場内から怒号とブーイングが上がるなか、ミスターDENSOUの右腕が振り下ろされる。
しかし、ここでリング上に閃光が走る。ミスターDENSOUの背中を踏み台にして、もう一人の伊達遙がシャイニングウイザードをSPZ伊達に叩き込んだのだ。
「俺を踏み台にしたっ?」
ミスターDENSOUは思わずこのセリフを口にしていた。
ただ、後にミスターDENSOUは、「ふんずけてった?」の方がよかったかなHAHAHA!と笑っていたそうである。
それを聞かれた小早川は、首を捻ることしかできなかったそうだ。
「そうなんだよ、ここが見せ場なんだよ。」
ヤサグレ霧子が再びリングサイドに姿を現す。そう…リング上に現れた4人目の伊達遙は…東洋女子の伊達遙だった。
「レーティング1590…を誇るあの伊達遙かっ…」
風間社長の表情から余裕が消えた。
それはそうだろう、ハイレベルを自負するNEW WINDでも1600近い評価を受けているのは、わずかに二人しかいない。
強いといわれている新風伊達遙のレーティングは前述の通り1470に過ぎないのだから。
「これだけ消耗した状態で、東洋伊達ですか。これは苦しい状況ですな。」
ダンディ須永も唸るしかなかった。
「ありえん!レーティング1590なんて、スカウターの故障なんじゃないのか?」
団体最高の評価を受けている絶対王者伊達ですら、レーティング1170という一番星プロレス社長の体が震える。
「わくわくしますか、社長?」
一番星社長秘書井上霧子が尋ねる。
「悪いがわくわくはしない。あまりの能力の高さに恐ろしくてガタガタと震えがくる。」
一番星社長は口を真一文字に結んだ。
(くっ…このプレッシャー…遙。私にはどうしてあげることもできない。自分自身の力のなさに怒りすら覚えるわ。)
新風側のセコンド、南利美はリングに飛び込むことができない自分を攻める。
だがこれは、伊達遙の戦いである。いくら親友(ライバル)とはいえ南利美が参戦するわけにはいかない。
「たって、遙っ!」
「負けるなス、遙!」
セコンドの声援に支えられて、新風伊達が、一番星伊達が立ち上がる。
「だ~て!だ~て!」
誰に向けられているのかもわからない声援がリングへと注がれる。
これに呼応したのか、SPZ伊達も立ち上がり、リング上では4人の伊達遙がにらみ合う。
4人はジリジリと間をつめて、一斉に動いた。
「はああっ!」
4人は何かにとりつかれたかのように、同時にハイキックを繰り出した。
それぞれがノーガードでハイキックを受け、一瞬リング上の全ての動きが止まった。
一瞬の後、4人は静かに崩れ落ち、ミスターDENSOUは、試合終了のゴングを要請したのだった。
「只今の試合、ダブルノックアウトによる引き分けとなります。」
一番星 伊達 VS 新風 伊達の頂上決戦は、試合前には予想しえなかった決着を迎えたのであった。
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