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2024/03/29 00:07 |
女子プロお嬢様伝説ユイナ 
 NEW WIND社長 風間新手記より



 今日は正月休み。私達NEW WINDのメンバーは、総出で映画館へと繰り出していた。しかし、これだけの若い女の子を引き連れて行動するのはちょっぴり恥ずかしいな。
「なんだか引率の先生みたいだな…」
 私達が観る映画は、お正月公開の娯楽映画『女子プロお嬢様伝説ユイナ』うちの氷室紫月が出演している映画である。通常、全員で観に来ることはまずないのだが、今回の氷室は出番も多いし、何よりも女子プロレスを題材にしているというのだから、見逃せないだろう。
「恥ずかしいです…」
 氷室はうつむいているがこれも運命だと思って諦めなさいな。
「いや~楽しみだなあ。紫月がどんな演技をするのかがよ。」
「そうだよね。私も楽しみだな。」
 ジューシーペアがはしゃぐ。
「私も楽しみです。ね、めぐみ。」
「う、うん。ちょっとドキドキする。」
 結城は当然の反応だけど、武藤の反応は意外。
「武藤先輩も、ドキドキするのですねえ。」
「珍しい…よね。」
「…確かに。」
「ふふ、実はカンナさんもドキドキしているのですよ。」
「うるさい。黙れ、みこと。」
「うふふ、照れないでくださいな。」
 カンナはもちろんマスク着用である。ある意味凄い度胸だと思う。
それにしても、みんなはしゃいでいるなあ。
「静かにしなさい。はじまるわよ。」
 南の一声でみんな静かになる。ふふ、一番引率の先生ぽかったのは南だったか。 
 館内が暗くなり予告編が始まった。さすがに子供でも見れる娯楽映画だけに、予告も子供向けの内容のものが多いな。
「もう春休みの映画の予告か。」
「先を見越すのはいいことでしょ?」
「まあな。うちも考えるか。」
「社長、南さん、本編始まりますよ。」

  

『女子プロお嬢様伝説 ユイナ ~えっ!アイドルがリングに?』

 芸能事務所 風村プロダクション社内。

 この事務所は、現在は中堅の芸能事務所として名前を知られるようになっているが、それはつい最近のこと。これまでは大したタレントもおらず、吹けば飛ぶような弱小プロダクションであった。だがしかし、一人の金の卵が入ってきたことで、一気に急成長し中堅事務所となっていた。
「ユイナちゃん、ちょっといい?」
マネージャーらしい男が声をかける。
「はい、なんでしょう!」
 ユイナと呼ばれた少女は元気よく応えた。

 彼女こそは風村プロの金の卵であり、全国お嬢様コンテストに優勝して芸能界入りした『スーパーお嬢様アイドル』神楽坂ユイナである。
 もっとも彼女の家は只の中流家庭であり、まったくお嬢様ではないのだが…それに当人はいたって普通な、元気な女の子でありとてもお嬢様という感じではない。なにしろ、お転婆・能天気・お気楽なのである。
「ユイナちゃん、明日からプロレスやってくれるかな?」
「え?プロレスってあの…リングで人を殴ったり、蹴ったり投げたりするアレですか~?」
「そうだよ、ユイナちゃん。よく知っているね。」
「えへへ。昔大好きだったんですよね~。『ジューシーペア』とか。」
「昔って…そのコンビはまだ現役だよ、ユイナちゃん。『ビーナスペア』でしょ?」
「あ、そうだった。間違えた。あははははは。」
 ユイナは大きな口を開けて笑ってみせた。
「ところで…何でプロレスなんですか?」
「うん、実はお嬢様プロレス団体『ローズ・ウイップ』という団体があってね。」
「お嬢様プロレス団体ですか?」
「うん。で、『偽のお嬢様である神楽坂ユイナを認めない』という話になってしまって、どうしても認めてほしければリングに立てって。」
「で…立たないといけないの?」
「うん…うちの親会社のさらに親会社がね…そこの団体を経営しているから…逆らえないんだよ。」
「え~~。痛いのいやだよー。」
 これは当然の反応だろう。
「ゴメンね、ユイナちゃん。僕らに力がないばっかりに…」
「マネージャーさん…」
 ユイナは基本的に優しい子だ。だから涙を流すマネージャーの姿に心を打たれてしまった。
「私…やります!」
「おお!ありがとうユイナちゃん…グスッ。」
お人よしでもあるんだよね・・・ユイナちゃんは。
「一人でってのもあれだから、九部由里(くべ・ゆり)も一緒にいかせるね。彼女ならユイナちゃんも守ってくれるからね。」
「はい! 頑張ります」
こうして神楽坂ユイナはお嬢様プロレスの世界へと飛び込む事になった。


そしてユイナがいなくなった後の事務所では・・・

「あなたも役者ですわね。田辺さん。」
「…これで…いいんですね。」
「ええ、よいですわ。オーホッホッホ。」
 謎の女の高笑いが響き…田辺と呼ばれた男は…がっくりと肩を落した。
 この田辺という男はユイナのマネージャーとそっくり…というか同一人物であった。


 ユイナと由里は二人歩いている。
「ユイナさん、本当にプロレスするんですか?」
「出来るわけないじゃない。だって、私運動音痴なんだから。」
「歌も音痴ですう。」
 九部由里は屈託なく笑う。この子は同じ事務所所属でユイナよりも先輩であるが、年下ということもあり実の姉のようにユイナを慕っている。彼女は格闘技の経験があるので、今回選ばれたのだろう。
「ひっどいなあ~。これでも人気ナンバー1のアイドル歌手なんですけど。」
ユイナはない胸を張る。
「どうせ“口パク”ですう。」
「だーそんなこといっちゃダメでしょ。嘘でもそういうこといったら噂になっちゃうんだからね~。この世界は怖いんだから。」
「そうですねえ。妬み嫉みが渦巻いていますから。」
「はあ…なんでこんな事になったんだろう。私は普通の子でいたかったのに。」
「しょうがないですよ。友達が勝手に送って優勝しちゃったんですから。」
「はーそうなのよね。なんで私優勝したんだろ…」
「それはユイナさんが可愛いからです。」
「ちょっとお…照れるじゃない。」
 ユイナは可愛いらしい顔を真っ赤に染める。男の子や男の人に可愛いといわれるのは何とも思わない(自信過剰?鈍感?)なユイナだったが、女の子に言われるとデレデレになってしまうのだ。だからといって女性が好きで男性嫌いというわけではないのだが。
「あーここですう。『ローズ・ウイップ』です。」
中世ヨーロッパ調の白い建物が二人を出迎える。
「ここが『諸悪の根源ローズ・ウイップ』ね。」
「あらずいぶんな物言いね、神楽坂ユイナさん。」
「あなた! お嬢様アイドルの清流野 清子(せいりゅうの きよこ)さん」
 清流野清子は、ユイナと同じお嬢様アイドルであり、その清楚なイメージから『清らか清ちゃん』と呼ばれ親しまれている。
「ようこそローズ・ウイップへ。」
「あなたもローズ・ウイップの選手なの?」
「そうよ。ローズ・ウイップは美しさを前面に押し出した新しいプロレス団体。今、世の男たちは私たちに夢中なのです。」
「そりゃ…綺麗な女の子は見てみたいと思うだろうけど…」
「ここは選ばれしお嬢様が集う場所。あなたみたいなインチキお嬢様なんて認めないわ。どうしてもあなたが本物のお嬢様アイドルだというのなら、我々を納得させるだけのお嬢様ファイトを見せてもらいたいものね。」
「そのチンクシャが神楽坂ユイナですの?」
「あら、エリナさま。ごきげんよう。」
 エリナさまと呼ばれた少女は挑発的な目でユイナを見ている。挑発・・・というよりは見下した目の方が正しいか。
 長い髪を腰まで伸ばしており、その髪の艶やかさ、整った顔立ち、体からにじみでる気品。清子と比べても、数段上のお嬢様であろうことは容易に想像がつく。
「ごきげんよくはありませんわ。このあたりから偽お嬢様の匂いがしますから。」
「こいつ…言わせておけば…!」
「こんなチンクシャのどこがお嬢様なのかしらね。見る目がないですわ世間も。」
 エリナはユイナの体をつま先から頭の先まで一瞥すると、勝ち誇ったように笑う。確かに胸のないユイナからしてみれば、エリナのボディは圧倒的にスペックが上だ。
「あなた、お嬢様ファイト見たことないそうじゃない。よくそれでやる気になったものだわ。」
「プロレスと違うの?」
「ふふ、おばかさんね。まったく違うに決まっていますわ。もっとクール・ビューティ・エレガントですのよ。全てが洗練された新しいプロレス。それがお嬢様ファイトですわ。」
「は、はあ…」
「まず今夜の興行を見にくるのね。お嬢様ファイトの真髄をお見せいたしますわ。」
 エレナは自信たっぷりだった。


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2009/03/24 18:00 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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