ＮＥＷ　ＷＩＮＤ

　　ＮＥＷ　ＷＩＮＤ社長風間新　手記より。


※サバイバー１版のリプレイの設定を使用していますが、これはリプレイではありません。

　まさか……現役時代のとっておきのあの技をまだ出せるのか？　今日の動きを見ている限りは十分できそうだけど……でも、まさかだよな。現役の選手だったそうそうできる技ではないのに……まさかな……。
　だが須永は両手をトップロープに置くと、ピョンと軽やかにとび上がりトップロープを踏んで、宙に舞った。
「げえええええっ！」
「スワンダイブかよっ！」
　いや、海外生活が長かった須永の場合ならスプリングボード式と言うべきだろうな。
そのまま両足を開脚した須永は、みぎりの首を正面から挟み込み、後方に回転し、超高速のウラカン・ラナを決めた。
「ダンディ・ドラゴンラナ……」
　まさかの大技に場内が沸く。
「フォール！　ワンッ～～！　トゥ～～！　スリ」
「やだああああああっ！！」
　みぎりはギリギリでそれを返す。
「ま・負けたくないです……」
「いいぞ、みぎり～～！！」
「み・ぎ・り！　み・ぎ・り！」
　立ち上がったみぎりは大歓声を背に攻め込む。序盤苦戦したチョップ合戦がもう一度繰り広げられたが、みぎりのチョップはあの時とは違って魂が込められており、ついには須永を打ち負かした。
「えいっっ！」
　棒立ちになった須永に助走をつけたみぎりのラリアットが炸裂し、須永の体が一回転してスカイブルーのリングに叩きつけられた。
「……ふふっ……」
　須永……いやダンディさんが笑みをもらしながら立ち上がってくる。最後はダンディ須永として受けて立つつもりなのだろう。
「これでっ！！」
　みぎりはバイオハザード・ボム（変形スプラッシュマウンテン）の体勢でダンディさんを持ち上げた。先ほどはウラカン・ラナで切り返したダンディさんだが……。
「いきますよおおおっ！！」
　みぎりの容赦のない全力全開のボムが決まった。
「ぐふっ……」
　さすがのダンディさんもこれは厳しいだろう。
「ワ～ンッ！　トゥ～～！！　スリ～～っ！」
　バシッ！
「えっ？」
　完璧なスリーカウントが入るかと思ったのだが、最後のカウントを数える直前にＤＥＮＳＯＵレフェリーの右手首が、ダンディさんの伸ばした右手にキキャッチされていた。
「げええええっ！？」
　驚きの声が起こる中、時間切れを告げるゴングが場内に鳴り響いた。


　　＊　　　＊　　 ＊


「なんとか負けずに済んだようですな」
　ダンディさんはシップのにおいを漂わせながら苦笑する。
「みぎりの勝ちだと思ったんですけどねえ」
「ふふっ……普通なら負けなんですがレフェリーがいいところにいたので」
「ＨＡＨＡＨＡ、感謝しろよミスター」
「感謝していますよ、ミスターＤＥＮＳＯＵ。今日は貴方のおかげで好い試合になりましたしな」
　ダンディさんとミスターＤＥＮＳＯＵはがっちりと握手をかわした。
「ＨＡＨＡＨＡ！　俺様のレフェリングテクニックなら当然だぜ。また裁いてやってもいいぜ」
「ぜひお願いしますぞ」
　あっさりとダンディさんは承諾する。またリングに上がるつもりでいるのだろうか。
「任せておけ。ＨＡＨＡＨＡ！　だけど、アレ（毒霧）は勘弁してくれや。ちょいっとキッツイぜ」
「考えておきますよ。ま、あれはスーパーヒールがやったことなんで、私に言われても困るんですがね」
　ちなみにダンディ須永の戻った後ははスーパーヒールモードの時の記憶はないということだ。
「ダンディさん……」
「なんでしょうかな？」
「ダンディさんは以前みぎりに力のコントロールを教えていましたが、今回も……」
「いくつか教えたいことがありましてな。試合を通してそれを伝えたつもりです。まあ、それが伝わったかどうかは今後のみぎり嬢の試合を見ないとわかりませんがね。多少は試合を通して成長してくれていれば、老体に鞭を打ったかいがあるというものです」
「そうですね。ダンディさん、明日はちゃんと休んでくださいね。多分ダメージでますよ」
「……明日どころか３日は動けないかもしれませんぞ。さすがにリングに立つというのは……思った以上に消耗しますからな」
　ダンディさんは穏やかな笑みを浮かべていた。


　ＮＥＷ　ＷＩＮＤクリスマス特別興行　大空みぎり　ＶＳ　ダンディ須永　～完～