NEW WIND社長 風間新手記より
~NEW WIND30万HIT記念特別興行~
※今回のお話は、リプレイの正史ではないため、全員全盛期の力を持って登場します。
ただし、基本的な設定は主に、リプレイサバイバー1版NEW WIND編の設定に準じています。
第5試合
武藤めぐみ VS 榎本綾
武藤めぐみはNEW WINDの3期生としてデビュー。”孤高の天才姫”と呼ばれ、南利美や伊達遥といった一期生や、カンナ神威・草薙みこと二期生と激しい世代闘争、そして頂点をめぐる戦いを繰り広げた。
同期の結城千種とはライバルとして、そしてよきタッグパートナーとしてともに戦い常にNEW WINDの最前線を盛り上げた選手である。
引退後は二代目社長秘書として私、風間新を支えてくれており、現役世代からは”むとめさん”と呼ばれ親しまれている。特に懐いているのが、今日対戦する榎本綾で、二人の微笑ましいやりとりは、新たな風を吹き込んでくれている。
本日は久々に孤高の天才姫としてのリングインとなるが、どのような戦いぶりを見せてくれるか楽しみにしたい。
対する榎本は、かつてNEW WINDに在籍したどの選手よりも体格面でも資質においても正直見劣ることは否めない。だが、彼女は、現在のスカイブルーのリングでは誰よりもファンに愛される存在である。そのファンからの愛を力に、彼女は日々成長し続けているのだ。
なお、現在はトップレスラーであるビューティ市ヶ谷の正タッグパートナーとしてMAX WINDタッグ王者に君臨している。
「おいで、綾。手加減はしない」
武藤は穏やかな表情をしている。やはり榎本相手だと、武藤めぐみとしてよりも、むとめさんとしての接し方になってしまうのかもしれない。
「ゔーーーむとめさん。綾も、負けないもん」
榎本なりに頑張ったセリフではあるが、すでに涙目になっているような気がする。さてさて、どうなることか。
「OK、ゴー!」
トニー館レフェリーの合図で試合開始のゴングが鳴る。
「武藤! 武藤!」
武藤コールの中、二人は円を描きながら徐々に互いの距離を詰めていく。
「きえええええっ!」
似合わぬ奇声をあげながら突っ込む榎本に対し、武藤はその場跳びの顔面へのドロップキックを繰り出す。!
「うっ!」
もろに顔面に食らった榎本はガードできず、いきなり鼻から流血しながら、後方へと吹き飛ばされた。
「それっ!」
半べそをかきながら立ち上がったところへ、切れ味抜群のローリングソバット!!
「ぎゃうっ!……ふえええ~ん」
榎本はもんどりうって泣きながら東側場外へ転がって逃げる。
「甘いわねっ!」
武藤は素早くロープへ走ると、場外へ向かってのスワンダイブ式ギロチンドロップ!
「ぐぎゃっ!」
まだ起き上がる前の榎本はよけることすらできず、もろに喰らってしまった。
「それっ!」
武藤は軽々と榎本を持ち上げると、リング内へ投げ入れる。武藤がパワーファイターではないにしろ、さすがに100パウンド程度の体重の榎本ではこういう風になってしまうか。
「フォール!」
武藤は右足で榎本を踏みつけ、フォール。
「Boooo!」
その態度に一部ファンからブーイングが飛ぶが武藤は涼しい顔。
「ぐううっ!」
榎本、これはぎりぎりカウント1.9で返す。(この時間帯はカウント2ルールである)
「まだ終われないないもん!」
「そうこなくっちゃ!」
反撃の正面飛びドロップキック!
「ふんっ!」
胸で受けた武藤は倒れずに踏ん張る。
「まだまだあっ!」
榎本は続けざまに3発正面飛びドロップキックを繰り出すが、武藤は倒れない。
「うーーーむとめさんのいじわる~~~!!」
脚をばたばたさせながら抗議する榎本の姿に場内から笑い声と歓声。
「もういっちょ~~~!!」
と叫んでから榎本は正面飛び”低空”ドロップキックで武藤の右膝を打ち抜いた。
「あうっ!」
予期せぬ攻撃にさすがの武藤も耐え切れず右膝をついてしまった。
「いくよ~~~っ!」
榎本は素早く立ち上がると、ゼロ距離からの得意技シャニングピーチ!(シャニング式ヒップアタック)を放つ。
「うっ……」
腕を上げてガードしようとした武藤であったが、ガードが間に合わず、榎本の可愛いヒップを顔面で受け止めるはめに。
「えいっ!」
榎本はシャイニングピーチの反動で前に倒れこみつつ、腕で反動をつけてカンガルーキック。武藤の顎先を打ち抜いた。
「がっ…」
「まだっ!」
榎本はさらにロープへ走り、通常のジャンピングヒップアタック!!
「調子に乗るなっ!」
それを受け止めた武藤は高速ジャーマン!!
「ぐはっ!」
榎本の後頭部がスカイブルーのマットの中心部に突き刺さる! これは決まったか?
「OK,フォ」
「試合時間4分経過! 4分経過!」
レフェリーがカウントに入ろうとした瞬間に、仲間リングアナのアナウンスが入った。なんという奇跡的なタイミングか。ここからはオンリーギブアップルールになる。
「なっ! 決まったと思ったのに」
「はわわ~~あっぶなかった~~~!!」
特殊ルールに救われた榎本はここからも予想以上の善戦を繰り広げ、オンリーギブアップルールの4分。そして、通常ルールの2分間も武藤の猛攻をしのぎきってみせた。
特に武藤の必殺技であるムーンサルトプレスをカウント2.9で返してみせたことや、市ヶ谷直伝のリトル・ビューティボムであわやの場面を作ったのは特筆すべきことであった。
「ただいまの試合は、時間切れ引き分け。両者失格となります」
今回のトーナメント初の時間切れ引き分けは正直私も予想外だった。
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