NEW WIND社長 風間 新 手記より。
※このお話は、長編リプレイ『NEW WIND編』&『栄光のスターロード編』の『創作アフターストーリー』です。
時間軸としては、『もう一度あの日のように~再会~』の後の話になります。
このお話の設定には、ゲーム上では再現できない設定を盛り込んでいますので、ご注意ください。
単独作品としても十分楽しんでいただけるように留意しておりますが、登場人物の設定などは『NEW WIND編』に準拠していますので、NEW WIND編を読まれているとより楽しめると思います。
18年目5月 NEW WIND17周年記念興行にて、伊達遙と南利美という伝説の一期生が一夜限りの再会試合を行うことになった。
社長秘書武藤めぐみの提案がきっかけではあったのだが、NEW WINDの責任者であるこの私が認めたのだから、全ての責任は私が負うことになる。
この”再会試合”というアイディアは悪いものではなかったが、決して全面的に支援されるアイディアでないことも私は分かっていた。
しかし、このカードへの反響は予想以上に大きく、プロレス界という枠を超えて世間にまで届く大きな話題となってしまった。当然話題が大きくなればなるほど、団体内外からの反発は強くなった。それは当然だろう。人は自らの価値観を正しいと思う生き物だ…その価値観に合わないものには反発する。
再会試合を単なる話題作りとしか思えない現役の選手たちは当然これに猛反発したが、南と伊達のそれぞれのスパーリングを見て最終的には皆渋々ながらもカードを了承してくれた。
「話題作りに乗せられて、人が集まってくるならば、その場で私たちをアピールするだけだ。」
全員の気持ちがこれだとは言わないが、皆そう思ってリングに上がってくれたのは間違いがない。リングに上がった所属選手たちは、現在持っている全ての力を発揮し見事な試合を見せてくれた。
第1試合からメインに至るまで、全員が素晴らしいプロレスを見せ大いに観客を沸かせることに成功した。そして…伊達と南の再会試合は、現役選手にも負けないほど素晴らしいものであり、二人にしか出来ない試合だった。
二人に現役選手のような試合をさせるのは無理だし、逆に現役選手には二人のような試合は出来ない。だが…現役選手たちは二人の再会を自分たちの目で見、会場の空気を肌で感じたことで、成長のきっかけを掴んだようだった。
”再会”をきっかけに、NEW WINDのスカイブルーのマットには、新しい風が吹き込んでいた。
「あああっ、マイティ祐希子返せない!3カウントが入ってしまった!」
ダウンしたままピクリとも反応しないマイティ祐希子を一瞥した後、市ヶ谷は勝ち誇った。
「オーホッホッホ。当然ですわ。」
勝ち誇った市ヶ谷の高笑いが場内に響きわたった。ある程度予想をしていたものの、予想を超える壮絶な結末に場内は歓声を上げることもできず、静まりかえってしまっていた。
NEW WINDの最高峰であるMAX WIND女王の座を、3年の長きに渡って死守してきた絶対女王”炎の女帝”マイティ祐希子であったが、ついに…ついに女王の座から陥落した。
勝ったのは、ライバルと目されながらも、この3年間勝つことができなかったビューティ市ヶ谷だった。
だが、市ヶ谷は新日本ドーム大会をきっかけに変わった。序盤・終盤問わず、いつでもビューティボムを狙うという唯我独尊な姿勢は変わっていないが、その一発一発が明らかに重くなった。
「気持ちの乗せ方が変わりましたな。」
「ですね。伊達のヒザを思い出す気持ちの乗せ方です。今まで以上に力強さを増している。」
今まではビューティボムへのつなぎでしかなかった膝蹴りに込める思いが今までとは違った。フォームこそ違えども、伊達のそれを思い出す強烈な一撃。
技を大事にする、捨て技を作らないという意識が市ヶ谷に芽生えたのだろう。
「…伊達遙に出来て、この私にできないわけはありませんわ。私は、高貴かつ華麗、そして最強のビューティ市ヶ谷なのですから。オーホッホッホ。」
確かな成長を感じさせてくれたビューティ市ヶ谷の女王戴冠劇。新たなる時代の幕開け、ビューティ市ヶ谷伝説のはじまりか?と私も思ったものだが、しかし時代の扉は違う方向へと開くことになる。
PR