NEW WIND社長 風間新 手記「新たなる夢のはじまり」より
※こちらはレッスルエンジェルスサバイバー2のリプレイとなります。
旧作版のNEW WINDとはお話上のつながりはありませんが、登場人物などは一部同じものを使用しています。
◇1年目1月
「第2期の工事が終了したようです。」
霧子さんがそう報告してきた。
「おっ、やっとか。」
「はい。今までよりも2人分のスペースができました。それでもまだ16人収容の宿舎が完成するにはまだまだ時間がかかりそうです。」
「そうか…まあじっくりとやっていくしかないだろう。何年かかってもいいから必ず完成させなければ…」
私は完成予定の図面を見る。
「これが理想なんだがなあ…ねえ、霧子さん。」
「なんでしょうか、社長。」
「新しくできた二部屋に、どんな娘が入ると思う?」
そう尋ねながら私はわくわくしている自分に気づいた。
「わかりませんけど…きっとプロレスが好きな娘ですよ。」
霧子さんはもっともなことを言う。
「ま、そりゃそうだけどさ。なんかもっとないの?」
「うーん、なんとなくなくですけど…不思議な雰囲気を持つ子とか、人見知りをする子なんじゃないですか?」
「なんかプロレスラーには向かなそうなのばかりだね。なんで、そんな子だと思うんだい?」
私は不思議に思ったので理由を聞いてみた。
「いえ…理由はなく、なんとなくそんな気がしただけなんですよ、社長。どんな子かなとイメージしたら、打撃が得意な人見知りをする子と不思議な雰囲気を持つ関節技が得意な子が思い浮かんだわけです。」
「ふーん、なるほどねえ。私なんかは熱血娘とクールガールのタッグをイメージしましたよ。」
「なるほど、それもありですね。」
こうして私たちは仕事の事を忘れてまだ見ぬ新人について熱く語ってしまったのだった。
「なにい!それは許可できんぞ!」
「なんだとお!医者からも許可出てるんだよ。それにケガが治るまで休むプロはいねえんだ。とにかく俺はリハビリがてらに1月シリーズ出場するぜ。」
私は必死に止めたのだが、結局は朝比奈に押し切られてしまった。
朝比奈は”リハビリ、リハビリ”と言い張って強行出場。さっそく小鳥遊との師弟タッグを復活させると、いきなりコリィ&バニー組から勝利をあげる上々の滑り出しをみせた。
「オイオイ朝比奈よお……張り切るのは良いけどよ、無茶はするなよな。」
「わ~ってるって大将。無理も無茶もしてねえよ。なにしろこれはリハビリだっつーの。」
タッグ中心で活動した今シリーズの朝比奈であったが、一試合だけ組まれたシングルマッチではリンから完璧な3カウントを奪ってみせた。
「へっ…負ける気がしねえなあ。」
朝比奈のコンディションは日を追うごとによくなっていった。うーん…本当にリングを使ったリハビリになっていたのかなあ。
「どうでえ、大将。」
「ほう…やるじゃねえか。だけどな、朝比奈。さすがに今のお前を王座戦には連れていけねえ。今回は美響と組ませてもらうよ。」
「あなたの代わりに災厄をあの姉妹に味あわせてあげるわ。」
これは小鳥遊は最終戦で、十六夜と組んでスナイパーシスターズの王座に挑戦することになっている。先月の大会でパートナーが違うとはいえ、十六夜がコリィからフォールを奪った実績を評価したものだ。
「チッ…仕方ねえなあ。今回だけは譲ってやるよ。」
朝比奈はどこか自信を持っているように見えた。
「…大将のパートナーは自分だっていう自信があるのか?」
「…そうはいわないけどよ。俺と大将とのタッグチームには自信があるってことさ。」
「くうっ!」
北条が耐えきれずタップした。
「ええええええっ!!」
場内のファンがまさかの結末に抗議の声をあげる。
「くっ…」
北条は肩を落として控え室へと引き上げていく。
「なにやってんだ北条!負ける相手かっ!」
「頑張れよ!」
「沙希さま~~!!」
「おれは応援してるぜっ!」
次々に声援が送られる。
「今日の結果は悔しいです。完璧に極められてしまいました…私も精進が足りませんね。」
北条は唇を噛み締めながらインタビューに応えた。まさかバニー・ボンバー相手にギブアップ負けを喫することになるとは…これは完全に予想外だった。
この負けが悪い流れを作り出したわけではなかろうが、スナイパーシスターズの王座に挑戦した小鳥遊&十六夜組は王座奪取に失敗してしまう。
「くそっ…やり直した。」
「相手の方が一枚上手だったわね。」
挑戦した二人はリベンジを誓った。
第29話へ
PR