NEW WIND社長 風間 新 手記より。
※このお話は、長編リプレイ『NEW WIND編』&『栄光のスターロード編』の『創作アフターストーリー』です。
時間軸としては、『もう一度あの日のように~再会~』の後の話になります。
このお話の設定には、ゲーム上では再現できない設定を盛り込んでいますので、ご注意ください。
単独作品としても十分楽しんでいただけるように留意しておりますが、登場人物の設定などは『NEW WIND編』に準拠していますので、NEW WIND編を読まれているとより楽しめると思います。
※このお話は、長編リプレイ『NEW WIND編』&『栄光のスターロード編』の『創作アフターストーリー』です。
時間軸としては、『もう一度あの日のように~再会~』の後の話になります。
このお話の設定には、ゲーム上では再現できない設定を盛り込んでいますので、ご注意ください。
単独作品としても十分楽しんでいただけるように留意しておりますが、登場人物の設定などは『NEW WIND編』に準拠していますので、NEW WIND編を読まれているとより楽しめると思います。
18年目8月 高知大会。
女王として地元凱旋した南智世はメインイベントに登場。超満員の観客の歓声を一身に受けてファイトしていた。
「これで終わりっ!」
智世の新フィニッシュホールドのクロス式リバース・ネオ・サザンクロスロックが決まり、ジーニアス武藤は無念のギブアップの声を発した。
「智世!智世!」
大智世コールが沸き起こり、それに手をあげてこたえる智世。高知大会はハッピーエンドを迎えたかにみえた。
だが…「ずいぶんな人気ですね、先輩!」という声がその幸せな結末を破壊しにかかる。
声の主はマイティ祐紀子、言わずとしれた元女王である。
「先輩、悪いんですけどたかが市ヶ谷に勝ったくらいで女王面しないでもらえますか?」
祐紀子にしてはずいぶんとヒールな登場の仕方だな。
「BUUUUUUUUUU!!!」
ここは高知…智世の地元だ。NEW WINDのエースが相手でも容赦のないブーイングが飛ぶ。
「…あら、どなたかと思えば…無様な、完璧には程遠い試合内容でベルトを失った祐希子さん。」
智世は痛烈に皮肉る。
「ぐっ…」
「それに先ほどたかがと言っていたけど、その”たかが”市ヶ谷相手に無様な敗北をしたのは誰だったのかしら。」
場内から祐希子~~という声が返ってくる。
「そうよね。で、その完璧じゃない祐希子さんが何の用なの?女王ではないあなたにはメインのステージに似合わないと思うけど。」
そうだ!そうだ!と観客。
「ふん、ここはあなたの地元だからお客さんは味方してくれるけど、本当に先輩が女王にふさわしいと思っている人なんてほとんどいないわよ。その女王のベルトは私のものだわ。」
祐希子のアピールに場内からは大ブーイング。
「祐希子さん、あなたは勘違いしているようだから言っておいてあげるけど、この女王のベルトはふさわしい人間が巻くものではないの。巻いている人間が女王なのよ!」
正直このマイクアピールは智世の方に分がある。
「そう、なら私がふさわしい事を思い知らせてあげる!」
こうして智世と祐希子の因縁ができ、最終戦のメインイベントを迎えた。
試合は智世ペースで進み、数々の関節技の前に祐希子は悲鳴を上げ続けた。
「くっ…」
祐希子はソバットでペースを取り返そうとするが、足へのダメージが蓄積しており動きは鈍い。
「はあっ!」
ソバットを見切った智世は裏拳を放つ!
「待ってたわ、このときを!」
祐希子はその腕をキャッチして変形の裏投げでマットへと叩きつける。
「なっ…」
油断していたか、智世はまともにもらってしまい動きが止まった。
「でえええいっ!」
祐希子は素早くコーナーへと駆け上がり、ムーンサルトプレスで飛んだ!
高くそして美しい月面宙返りが決まった。
「これで終わりだ~~~っ!」
祐希子はそう叫ぶと、智世の髪の毛をつかんで上体を引き起こすと、右腕をチキンウイングアームロックに決め左腕でドラゴンスリーパーを極めた。
「あぐああああああっ…」
予期せぬ攻撃に悲鳴を上げる智世。智世の完璧な試合はここで崩れ去ってしまった。初めて受ける強力な絞め技の前に智世は動くことができず、ただうめくことしかできない。
いかに関節のヴィーナスの異名を受け継ぐ智世であってもこれは苦しいだろう。
「あああっ~!レフェリーが試合を止めた!試合終了だ!炎の女帝マイティ祐希子復活~~~!!苦しんだ試合でしたが、最後はお株を奪うサブミッションでの逆転勝利~~~!!」
元女王祐希子が王座を奪回。フィニッシュホールドはまさかまさかのチキンウイングドラゴンスリーパーだった。
「やったね!」
今までの祐希子は、ドロップキックやムーンサルトプレス、そしてブレーンバスターなど派手な技を得意とするファイターだった。
今でこそ”炎の女帝”と呼ばれているが、デビュー当時は”炎のファイター”いや”炎の戦士”を呼ばれていたものだ。だが新日本ドーム後の彼女は変わった。それまで殆ど見向きもしなかった関節技の練習を熱心に始めたのだ。
「南さんにプロレスは力だけじゃないって教わりましたからね。」
そういって祐希子は笑った。
祐希子・市ヶ谷・智世といった主力選手がそれぞれ大きく成長しはじめ、さらに中堅で燻っていた選手たちも明らかに変わった。
ブレード上原、ミミ吉原、八島静香、白石なぎさ…といった中堅陣は、今までそのポジションに満足している感があったのだが、あの大会をきっかけに上を狙うという意識が芽生えた。
「祐希子がエースだから仕方ないと思っていた自分がいましたが、伝説の先輩の試合を観て変わりました。引退して9年も経っている先輩にあれだけの試合を見せられたら…諦めるのはまだ早い。私はまだキャリアも短いし、もっとできるはずです。勝手に自分の可能性を狭めていました。」
上原はそういって太い眉をキリッと引き締めた。
「私には祐希子みたいな試合はできないし、祐希子のような才能もないです。でも、自分にしかできない試合があるはずだし、祐希子にはない強みを持っていると思うんです。それが何かはまだ分からないけど、私のスタイルで頂点を狙います。」
吉原はそういって柔らかな笑みを浮かべた。吉原のこの人当たりの柔らかさは一つの武器であると私は思う。
八島は晩成といわれていた通りここに来て力をつけ始めているし、あれだけ打たれ弱かったなぎさも、精神面での成長を見せている。
初代サンダー龍子、『最強の龍』吉田龍子と比較をされる2代目サンダー龍子もサンダー龍子の名前に負けないファイトをしてくれるようになった。
どこか危うさのあったファイターが、頭を使うようになったのだ。『ハートは熱く、頭は冷静に』サンダー龍子が頂点を巡る戦いに加わるのは時間の問題といえるだろう。
頂点を巡る戦いが熱を帯び、その熱が新たなる風を巻き起こす。NEW WINDは、もう一度あの日のように輝きを放ち始めていた。だが、更なる高みを目指すには、次代を担う新たなる力が必要になる。
やや遅れてデビューする18期生がその新たなる力になるのか…それともまだ見ぬ19期生がそうなるのか…それは分からない。わかっているのは、NEW WINDがNEW WINDらしくあるために絶対に必要だということだろう。
新たなる力を得て、さらなる高みを目指す新たなる風を起こす。NEW WINDの挑戦はまだまだ続くのだ。
女王の交代劇は新たなる未来へのプロローグにすぎない。
きっかけを与えてくれた伊達遙、南利美の両名に改めて御礼を言いたいと思う。二人ともありがとう。
二人が愛してくれた…いや、今でも愛してくれているNEW WINDはこれからも輝いていくだろう。
そう…もう一度あの日のように…
スカイブルーのリングは常に新たなる風を起こし続ける。
それから~再会の後に~ 終
To Be Continued ”aozoraninizigakagayaku”
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