NEW WIND社長風間新 手記より。
※サバイバー1版のリプレイの設定を使用していますが、これはリプレイではありません。
※サバイバー1版のリプレイの設定を使用していますが、これはリプレイではありません。
観客達は、ダンディ須永が本気であることを感じていた。試合開始直後に向けられていた物珍しげな視線は、これまでのダンディさんの動きで熱を帯び、場内はプロレスを楽しもうという空気に変化している。
「もう終わりですかな?」
ダンディさんはトーントーンとステップを踏みながら、みぎりを挑発する。
「今のは痛かったです~。老人をいじめてはいけないと思っていたけど、もうおこりましたよ~~」
みぎりは何事もなかったかのように立ち上がると、場内のダンディコールをかき消すような強烈な張り手をダンディさんの左頬へと打ちこんだ。
「ぐおっっ!」
ダンディさんの体がロープへと吹き飛ばされ、跳ね返ったダンディさんをみぎりは素早くキャッチすると思いっきりリングへと叩きつけた。
「ぐあっ!」
高層ボディスラムと呼ばれる肩口の高さからのボディスラム。並みの女子プロレスラーならKOされてしまうほどの威力の一撃だが……。
「その程度ですかな?」
ダンディさんはすくっと立ち上がと紫色のロングタイツをパンパンと叩く。女子プロレスでは圧倒的なでは高さではあるが、男子では普通の高さだ。男子プロレスラーとして活躍していたダンディさんなら十分な耐性があるのだろう。
「むう、もう容赦はしませんよ~」
みぎりは強烈な逆水平チョップをダンディさんの白い肌へと打ちこんだ。
バチイイイッと凄い音がして、チョップを受けた部位があっというまに真っ赤に腫れあがる。
「……力任せにすぎますな。チョップとはこう放つものです!」
ダンディさんもチョップを打ち返す。
「あぐうっ……」
『魂をこめればチョップも必殺技になる』
これはダンディさんの口癖だ。その言葉通り重いチョップが炸裂しみぎりの顔が苦痛に歪んだ。
「このおおおっ!」
みぎりも重いチョップを打ち返す。先ほどの一撃よりも気持が乗っている分威力が高い。
「そうそう。いいですぞ~。だがまだまだですな……堀のチョップはこんなものではなかった!」
ダンディさんは現役時代に戦った”チョップの鬼”堀雄也の名前を口にした。
「いった~い。これならっ!」
みぎりも打ち返す。返す度に重さを増す強烈な一撃が数度繰り返された。
「ぐっ……」
ついにダンディさんの反撃が止まった。
「えいっ!」
みぎりはチャンスと見てショートレンジラリアットを繰り出す。
「ごはっ……」
ダンディさんの体が持ち上がる。
「いたっ、いたたっ!」
技を受けながらも、ダンディさんはみぎりの腕を裏十字固めに決めた。
「油断大敵ですな」
さすがはテクニシャンのダンディさんだ……みぎりのプロレス頭では対応しきれないか。
「くうっ……」
みぎりの大きな体が懸命にロープへとのがれる。
「ブレイク! ブレイクッ~!!」
サードロープを掴んだ瞬間、ミスターDENSOUレフェリーが割って入る。ダンディさんはさっと技を解くと、リング中央まで下がってみぎりを睨みつけた。
「本気で怒りましたよ~~」
どこかのんびりした調子でみぎりがダンディさんを睨みつける。
「ふふ……ここからが本番ですぞ」
ダンディさんは、この試合を通じてはみぎりに何かを教えようとしてのではないだろうか……私はそんな気がしていた。