ＮＥＷ　ＷＩＮＤ

NEW　WIND社長　風間新手記より
～NEW　WIND３０万HIT記念特別興行～

※今回のお話は、リプレイの正史ではないため、全員全盛期の力を持って登場します。
ただし、基本的な設定は主に、リプレイサバイバー１版NEW　WIND編の設定に準じています。

 彼女は決してプロレスラーの強さという部分においては、先輩たちにも、同期にも……そして後輩たちにも及ばないだろう。
 しかし彼女には華がある。アイドルとしても活躍する抜群のルックス、そして自らの魅せ方を心得ているプロデュース能力は逸材の域にある。
 だが、資質至上主義であるNEW　WINDにおいては、本来であれば”存在しないはずの選手”だった。もしオーディション受けた時期がずれていたら、NEW　WINDの藤島瞳は誕生していなかっただろう。

 そう、彼女は幸運にも”団体変革期”と呼ばれる時期にオーディションを受けたのである。　
　南利美、伊達遥、マッキー上戸……といった一期生たちが、スカイブルーのリングを去り、その後を支えた主力選手……カンナ神威・草薙みこと・武藤めぐみ・結城千種の時代も終わりを告げた後の団体変革期。
　新しい風を吹き込むためにと、色々と試行錯誤を繰り返す中だったからこその採用だった。

　それでも彼女はダンディさんの厳しい特訓（彼女の場合は特別レッスンと呼称していたが）を繰り返し、現在はIWWFジュニア王座を手にするまでに成長している。

 そして、今回の対戦相手ギムレット美月は、久々のプロレスラー復帰戦となる。元々は他団体でレスラーとして活躍していたが、所属団体が消滅したことによりフリーに転向。そのころ行っていた中途採用オーディションを受けにきたのだが、合格点に満たずレフェリーとして採用した経緯がある。
　これはたらればであるが、藤島と同じタイミングであれば玄人好みファイトスタイルを評価してレスラーとして採用された可能性は高かったと思う。
　今回はタイミングの問題で採用された藤島と採用されなかった美月の因縁の対決なのかもしれない。

「ＯＫ、ＧＯ！」
　トニー館の合図で試合開始を告げるゴングが鳴らされた。
「美月君はどう動きますかな」と、ダンディさん。
　たしかにブランク空けの復帰戦だけに注目したいところだ。
「エイッ！」
　先に仕掛けたのは藤島。いきなり打点の高いドロップキックで美月の顔面を打ち抜いた。
「ぐうっ！」
　強烈な一撃で美月はダウン。
「いっくよー！」
　藤島はその場飛びのフットスタンプを美月の腹部に突き刺す。
「……ぐううっ」
「もういっちょー！！」
　この声にファンから「いけ、ひとみ～～！」の声が飛ぶ。藤島はそれに軽く頷くと、ロープへ走って反動をつけてフットスタンプ！
「ぐうううううっ……」
「まだまだっ！」
　そのまま反対側のロープへ走ると今度はセントーン。さらにその場飛びのムーンサルトプレス！
「ワン、ト」
　美月これはカウント２ぎりぎりで返す。
「まだ、やられるわけには…」
　片膝立ちで立ち上がろうとする美月に対し、藤島はシャニングニール式キックで顔面を蹴り飛ばす。
「うぐう……」
　後ろに倒れていく、美月の鼻から血が噴き出す。
「フォール！」
　藤島はそのまま片エビで固め、トニー館がカウントに入る。
「ワン……トゥ」
　美月はこれを返すことができず、試合終了のゴングが打ち鳴らされた。
「１分１５秒、１分１５秒……シャニング式ニールキックで勝者、藤島瞳！」
　まさかの秒殺劇。美月は何もさせてもらえなかったな。
　場内がざわつく中、藤島はマイクをつかんだ。
「美月さん……これがうちが、ずっとレスラーとして頑張ってきた実力やよ。プロレスラーの技って効くでしょ？」
　美月は鼻をタオルを抑えたまま、軽く頷く。
「でもね、うちはまだまだここのリングでは強くないんよ。もっと強烈な技を使う人だっていっぱいおるしね。だから、もし今後もこのスカイブルーのリングに上がってくるつもりがあるんやったら、覚悟してあがってくるんよ。うちは、ちゃんとしたルールでもう一度美月さんと勝負してみたいんやから」
　藤島はにこっと笑い、美月にマイクを手渡した。
「何もできず悔しい。。。でも、本気で当たってきてくれてうれしかったです。今日は完敗だったけど、次はやり返します」
　ギムレット美月復帰戦完敗。これがやはり現実だろう。藤島もあえて潰しにいったのだろうな。
　
　
　
　強さで魅せるタイプではない藤島があえてプロレスラーとしての強さを見せた一戦だった。