かなかったのかを如実に表していた。
この二人の決定的な差は、素質や力量ではなくプロレスラーとしての心の強さだ。
リング上に舞台を移した闘いは、八島の猛攻が止まらぬままフィニッシュを迎えた。
長身を生かした八島のデスバレーが、跳び上がっての高みから申し分ない角度で決まる。
デンジャラスな大技で試合が決着し、拍手と歓声が勝者を称えて夜空に弾ける。
いつの間にか消えていた煙草を携帯用灰皿にねじ込み、新しい煙草に火を灯す。
二人の放ったビッグマッチらしい危険な大技は、かつてNEW WINDで繰り広げられた死闘を思い起こさせた。
絶頂期を謳歌していた頃のNEW WIND。その片鱗を垣間見た。
——だが、今夜闘うあの二人は“あの頃の二人”ではない。
肉体を削り、魂を削り、もはや削れるものがなくなって引退した2つの巨星。
燻らせた煙草の煙の向こうで、破壊的な技の残像が揺れている。
今宵壊れゆくのが、せめて思い出だけであるように。
そう、願わずにはいられなかった。
  ++  ++  ++  ++  ++
NEW WINDにて掲載された『もう一度あの日のように〜再会〜その17「現役の意地・3」』の時間軸におけるマスターシュ黒沢の動きを追ってみました。
ようやく黒沢も会場に駆けつけましたので、次回からは腰を落ちつけて観戦できればと思っております。じわじわと佳境に差し掛かってきたNEW WINDのビッグマッチ、次の試合も楽しみにしております!
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2015/07/22 22:39 | Comments(0) | あの日々はもう二度と戻らない 〜 outsider's report 

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