「自分自身で感じる方法かなあ」
「そう。プロレスラーであるなら、その方がいいわね。じゃあ準備をしてくるから、20分後にリングで待っていなさい」
「は~い」
綾は元気よく答えてにっこりと笑った。これから先にどんな事が待っているのかわかっているのかしら……
そして20分後、私は準備を終えて道場へと戻った。
「おおっ!」
私の姿を見た所属選手達からどよめきがおこる。ふふん、いい反応ね。
「むとめさんかっこいいー!」
「武藤めぐみ復活! って感じっすな!」
「ケッ、オバハンが無理しやがってよ」
最後はライラのやつね。とっちめてやるんだから。
「無理はしないでくださいよ」
サンダー龍子が心配そうな顔をする。
「大丈夫。別に飛んだり跳ねたりするわけじゃないから」
これはあくまでも、変型ドラゴンスリーパーの違いを伝える為のスパーリングに過ぎないのだから。
「じゃあ、綾いくわよ!」
「は、はい!」
カアン!
ご丁寧にゴングを鳴らしてくれたのは、どうやら彩菜のようね。
普段の興行でも聞いているけど、リングの上で聞くと体が熱くなるのを感じる。
「心も体も全部熱くってたまらないの!」
これは祐希子の口癖だけど、わかるような気がするな。
「はあああっ!」
私は思わずドロップキックを繰り出していた。
「おおっ!」
「ぷあっ!」
いくら綾が背が低いとはいえ、見事に顔面にヒット。自分自身でも驚くくらいに体が覚えているものね。
「どうしたの綾! さっさと起きなさい!」
「いたたっ……いきなりヒドイ!」
「何を言っているの! 体で感じるんでしょう? さっさとやり返してきなさい」
「うーっ! たああああああああっ!」
綾も負けじとドロップキック繰り出してくる。
「ふんっ!」
私は力をこめてそれを受け、綾をはじき返す。
「ぐっ……」
つもりだったけど、さすがにそうはいかないか。綾だってもうデビューから数年経っているんだもんね。
「ええいっ!」
綾の可愛らしいヒップが飛んでくる。
「ぶっ……」
私はたまらず片膝をついた。可愛らしいのは見た目だけで、威力はなかなかのものだわ。
「いきま~す!」
私の膝に乗り、綾がヒップアタックを仕掛けてくる。
「させるかっ!」
私はとっさに両腕でブロックし、綾のシャイニングヒップアタックを阻止した。
「伊達さんに散々やられたからねっ!」
私は綾の起き上がる片膝を踏みつけ、正調シャイニングウィザードを綾に打ちこんだ。
「きゃうっ!」
ダウンした綾に組みつくと、私はドラゴンスリーパーの体勢に入った。
「ぎゃうううっ!」
「これが正調ドラゴンスリーパーよ。どうかしら?」
「く、くるしいです」
当たり前よ。そういう技なんだから。
「そしてこれが、草薙流裸絞めよ」
私はクラッチを変えてみこと先輩の得意技草薙流裸絞めの体勢に切り替えた。
「ぎゃうっ!!」
チキンウイングドラゴンスリーパーとまではいかないが、腕を多少極めて抜け出しにくい形になる。
「どう?」
「い・いたいです……」
「ギブアップ?」
「ギ、ギブ」
「一応言っておくけど、みこと先輩や蓮(スイレン草薙)は、この技を痛め技として使っていたのよ」
この技は通常のドラゴンスリーパーよりもキツイ上に、みこと先輩がフィニッシュホールドとして使っていなかったので、私達はギブアップを口にすることができなかった。もちろんフィニッシュに選ぶ事はあったけど、キツイのにギブアップできない嫌な技だったわ。
「うう……ま、まだあ……」
ギブアップを口に仕掛けた綾も、それを聞いて耐えるようにしたみたいね。ふふ、子供だとばかり思っていたけど、成長しているのね。
「……じゃあいくわよ……これもまた運命……」
ほぼチキンウイングドラゴンスリーパーといえる形になるのがこの紫龍だ。全盛期に南さんや伊達さんそれに、私や千種でも時にはギブアップしてしまうほどの威力があった。
「いゃああああっ! ギ、ギブアップ!!!」
綾はさすがにギブアップを宣言したわね。
「どう?」
「痛いです」
「あんたはそればっかりね。痛くないプロレス技なんてないわよ。でも、私の紫龍は……」
「完璧じゃないわね、武藤」
「まだまだ完璧ではないですね、武藤先輩」
「完璧とはいえないと思いますよ、むとめさん」
突然複数の声が道場に響き渡った。
「だ、誰? げげっ??」
そこにいたのは、南三姉妹だった。
「随分と御挨拶な態度ね、武藤」
これは一期生の南利美先輩。
「私達はともかく姉さんに対してそれはよくないと思いますよ、武藤先輩」
「でも、それがむとめさんらしいんですけどね」
それに続く私の後輩にあたるハイブリット南(南寿美)、南智世の二人。私が先輩だから立ててはくれてるけど、南さんが3人いるみたいで非常にやりにくい。
「わかってますよ完璧じゃないのは」
「形としては出来ているけどね。智世と比べると劣るかな」
「ま、私はずっと使っているから仕方ないと思いますよ」
智世はフィニッシュホールドに一つとして紫龍を受け継いでいるわけだから、当然私よりはできるわね。
「でも、誰が使っても完璧ではないのよね。だって智世は運命の力を操れないんだから」
ハイブリットの言うとおり、氷室先輩の紫龍には運命の力が込められていた。当然先輩にしかできない技ってことになる。
「でも、なかなか楽しませてもらったわよ。智世に会う用事があってきたんだけど、こんな珍しいものをみれるなんてラッキーだったわ。じゃ、またね」
「それじゃあ、失礼します」
「では」
南三姉妹は風のように去っていった。
「な、なんだったの」
「……」
「ところで綾、違いはわかった?」
「う、うん。でも、全部痛かった……」
結局そうなるのか。やれやれだわね。
「そう。プロレスラーであるなら、その方がいいわね。じゃあ準備をしてくるから、20分後にリングで待っていなさい」
「は~い」
綾は元気よく答えてにっこりと笑った。これから先にどんな事が待っているのかわかっているのかしら……
そして20分後、私は準備を終えて道場へと戻った。
「おおっ!」
私の姿を見た所属選手達からどよめきがおこる。ふふん、いい反応ね。
「むとめさんかっこいいー!」
「武藤めぐみ復活! って感じっすな!」
「ケッ、オバハンが無理しやがってよ」
最後はライラのやつね。とっちめてやるんだから。
「無理はしないでくださいよ」
サンダー龍子が心配そうな顔をする。
「大丈夫。別に飛んだり跳ねたりするわけじゃないから」
これはあくまでも、変型ドラゴンスリーパーの違いを伝える為のスパーリングに過ぎないのだから。
「じゃあ、綾いくわよ!」
「は、はい!」
カアン!
ご丁寧にゴングを鳴らしてくれたのは、どうやら彩菜のようね。
普段の興行でも聞いているけど、リングの上で聞くと体が熱くなるのを感じる。
「心も体も全部熱くってたまらないの!」
これは祐希子の口癖だけど、わかるような気がするな。
「はあああっ!」
私は思わずドロップキックを繰り出していた。
「おおっ!」
「ぷあっ!」
いくら綾が背が低いとはいえ、見事に顔面にヒット。自分自身でも驚くくらいに体が覚えているものね。
「どうしたの綾! さっさと起きなさい!」
「いたたっ……いきなりヒドイ!」
「何を言っているの! 体で感じるんでしょう? さっさとやり返してきなさい」
「うーっ! たああああああああっ!」
綾も負けじとドロップキック繰り出してくる。
「ふんっ!」
私は力をこめてそれを受け、綾をはじき返す。
「ぐっ……」
つもりだったけど、さすがにそうはいかないか。綾だってもうデビューから数年経っているんだもんね。
「ええいっ!」
綾の可愛らしいヒップが飛んでくる。
「ぶっ……」
私はたまらず片膝をついた。可愛らしいのは見た目だけで、威力はなかなかのものだわ。
「いきま~す!」
私の膝に乗り、綾がヒップアタックを仕掛けてくる。
「させるかっ!」
私はとっさに両腕でブロックし、綾のシャイニングヒップアタックを阻止した。
「伊達さんに散々やられたからねっ!」
私は綾の起き上がる片膝を踏みつけ、正調シャイニングウィザードを綾に打ちこんだ。
「きゃうっ!」
ダウンした綾に組みつくと、私はドラゴンスリーパーの体勢に入った。
「ぎゃうううっ!」
「これが正調ドラゴンスリーパーよ。どうかしら?」
「く、くるしいです」
当たり前よ。そういう技なんだから。
「そしてこれが、草薙流裸絞めよ」
私はクラッチを変えてみこと先輩の得意技草薙流裸絞めの体勢に切り替えた。
「ぎゃうっ!!」
チキンウイングドラゴンスリーパーとまではいかないが、腕を多少極めて抜け出しにくい形になる。
「どう?」
「い・いたいです……」
「ギブアップ?」
「ギ、ギブ」
「一応言っておくけど、みこと先輩や蓮(スイレン草薙)は、この技を痛め技として使っていたのよ」
この技は通常のドラゴンスリーパーよりもキツイ上に、みこと先輩がフィニッシュホールドとして使っていなかったので、私達はギブアップを口にすることができなかった。もちろんフィニッシュに選ぶ事はあったけど、キツイのにギブアップできない嫌な技だったわ。
「うう……ま、まだあ……」
ギブアップを口に仕掛けた綾も、それを聞いて耐えるようにしたみたいね。ふふ、子供だとばかり思っていたけど、成長しているのね。
「……じゃあいくわよ……これもまた運命……」
ほぼチキンウイングドラゴンスリーパーといえる形になるのがこの紫龍だ。全盛期に南さんや伊達さんそれに、私や千種でも時にはギブアップしてしまうほどの威力があった。
「いゃああああっ! ギ、ギブアップ!!!」
綾はさすがにギブアップを宣言したわね。
「どう?」
「痛いです」
「あんたはそればっかりね。痛くないプロレス技なんてないわよ。でも、私の紫龍は……」
「完璧じゃないわね、武藤」
「まだまだ完璧ではないですね、武藤先輩」
「完璧とはいえないと思いますよ、むとめさん」
突然複数の声が道場に響き渡った。
「だ、誰? げげっ??」
そこにいたのは、南三姉妹だった。
「随分と御挨拶な態度ね、武藤」
これは一期生の南利美先輩。
「私達はともかく姉さんに対してそれはよくないと思いますよ、武藤先輩」
「でも、それがむとめさんらしいんですけどね」
それに続く私の後輩にあたるハイブリット南(南寿美)、南智世の二人。私が先輩だから立ててはくれてるけど、南さんが3人いるみたいで非常にやりにくい。
「わかってますよ完璧じゃないのは」
「形としては出来ているけどね。智世と比べると劣るかな」
「ま、私はずっと使っているから仕方ないと思いますよ」
智世はフィニッシュホールドに一つとして紫龍を受け継いでいるわけだから、当然私よりはできるわね。
「でも、誰が使っても完璧ではないのよね。だって智世は運命の力を操れないんだから」
ハイブリットの言うとおり、氷室先輩の紫龍には運命の力が込められていた。当然先輩にしかできない技ってことになる。
「でも、なかなか楽しませてもらったわよ。智世に会う用事があってきたんだけど、こんな珍しいものをみれるなんてラッキーだったわ。じゃ、またね」
「それじゃあ、失礼します」
「では」
南三姉妹は風のように去っていった。
「な、なんだったの」
「……」
「ところで綾、違いはわかった?」
「う、うん。でも、全部痛かった……」
結局そうなるのか。やれやれだわね。
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