伊達 遥 自伝「フェニックス伝説~本当はおしゃべりな私」より
改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。
この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編の挿入話「”永沢舞について” その73.9」に該当するお話です。)
改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。
この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編の挿入話「”永沢舞について” その73.9」に該当するお話です。)
伊達 遥 自伝「フェニックス伝説~本当はおしゃべりな私」より
☆ 弟子 永沢舞について☆
舞は前にも言いましたがとても可愛い子です。最初は煩いだけで、苦手だと思っていたけど根は真面目でとても素直な子。素直なだけに教えるのは面白かったですね。
私のタッグパートナーは、南さん、カンナ、舞の3人が中心でした。南さんとはお互いに尊敬しあえる仲、カンナとは常に緊張感を持っていて、舞とのタッグは楽しいという印象です。
『サイレントヴォイス』(カンナとのコンビ)が一番実績もあるし、ベストバウトを受賞したりしていますけど、舞との師弟タッグが一番楽しかったですね。色々と思い出深いし。
タッグパートナーとしてだけでなく、一人のレスラーとして舞の成長は楽しみでした。舞はずっと頑張っていたから、どんなレスラーに成長していくのかが楽しみでしたね。
でも、ちょっぴり寂しかったりもしました、舞が成長すると私の同期が負けていくわけですから。
私達1期生は全部で5人。NEW WINDの歴史を創る役目を担ってきたわけだし、それぞれが目標に向かって頑張っていたんです。
『皆で一番の団体にして、ベルト取ろうねって』
結果的に全員世界のベルトには届きましたけど、シングル王座には3人しか届かなかった。(ラッキー内田と氷室紫月はタッグ王座まで)
夢を語った仲間が後輩の舞に負ける。これは寂しいことでもあったけど、プロレスの世界では・・・特に実力優先のNEW WINDでは当たり前のことなのですけど。
私だってそうしてメインに起用されてきたわけだし。蒔絵(マッキー上戸)と佐知子(ラッキー内田)は、休憩前後まで試合順が落ちていたし、舞が上を目指す以上は必ず超えなければならない相手でした。そして二人は舞に敗れた。
努力の差なのかそれとも才能の差かはわからないけど、これは事実。同期としては寂しい結果、でもコーチとして、そして団体の看板レスラーとしては後輩の成長は歓迎でした。
紫月が舞の前に壁として立ちふさがっていた時期も結構あったけど、結果として舞は紫月を超え、そしてついに・・・南さんを超えました。
あの頃の南さんはもう全盛期は過ぎていたけれど、まだ力はありました。『南さんが舞に負けた。』これは正直ショックでしたね。
私は南さんとは同期だし、彼女の完璧を目指す心、妥協のないファイトを私は尊敬していたし、ライバルだと思っていました。南さんも私をライバルだと思ってくれていたし、お互い意識して競い合って成長してきていましたから。でも、南さんは負けた後こう言ってくださいました。
「遥、舞をいいレスラーに育てたわね。これで私達がいなくなってもNEW WINDは大丈夫ね。」って。
私、嬉しいのか悲しいのか分からなくなって泣いちゃいました。南さんは自分の衰えを早くから感じていたし、私より早くリングを去る事になるのは覚悟していたようでした。もっとも彼女はそのことで悩んでもいたようですが、それは風間社長にしか話していなかったようです。
南さんに勝った舞は、私に向かってこう言ってきました。
「今度は遥さんに勝ちますから!」って。
私は私を倒す為の練習をする舞を指導する事になったわけです。でも、それはいつか来ると思っていたこと・・・予想よりも早かったですけどね。
私はまだ衰えを感じていたわけでもないし、まだまだ舞には負けないと思っていました。 まだ全盛期だったし、ここで舞に負ける事はないと思っていました。(私が衰えを意識するのはまだ先のことでしたから)
だけど12月に対戦したとき、初めて舞の成長をそして強さを感じました。投げ技の破壊力なら、ちぐ(結城千種)と同じかそれ以上。
特にテキーラの衝撃は、ちぐの必殺技バックドロップよりも上でした。本当に強くなったと思います。だけど私はまだ負けられなかった。最後は巧く切り返して、丸めこんで勝利しましたが本当に危なかった。
まだ大丈夫って思っていたのですが、舞の成長は想像以上でした。あの当時の力量でいえば、みことと同等くらいだったと思いますよ。
私は当時WWCAシングル王座を持っていましたから、試合後に風間社長に舞を挑戦者にして欲しいと伝えておきました。
「いいのか?」ときかれましたけど、「・・・舞は強くなったから」と応えておきました。
「弟子である永沢が師匠である伊達に世界王座を賭けて挑戦か。話題になるな。」
風間社長は、いつも話題づくりを心がけています。NEW WINDがあれだけの団体になったのは。風間社長のマスコミ操作が巧かったからだと思います。
それに私達がいなくなった後を見据えていたので、この話には乗り気だったようです。
結果から言えばこの王座戦には私は負けました。悔しくないか?って??
「舞に負けたのは悔しいけど、でも嬉しくもあるの。」が本音ですね。
一人のレスラーとしては悔しいのは当たり前。でも相手が舞だったから嬉しかった。コーチとしてずっと教えていたのだから当然かもしれません。
舞がフィニッシュに選んだのは、私が教えてあげた舞の必殺技『テキーラサンライズ』舞があの時からずっと大事にフィニッシュホールドとして使ってくれている技。
ドラゴンとタイガーを両方使いたいと言う舞に、両方の要素のある技『ドラゴンタイガー』として教えた技です。もちろん私はテキーラサンライズだと知っていましたけど。ブリッジに必要な柔軟性を持っている舞には、テキーラはピッタリ。
舞は「あの技でトップを取る」ってあの頃言っていたと思います。私はその時は「まだまだ無理だね」なんて思っていたのですけどね。
舞は私に勝ちました。でもそれが終わりじゃない、始まりなんです。これから先の試練に打ち勝ってこそ、初めてエースに、トップ選手になれると思います。だから私は舞の成長を楽しみにしています。そして私もさらなる成長を遂げます。負けたままじゃ終われないですから。
『私を語るには舞を抜きでは語れないし、舞を語るには私を抜きでは語れない。』
私たちはそんな関係ですね。舞はとても大事な弟子であり、可愛い後輩であり、ライバルでもありました。南さんとカンナ、そして舞には負けたくないと思っていたのは確かですからね。
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