第3回レッスル駅伝第5区走者朝比奈のお話です。
「くっ…くそッ…」
朝比奈は厳しい山道を走る。走り始める前は「こんなもの楽勝だぜ!」と思っていたのだが、実際に走ってみると予想以上にコースの勾配に苦しめられていた。
「…くっ…大将…」
自分にたすきをつないでくれた小鳥遊の顔を思い出し朝比奈はぐっと苦しみをこらえた。
「まだ…終らせるわけにはいかない。」
ここまでつないで来てくれたメンバーのためにも、そして自分を待ってくれている南のためにも…そしてそれから先の走者を務める伊達と永沢の為にも、朝比奈はここでふんばらないといけない。
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!こんんちっくしょおおおおおおおっ!!」
朝比奈は震える足にカツをいれると最後の力を振り絞る。
「少しでも…少しでも早く南にっ!」
朝比奈は自分を待つエースの顔を思い浮かべる。
「ふふ…完璧じゃないわね。」と南はいつもの口癖が聞こえてくるような気がして朝比奈はぶんぶんと頭を振った。
「じょ…冗談じゃねえ。こんなに苦しい思いをしてさらにそんなこと言われたくもない。」
朝比奈のピッチが早まる。
「プロレスでも遅れをとって、駅伝でも遅れをとるなんてありえねえからな。絶対そんなことは許されねえ。」
朝比奈は走る。ひたすらにがむしゃらに南の待つ場所へと走る。仲間の想いのこもったスカイブルーのたすきをつなぐために。
「いいか!私は絶対に勝てとはいわない。日々のプロレス練習で培った能力だけで勝てるほどこのレッスル駅伝は甘くない。だがな…ただ負けることは許されない。」
「じゃあどうすんだよ。」
朝比奈のこの問いに風間社長はふふっと笑みを漏らした。
「いい質問だ。“NEW WINDらしさ”を見せてこい。最高の団体にふさわしいパフォーマンスを披露してくれればそれでいい。」
「ったく…気楽にいってくれるぜ、あのおっさんも。」
朝比奈は苦笑する。
「南!あとは任せたぜ!」
「ええ。完璧な走りをしてみせるわ。朝比奈さん…ナイスラン。」
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