NEW WIND社長 風間新手記より
~NEW WIND30万HIT記念特別興行~
※今回のお話は、リプレイの正史ではないため、全員全盛期の力を持って登場します。
ただし、基本的な設定は主に、リプレイサバイバー1版NEW WIND編の設定に準じています。
なおハロウインパーティの設定は、泡藻さんの設定を元にしています。
「レフェリー、レインボー岩城!」
最後に紹介されたレフェリーの岩城に、「彩菜!!」と多くの声が飛んだ。
「人気あるわねえ」
ボディチェックを受けながら鏡が笑う。
「鏡さんほどじゃありませんよ。……反則はダメですからね」
「ふふ。岩城さんもちゃんとあちらの三人をチェックしてくださいな」
鏡の言葉に岩城は答えなかったが、彼女の性格からすれば当然そうするだろう。
「岩城さん、チェックよろ~」
「はいはい。おとなしくしてな」
素早くきっちりとチェックして、岩城は二人をそれぞれのコーナーへ下がらせた。
「OK、ゴー!」
どちらも飛び出したりせず、ゆっくりとその差を詰めていく。
「意外ですね。私はてっきり真鍋が仕掛けると思っていましたが……」
「”目”ですな。相手の目をみた真鍋くんは、嫌な予感がしたのでしょう。だから、仕掛けられなかったのです」
「ということは……」
「すでに試合のペースは鏡のものということですな」
ダンディさんはそういってリング上に熱視線を送った。
「ガンガンいこうぜ! なのですよ~~!」
セコンドの美沙が作戦を伝えるが、つかさはじわじわとしか動けない。どちらかと言えば、”命大事に”だろうな。
「うるさい美沙ちー。向かいあってみればわかるって~の。プレッシャー半端なくて、ヤバイんだから~!」
この間も、つかさは鏡から目を離すことはなかった。
「!」
じわじわと近づいていた二人の距離は一定距離から縮まらなくなった。なぜなら、鏡が一歩を踏み出すと同時に、つかさが同じ分だけ距離を取るからだ。
「うーっ……」
鏡の放つプレッシャーがつかさにそうさせるのだろう。鏡の周りを円を描くように回り込みながら、つかさは隙を窺いつづける。
「ふふ……少しは成長したみたいですわね」
鏡は笑みを浮かべている。
「トーゼン!」
「威勢がいいわね。かかってらっしゃい」
鏡の手招きに応じ、つかさが距離を詰める。
「はっ!」
「やっ!」
手四つで組みあう二人。予想外のスタートだが、この後の展開はある程度予想できる。
「まあ、鏡のペースになるでしょうな」
「ですね。体格が違いすぎますから」
鏡とつかさでは、キャリアも違うが、色気と体格が大人と子供ほどの差がある。
「ぐっ……」
大方の予想通りに、体格で勝る鏡がぐいぐいと押し込み、つかさは苦悶の表情を浮かべる。
「ふふ。パワーはまだまだのようですわね」
鏡はさらに力を込める。
「ぐあうっ……」
「ふふ。いい声ですわね」
鏡は満足そうな笑みを浮かべている。
「……なんてねっ!」
つかさはペロリと舌を出し、あっさりとクラッチを切ると鏡の右膝めがけて低空ドロップキック!
「あうっっ……」
不意をつかれた鏡はモロに喰らい、ガクンと膝をついた。
「チャンス! いけ~つかさ!」
「もっちろん!」
つかさは鏡の顔面へとドロップキックを放つ!
「ぐっ…」
しかし鏡も一撃では倒れない。
「もういっちょ!」
「わかってるって!」
素早く立ち上がったつかさは、ロープへと走り勢いをつけてもう一発ドロップキック!
「ふふ……」
が、体勢を立て直していた鏡はつかさを空中で捕獲し、スリーパーホールド!!
「わーまずい! つかさ、なんとしてでも逃げるのですよ~」
「つかささん!」
美沙と亜魅がエプロンをバンバン叩く。
「そ…そんなこと言われても……」
つかさはなんとか逃れようともがくが、あまり状況は好転していない。
「ふふ……逃がしませんわ」
鏡は余裕の表情のまま、そのまま絞り続ける。
「つかさ~っ!!」
美沙の声援の必死さが、状況の悪さを示している。ただ、救いとしてはこの時間帯はオンリーフォールの時間だから、ギブアップ負けになることはないのだが……。それを鏡もわかっているはずなのに、技を解かずそのまま締め上げる。
「つ・か・さ! つ・か・さ!」
ハロパーファンと思しきチビッ子たちがかわいい声援を送る。
「おとせ! おとせ!」
鏡ファンの男性達がそれに被せて声を飛ばす。中には子供を連れたお父さんが鏡に声援を送ってしまい、子供に怒られるという風景もチラホラ。どうやらファン層も大幅に違うようだな。
「ぐっ……くっ……うー」
あれからかなりの時間がたったが、いまだにつかさは捕まったままだ。
「ふふふ……楽にしてあげますわ」
「おおっ!」
突如鏡が技を解いたため、場内からはどよめきが起きた。
「フォール!」
そのまま鏡は体固めでつかさを抑えこんだ。
「OK!」
バンッ! レフェリーの岩城がマットをたたく。
「ふえっ?」
状況の変化につかさがついていけていない。
「ばかっ! フォール返すのです、カウント2で負けなのですよ!!」
「うわあああっ!」
カウント1.999……ほとんど2カウントで、つかさはかろうじて肩をあげた。岩城も上手くなったな……。
「あら。残念ね」
鏡は全然悔しそうではなく、むしろ笑みを浮かべている。
「試合時間4分経過……4分経過!」
仲間リングアナのアナウンスが流れる。ここからはオンリーギブアップルールの時間だ。
「……やられたのです。そういうことだったのですか……」
セコンドの美沙が歯噛みする。
「鏡は逆転の可能性のあるカウント2ルールの時間、真鍋にほとんどプロレスをさせませんでしたな」
ハロパーの戦略としては、最初4分が勝負だったはず。ここで勝てなかったのは痛いだろう。
「つかさ、まだ試合はこれからなのですよ~~!!」
「わ~ってるって。だいたい鏡さん相手に、短期決戦の方が難しいって~の」
どうやらまだやる気十分のようだ。
「そうこないとね」
鏡は珍しくシューティングスタイルを取った。
「むっ」
つかさも対抗して同じ構えをとる。
「珍しいですね」
「ですな」
私もダンディさんも、二人のこの構えを見た記憶はない。
「シッ!」
鏡は鋭いローキックを放った。 鞭のようにしなる右足がつかさの左腿を的確にとらえる。
「うっ……なろっ!」
つかさもローキックで返す。こちらも意外にもスピードのあるキックだ。
「まずまずといったところですわね。でも、その程度じゃね」
鏡は表情をまったく変えずにさらにローを放つ!
「ぐっ……てええっ」
つかさは顔をしかめながらも蹴り返す。
「ヤアッ!
「シッ!」
その後もローキックを5回・6回と繰り出しあう二人だったが、威力に差がありすぎる。これは明らかにつかさにとって不利な展開だ。
「にゃろおっ!」
不利を悟ったつかさは、いきなりミドルキックを繰り出し、鏡の意表をつく。
「ふふっ……」
だが、鏡はそれをキャッチしてみせた。
「……完全に読まれていましたな」
「さすがは鏡ですね」
南もよくこういう展開をみせるが、やはりテクニシャン相手の安易なミドルキックは危険だ。
「ヤベっ!」
「つかさ、ドラスク注意なのです!」
美沙が指示を飛ばす。
「……私のは、ただのドラゴンスクリューではなく、”大人のドラゴンスクリュー”ですわ」
大人のドラゴンスクリューとはいったいどんな技なのだろう。
「ふふっ……」
鏡は素早く顔をつかさの太腿に近づけると舌先で舐めた。
「あひいっ!」
予期せぬ行動につかさはなんともいえない声をあげる。
「ふふっ……まだまだこれからですわよ」
すっと下から舐めあげると、そのままドラゴンスクリュー!!
「あひっ…ふぎゃっ……」
反応が遅れたつかさは右足を抑えて倒れこむ。
「逃がしませんわ」
そのまま逆片エビ固め!!
「うがっ……」
快感?から苦痛……これは厳しいな。
「やばっ! つかさ! こっちへ、早く!」
美沙がエプロンをたたいてロープへとにじりよるように指示を出す。
「うーっ……」
つかさは苦しみながらもなんとかロープへと逃げてみせた。
PR