NEW WIND社長 風間新手記より
~NEW WIND30万HIT記念特別興行~
※今回のお話は、リプレイの正史ではないため、全員全盛期の力を持って登場します。
ただし、基本的な設定は主に、リプレイサバイバー1版NEW WIND編の設定に準じています。
なおハロウインパーティの設定は、泡藻さんの設定を元にしています。
「ブレイク!」
レフェリーの岩城がロープブレイクを命じるが、鏡はすぐには技をとかずそのまま絞り上げる。
「ふぎゃっ……」
「ちょっとブレイクなのですよ~!」
美沙が騒ぎ立てるが、鏡に一睨みされてすぐに黙ってしまった。
「鏡、ブレイクだ。放せ!」
岩城の指示を無視して鏡は技を解かない。
「Boooooooo!」
場内からブーイングが飛ぶが、鏡は表情ひとつ変えずに絞り続ける。ブーイング慣れしている鏡にとってはむしろ賞賛の声に聞こえるのかもしれないな。
「こら、鏡っ! 放せって!」
岩城が再三注意するが効果はない。
「ワン! トゥー! スリー! フォー!」
岩城がカウントを数えるとさすがに5カウントの前には技を外した。
「……もっと苦しんでいただくわ」
鏡はそういうとつかさの小柄な体をあっさりとロープから引き離し、仰向けにするとそのままリング中央へと引きずっていく。
「ふふっ……」
鏡はステップオーバーして、必殺のサソリ固めを決めた。
「うぎゃああああああああああああっ!!!!」
つかさの絶叫が場内に響き渡った。
「うわああああっ、これはホントにヤバイのです。ヤバすぎます! つかさ、気をしっかり持つのですよ~~!!」
「つかささん!!」
セコンドの慌てぶりは今日一番だ。この時間はオンリーギブアップルールであることも考えると最悪の展開と言えるだろう。
「うーっ……無理。美沙ちー助けて」
「まだギブアップには早いわね」
鏡はさらに力を込める。
「ぎゃああああああああああああああああっ!!」
「真鍋、ギブアップか?」
岩城の声につかさは弱々しく頭を振った。
「つかささん! 頑張って!」
エプロンサイドに駆け上がり亜魅が声を張り上げる。
「こら、栗浜! 下がれ!」
岩城が注意をするためにロープ際へと視線を向ける。
「魔力解放、覚悟するのです!」
岩城の死角から、美沙がスワンダイブ式ドロップキック!
「ぐはっ!」
「みぎゃっ!!」
鏡の正面からの一撃となり、技を絞り上げる形になってしまったためつかさもダメージを受けてしまった。
「ぐっ……」
さらには吹き飛ばされた鏡がレフェリーの岩城に激突。ダメージを受けた岩城はそのまま場外へと転落してしまった。
「Booo!」
鏡ファンからブーイングが飛ぶ。
「ほら、つかさ起きるのです」
「イチチチチ……美沙ちーもっと考えて技出してよね」
腰をさすりながら、美沙をにらみつける。
「助けてやったんだからもっと感謝しやがれなのです。それよりも、あれやるのですよ」
「ヘイヘイ。」
「いくのです! ここからが”ハロウィンパーティ”のターンなのです!!」
ハロパーファンも声を合わせる。
「このっ!」
起き上ってきた鏡にまずはつかさと亜魅がWドロップキック! 鏡はコーナーへとはじき飛ばされる。
「いきますよ~~!」
美沙は勢いをつけてスペースローリングエルボー!
「ぐっ……」
倒れたところを三人がかりでストンピングの嵐。
「いきますよ~~!」
美沙が顔面ウオッシュで鏡の美しい顔を踏みつける。
「Boooooo!!」
「頑張れ~~!」
ブーイングを子供たちの声援がかき消す。
「亜魅!」
「はい美沙様」
素早くコーナーへ駆け上がった亜魅がダイビングエルボー!
「つかさちゃん飛んじゃう~~っ!」
つかさはダイビングフットスタンプ。
「いきますよ~~っ!!」
美沙はダイビングギロチンドロップ。
「魔女がギロチンというのも、なんだか違和感ありますな」
「まあ”火あぶり”にされるのが主だったと思いますので、魔女自身がギロチンを使ってもよいとは思いますけど」
それはともかく、基本的に純粋な勝負を展開するこのNEW WINDにおいて、シングルマッチへのセコンドの介入というのはあまり記憶にない。
「てめえらっ!」
花道を全力疾走してきたのは、オーガ朝比奈だ。
「ふぎゃっ!」
素早くリングインすると、ちょこまか動き回る亜魅を捕まえ、いきなり必殺のフィニッシュバスター(旋回式スクラップバスター)で亜魅をKO。
「てめえもだああ!」
「うわわ。なんでお前がこのリングにいるのですか?」
「お前をオシオキするためだ! 今度は”オレのターン”だな!!」
美沙を捕まえた朝比奈は、先程とは逆方向に旋回し、より急角度で美沙をマットへと突き刺した。これこそが朝比奈の真のフィニッシュホールド、”フィニッシュバスター・バーニングエンド”である。
ダメージを受けた美沙と亜魅はリング下へと転がり落ちる。
「オラ、鏡しっかりしろ」
朝比奈は鏡を助け起こすと、つかさへと接近する。
「あわわわ」
つかさは予想外の朝比奈の登場と、味方の二人が蹴散らされたことに動揺を隠せない。
「朝比奈、何やってんだ!」
「なっ! うわああああっ!
ここでレフェリーの岩城がリングイン。朝比奈を捕まえると、プリズムフォール(岩城式ノーザンライトスープレックス)で投げ飛ばす。
「おおおおっ!!」
岩城の華麗な技に場内から拍手が起きる。
「試合時間8分経過、8分経過……残り試合時間2分」
ここからは通常ルールでの試合となる。なお時間切れの場合は両者失格となるのがこのトーナメントの特徴だ。
「いやっ!」
「ここまで来たら負けないっ!」
打撃・投げ……と二人の攻防は激しさを増していくが、フィニッシュにはつながらない。実績の差を考えると、ここまではつかさの善戦といっていいが、徐々に技の威力の差が出始めていた。
「くそっ……やっぱきつい……」
体格に勝る鏡の方が一つ一つの技の威力が重い。それをカバーするためには手数が必要なのだが、つかさにはそこまでのスタミナは残っていないように見受けられる。
「ふんっ!」
鏡はつかさをロープへと振り、戻ってくるのを待ち構える。
「!」
つかさは勢いよく戻ってきたが、鏡の腕をすり抜け、鏡の顔を両手で押さえた。
「にひひ~~いただきま~す!」
そして、その唇で鏡の唇を奪った。つかさの必殺技として対戦相手に恐れられているキッス攻撃”ときめきメモリアル”である。幾多の選手が初めてのキッスを奪われ、精神的に大きな傷を受けたという噂を聞いている。なお技名はつかさがつけたものではなく、別の団体の選手が命名し、使っていたものを拝借したとか。
「これが噂のときメモ……」
「うちの団体ではまず見かけない技ですが……相手が悪い」
そう……相手はフレイア鏡である。この程度で動じるとは思えない。
「……ふぐう……あふっ……」
苦しげな声を漏らしたのは、技を仕掛けたつかさの方であった。どうやら、鏡はつかさのときメモを受け止め、逆襲にでたらしい。その逆襲とは……。
「……舌を入れましたな……」
つかさのは唇を重ねるだけのフレンチなお子様キッスであったが、鏡の方はディープな大人の世界だ。見る見るうちにつかさの全身の力が抜け、膝がガクガクと痙攣し始めた。
「マ、マズイのです……つかさ……なんとかするのです」
ようやくエプロンサイドに戻った美沙が弱々しい声で声援を送った。さすがに朝比奈の必殺技を喰らっては、無理もあるまい。
「試合時間9分経過、9分経過……残り試合時間1分!」
「つかさ、ギブアップか?」
反応の薄くなったつかさに岩城が声をかける。
「……これってギブアップを奪える技として認められているのか?」
私の素朴な疑問であるが、レフェリーが反則を取らないのだから、それでいいのだろう。
「……あっ」
先程までだらんとなっていたつかさの左手が反応し、つかさ自身の喉元へと動く。
「むがっ……」
次の瞬間、先ほど迄圧倒的に有利だったはずの鏡が口元を抑え呻きだした。
「にひひ~」
してやったりと笑うつかさの口元と、苦しむ鏡の舌は緑色に染まっている。
「毒霧……か」
毒霧は反則であるが、あの状態では発射の瞬間はレフェリーには見えないので、反則を取られることはない。
「フォール!」
素早くつかさはスクールボーイで丸め込む。
「OK、ワン……トゥ……スリー!!」
カウント3! まさかの番狂わせに場内から歓声とも悲鳴ともつかない声が上がった。
「9分23秒、9分23秒……スクールボーイでサキュバス真鍋選手の勝ち!」
第2試合は実力者フレイア鏡が、売出し中の若手選手サキュバス真鍋に3カウントを奪われるというまさかの結末で幕を閉じた。
「見てくれた美沙ちー。ジャイアントキリンできたよ!!」
「……ジャイアントキリングですよ~~」
にぎやかに退場していくハロパーの3人に大きな拍手が送られ、姿が見てなくなってもそれはしばらくの間続いていた。
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まさかの鏡さん敗北ですか。南さんと闘ってやられる鏡さんもみたかったですけど
フィニッシュがなんとも官能的だったのでこれでよかったなと思いました。
次の試合も楽しみにしてます!!