NEW WIND社長秘書奮戦記
トゥルルルル……トゥルルルル……
「お電話ありがとうございます。NEW WINDの武藤が、お受けいたします」
私はオーナーの教え通り3コール以内で電話をとった。
「あ、NEW WINDさんですか! レッスルアウトローズ新聞を見て『それいけ、むとめさん』の通販予約をお願いしたいと思ってお電話したのですが……」
私は「またか!」と思った。昨日・今日かかってくる電話の99.9%がこの内容。もういい加減にしてよね!
「そのお問い合わせに関してですが、現在のところ発売の予定はございません。申し訳ありませんが、予約などは取り扱っておりませんので……」
「えーそうなんですか? 是非読みたかったのになあ……」
「申し訳ございません。どうしても読みたいという場合には、現在発売中の『もう一度あの日のように~再会~』の中に『それいけ、むとめさん』が収録されていますので、そちらで雰囲気を楽しんでいただければと思います」
私は定型文通りに答え、そちらの通販の案内をしておいた。
「わかりました。ご丁寧にありがとうございます」
別に丁寧に答えたつもりはないんだけどな……。でも、私は社長秘書であり、そしてNEW WINDの中核を担っている身なの。以前のような自分勝手な返答はできないわ。
「へえ~めぐみってば、ちゃんと秘書してるんだね」
聞き覚えのある声がしたので、私は驚いて扉の方を振り向いた。そこにいたのは、私の盟友にして現在の同居人である結城千種だった。
「千種! どうしてここに!?」
「どうしてって、これを見たから」
千種は右手に持った一枚の写真を私に見せた。
「……これってレッスルアウトローズ新聞で掲載されていた……」
「うん。さっき偶然GUYさんに会った時にもらったんだ。秘書姿のめぐみが可愛いって評判だよ」
「だ、誰がそんな事を言っているのよ!」
私は即効で打ち消す。
「あっ、照れてる~めぐみ可愛い~」
「う、うるさいわよ千種。誰がそんな事を!」
だいたい私は貴女以外に可愛いなんて言われてもまったく動じないんだからね。
「え~っとね、まずはシローさんでしょ、それに前に泡藻さんも言ってたよ。それにオーナーだって言っていたはずだよ。だから『もう一度あの日のように~再会~』に、めぐみが主役の『それいけ、むとめさん』を収録したんだって話だし」
「……勝手な事を! 私があの2ページ分の原稿書くのにどれくらい苦労したと思っているのよ。私は文章書くの初めてだったんだからね!」
今回だけ、それも2ページだけでいいからと言われたので、あの原稿を書いたのよ。もう一度書くのは、ましてや長編なんて考えられないわ。
「私が読みたいってお願いしてもダメ?」
千種は瞳をウルウルさせながら私を見つめる。それはやめて! 私はそれに弱いのよ……。
「ねえ、ってば」
「あう……ううう……」
もう駄目。このままだと「うん」って言ってしまいそう。誰か助けて……。
「あ~結城先輩だあ! 先輩、いらっしゃいませ! 来てるんなら、綾に言ってくれればいいのに! ねえ、先輩一緒にあそぼ!」
「あ、うん。いいよ……」
「ほんと! やったあ……結城先輩、いこー! いこー!」
ナイスタイミングでやってきた綾(榎本綾)が千種の腕を引っ張っていく。
「……助かった……」
私はほっと胸を撫でおろした。
「めぐみ! ちゃんと聞かせてね~」
「……しばらく家には帰れそうもないわね」
私は、今夜からの宿の手配をする決意をしたのだった。
というわけで、現時点で『それいけ、むとめさん』を本にする予定はございません。
ま、『それいけ、むとめさん』自体は気に入っているので、いつかは長めの話を書いてみたいと思ってはいますがね。
何度か書いていますが、『もう一度あの日のように~再会~』に収録されている『それいけ、むとめさん』は、GUYさんの裏表紙のアイディアを拝見した時に書くと決めたものです。
それを、また素晴らしい表紙を書いてくれたものですね。短編集でも書いてみようか? いや、無理だろうと。
そもそも、『もう一度あの日のように~再会~』を書き始めたきっかけも、GUYさんから頂いた10万HIT記念のイラストなんですけどね。
ま、それだけGUYさんが、心を動かすいいイラストを描いているってことですよね。
チャンプ、これからも期待してますぜ!
では、そんなチャンプへと向けたエールを送りましょう。
トゥルルルル……トゥルルルル……
「もしもし、霧子さんですか? NEW WINDの武藤です」
「おう、NEW WINDさんとこのむとめか? どうしたんだ」
「実は……」
※ ※ ※
「なるほど、そういうことかい。なら、私のところに泊りに来な」
「いいんですか?」
「ああちょうど巡業で、福岡にいる。福岡に来てるっつうんだよ、ちょうどいいからな泊りに来いや。私が、秘書とはどうあるべきかって教えてやるよ」
「でも、部屋とか大丈夫なんですか?」
「ああ心配ない。ヘタレのやつなんか、簀巻きにしてロビーにでも寝かせておいてやればいいいんだよ。むとめ一人くらいどうとでもなるってんだよ」
この人は相変わらずね。やさぐれ霧子さんは健在のようね。
「じゃあ、待ってるからな。別に気を使って、手土産とかいらないからな。いいか、いらないからな」
これは持ってこいということね。相変わらずだわ。
「はい、よろしくお願いしますね」
とりあえず、今晩の宿は確保できたようね。ま、あそこのヘタレ社長には申し訳ないけれど。
NEW WINDは、ヘタレ社長とやさぐれ霧子さんの復活を応援しています。
知らない方の為に説明しよう。
ヘタレ社長とやさぐれ霧子さんとは、GUYさんの旧サイト『レッスル! レッスル!』時代に展開されていた、その名の通りヘタレな社長と、やさぐれ社長秘書霧子さんによるブラックコメディである。
多くのファンに愛されたものの、サイトの期限切れとともにこの世から消えてしまった。
その独特のキャラ描写のファンは多く、復活を望む声も数多い。
ということなんです。
ちなみにこれは私が書いたものですが、雰囲気的にはこんな感じになります。
ちょっと古い作品(約2年前)なんで今読むとちょっとアレですが、GUYさんの以前のイラストを引っ張ってきたので、私も同じ目にあっておきますか。
では、最後にもう一度。
NEW WINDは、ヘタレ社長とやさぐれ霧子さんの復活を応援しています。
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Nさん、レッスル的に言うと
速さ、器用さAですね♪
ヘタレ社長&やさぐれ霧子さん
そして他のデフォされた娘達もは私もファンでした。
再開して欲しい物ですねぇ。
いや、5とかそんなもんじゃないですか? GUYさんの言うとおり、シローさんと泡藻さんが煽っていたので、必殺心、全力執筆+2で対応しました。
どうやら無事再開? したようでなによりです。