「ふえーん!ふえーん!」
榎本綾は泣きじゃくりながら走っていた。
「誰もいないよおお~~」
第1区を走った藤島からたすきを受け取った段階でブービーのチームとは2分ほど離されていたのだから当然だろう。
「ぐすん。ふえ~ん。」
泣きながら走ってはいるもののスピードは落ちてはいない。
「ふえ~~~ん。おにいちゃん!おねーちゃ~ん!!」
沿道から声援が飛ぶが榎本には聞こえていない。
「ぐすっ…いつまで走ればいいの~ひっく。」
涙で霞んでコースがよく見えていないが、誘導係のおかげでコースを外れることなく榎本は進んでいる。
ブオン!ブオン!遠くからバイク音が接近してくるが榎本はなきじゃくっているので気付かない。
「綾!しっかりするんだよ!!」
聞きなれた声が突然したので榎本はハッとなってあたりをキョロキョロと見回した。
「よお!頑張っているな。」
声の主は八島静香。今回のメンバーからは漏れているがチームNEW WINDメンバーである。八島は榎本から少し離れた場所で愛用のバイクに跨っており、その後部座席には風間社長の姿があった。
「静香おねーちゃん!!おにいちゃん!」
榎本は近寄ろうとする。
「綾、近づいては駄目だよ。」
八島がそれをやんわりと制す。
「どうして?」
「ルール上な。」
車を用意できなかったので八島のバイクを監督車として利用している。
「もう苦しいよ。もう無理だよ。」
榎本は再び泣き始める。
「そんなことはない。綾ならできるよ。」
八島と風間社長はにっこりとほほ笑んだ。
「そうかな…」
「ああ。綾は頑張ればできる子だろう。」
「うん。」
「あと少しだ。頑張れ綾。頑張ればできるってことは自分がよくわかっているだろう?」
「うん。綾いつも頑張っているもん!!」
「そうだよな。なら後ひと頑張りだぞ。」
風間の声に頷く綾。
「綾、無事走り終わったらアニメ映画見に行こうな。」
「うん!頑張る!」
八島との約束を励みに榎本は相羽の待つ中継点へと辿りついた。
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