NEW WIND社長 風間新~手記より~
※なおレッスルエンジェルスサバイバー1版NEW WIND編の大幅改訂版となります。
そして迎えた引退式。 花束贈呈は8期生からはじまった。
ある者は泣き崩れ、ある者は南に気合注入を要求し、強力な張り手で悶絶し・・・またある者は笑顔で花束を渡していった。
「ありがとうございました」
先ほど激闘を終え、初代MAX WIND女王の座をつかんだばかりの3期生結城千種が花束を渡すと、場内からは大きな拍手が送られた。
「……千種、似合うわよそのベルト」
「ありがとうございます」
「後は任せたわ。完璧な女王を目指してね。……私は間に合わなかったけど、まだ遥達がいるからね。簡単に防衛できるなんて思わないように」
結城の瞳から涙がこぼれる。
「はい。あとは任せてください! 南さん、お疲れ様でした!!」
初代エースから現エースへと魂は受け継がれる。
さらに、カンナ・草薙の二期生、そして同期である氷室、マッキー、伊達が花束を贈呈。伊達と南は言葉を交わすことはなかったが、互いの想いはすでに伝わっていると思う。
これで全員……と思ったところで、耳慣れたテーマ曲が流れ、花束を抱えた松葉杖の女性が一人花道からリングへとやってきた。そう、一期生のラッキー内田だ。
「私を忘れちゃ困るわ。南さん、お疲れ様」
ラッキーは花束を南に渡す。
「ありがとう佐知子。」
南とラッキーは抱擁を交わす。
「ヒザの具合はどう?」
「まだまだね。この間手術したばかりよ。またこのリングに上がりたいけど、プロレスができるまでは当分かかるわね。」
ラッキーは笑顔のまま下がる。会場からは「戻ってこいよ~」という声も。 ラッキーはヒザの治療の為メスを入れたらしい。よくなってくれるといいんだけどね。
スカイブルーのリングに南が一人残る。リングの周りには、今までに対戦したすべてのレスラーが集結し、南のあいさつを見守っている。
「……入団してから約8年、私は常に完璧を目指して頑張ってきました。……完璧を追い求めるのは、皆さんが思っているよりもとても大変なものでしたが、私は、私なりの完璧な試合をお見せすることができたこともあったと思っています。……そして私なりの完璧な試合をお見せすることができなくなった今、引退を決意しました。私は不器用なのでうまく言えないけど……今まで応援ありがとう。こんな大勢の皆さんに見送ってもらえて私は幸せです。 ありがとう!!」
南利美に惜別の拍手・・・そして10カウントゴングが鳴らされる。
「以上を持ちまして南利美選手の引退式を終了いたします。南利美選手、いえ南利美さんにもう一度盛大な拍手をお願い致します」
南のテーマが流れ、盛大な拍手が送られる中、南は花道を歩いて退場していく。
いや・・・来るか。私は花道の奥のステージで待っているのだから。
「南、お疲れ様。ありがとう。」
「……社長、ありがとう。」
南利美は笑顔で現役を終えた。
8年目2月九州ドームにて南利美引退。この日一つの風が終わりを迎え、また新たなる風のはじまりを告げるものとなる。
スカイブルーのリングは、また次なる闘いを今は静かに待っている。