カン! カン! カン! カン!
場内に試合終了を告げる鐘の音が響き渡った。
場内に試合終了を告げる鐘の音が響き渡った。
勝利を収め、勝ち名乗りを受ける勝者を、敗者……金森麗子は大の字になったまま見つめていた。
「一勝もできなかった……か……」
初めて参加した大会……それも次代のエースを担う逸材ばかりが集まったハイレベルな大会に出場したのだ。
デビューまもない麗子が勝てるはずもない。それは本人も頭では理解していたが、心は……そうではなかったようだ。
「悔しいなあ……」
麗子の瞳から涙が溢れ、頬を濡らした。
「あらあら、可愛いお顔が台無しですよ、麗子ちゃん」
麗子が所属する道場のエース選手である石川が麗子の顔を覗き込む。
「せ、先輩……」
麗子は必死に涙を抑えようとしたが、止まらない。
「麗子ちゃんは精一杯頑張ったんだから、泣いちゃダメですよ。胸を張って帰りましょう」
石川は豊満なバストをぶるるん! と震わせる。
「…………」
同じ女性であってもそのインパクトに眼を奪われるのだから、世の男性はそれ以上であろうと麗子は感じていた。
「そうだ。石川先輩の言うとおりだと思うぞ。麗子は出来る事はやったんだ。胸を張って帰ろう。……次回頂点に立てばいいだけのことさ。ま、自分が代表ででるつもりだから、麗子の出番はないけどな」
ポニーテールが似合う麗子の同期近藤真琴が笑みを浮かべた。
「真琴の言うとおりだね。でも、ひとつだけ言わせてもらえば私が代表だけどね!」
もう一人の同期、レインボー岩城もニマリと笑う。
「あらあら。それじゃあ私も頑張ろうかな」
石川もそれに乗ってくる。
「好き勝手言って! 次回も代表選手の座は譲らないわよ!」
痛む体に鞭うって麗子は起き上がった。
「ふふ……よい傾向ですな。どうやら私の出番は必要ではなかったようですな」
4人のコーチを務める道場主……ダンディ須永はニコニコとしていた。
「ダンディさん!」
「プロレスラーの心をしっかりと全員が持っているようなので、安心しました。いいですか、これだけは覚えておいて欲しいのですが……プロレスラーにとって敗戦は恥ではありません。
敗戦こそが経験であり、その経験の積み重ねで実力を高めていくことができるのです。中には負ける事を知らずに上に駆け上っていく者もいるにはいますが、どれだけ敗戦を糧にしたかで、レスラーとしての本当の実力は蓄えられていくのです。
今回の麗子君の敗戦は、成長する為のきっかけにすぎないのです。そして……それは涼美君達も同様に糧となるはずです。この度の麗子君の敗戦……特訓に付き合った貴女達なら悔しさを分かち合う事ができるでしょうからな」
4人はコクンと頷いた。
「それでは、全員で食事にでもいきますかな。初陣は全敗でしたが、次回の大会では我が道場の存在を大いにアピールさせていただきますぞ」
「はい!」
ダンディ須永主宰『須永プロレス道場』 代表選手 金森麗子 アンダー2000 一次リーグ敗退
つうわけで、知ってる人だけ知っている。愛の軍団のお話でした。
ちょっぴり復帰してみたんですよね。
須永プロレス道場 として活動していますんで、見かけたらお相手してもらえると喜びます。
とはいえ全員がアンダー1200(1000超えてるのは一人だけ)なんで、とっても弱いですけども。
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