第3回レッスル駅伝第4区走者ガルム小鳥遊の800文字ストーリーです。
「ふっ…ふっ…」
ガルム小鳥遊は観客の姿のほとんどない山道を進んでいた。
「この程度の山道なんか…余裕だな。」
小鳥遊は大柄な肉体に似合わぬ軽快なペースで進む。すでにチーム初の1人抜きを決め27位へと順位をあげている。
「…こうやって坂道を走っていると思いだすな。」
小鳥遊の脳裏にプロレス入りする前の日常が蘇る。あの頃…小鳥遊は毎日のように山に入り林業の手伝いをしていた。大の男が持ち上げられない丸太を軽々と担いで今よりもきつい勾配の山道を歩き回っていたものだ。
「あの頃は毎日汗だくの泥だらけだったな……まあ今も汗だくなのはかわりないか。」
小鳥遊はGGJの部長を名乗る人物がスカウトに来た時のあの日を思い出す。
「ふ…あの頃は部長に対して“なんだコイツ”なんて思っていたもんだが…考えてみればアイツのおかげで今の私が…ガルム小鳥遊が存在するんだよな。」
ちなみにその部長のその場しのぎのために思いつきで、小鳥遊はGGJでのデビュー戦で“負けたら即引退マッチ”を強要された。
「あの時…スカウトを断っていたり、デビュー戦で負けていたら…どうなっていたのかな。やっぱり丸太担いでいたかねえ。」
スピードを保ったまま小鳥遊はゴールへと辿りつく。
「大将!早く、早く!」
気づけば朝比奈が大きく手を振っていた。
「ま…どうでもいいか、そんなことは。私は今を楽しんでいるんだしな。」
次第に朝比奈との距離が近づいていく。
「さすが大将!いい走りだったぜ。」
「ああ。あとは任せたぞ、朝比奈。ここから先はさらにキツイコースだからな。気合いれろよ。」
たすきを朝比奈に託す。
「おうよ。大将と一緒に山道歩き回っていたからな。楽勝だぜっ!」
朝比奈はニカッと笑ってスピードを上げた。
「小鳥遊さん、お疲れ!」
岩城を筆頭に所属メンバーが小鳥遊を出迎えた、
「…部長…あんたにスカウトされてよかったよ。あんたのおかげで最高仲間と最高の団体に出会えたからな。」
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