NEW WIND社長 風間新 手記「新たなる夢のはじまり」より
※こちらはレッスルエンジェルスサバイバー2のリプレイとなります。
旧作版のNEW WINDとはお話上のつながりはありませんが、登場人物などは一部同じものを使用しています。
◇1年目8月
「地元のケーブルテレビ局から私たちNEW WINDの試合を中継したいという申し出がありました。」
霧子さんがにこやかに伝えてきた。彼女がここまで表情を変えるのも珍しい気がする。
「…ふむ…断る理由はないな。OKを出しておいてもらえるかい?本来ならこちらからお願いしたいくらいだったのにラッキーだな。」」
「ふふ…そうですね。では、先方の担当者に伝えておきますね。」
ケーブルテレビとは言えTV放送が始まるのは大きい。今までNEW WINDを知らなかった人にも知ってもらえる好機だ。
こうして福岡ギャラクシーTVとの提携をすることになった。早速今月のツアーからカメラが入ることが決定。タイミングよく九州・沖縄巡業を予定していたところだったし、タイミングとしてはぴったりかもしれないな。
「一度回っている地元九州での巡業ですな。今回は前回の反省を込めて少し小さめの箱を押えておきました。それでもこれだけの欠場者がいると苦しいですなあ。」
「小鳥遊・北条・十六夜の3人に期待するしかないですかねえ。」
「あとはマッチメイクですな。」
ダンディさんはニヤッと笑った。
「それなら任せてください。なぜかは知りませんけど自信があるんですよね。」
私はなぜかマッチメイクに関して自信を持っていた。
◇第1戦沖縄大会◇
巡業のスタートとなる沖縄大会のメインWINDに、私はとっておきのカードを切った。
いきなり初戦からガルム小鳥遊VSコリィ・スナイパーのシングルマッチをラインナップしたのだ。
本来なら巡業の後半に持ってきたい好カードなのだが…ね。
「砕け散れっ!!」
小鳥遊の巨体がコリィの体をはね飛ばす。
「きゃああああっ…」
コリィの華奢な体は本当に砕け散りそうな気がする。
「ま、まだまだっ!」
だがしかし、コリィはフォールを撥ね退けて立ち上がった。
「うおおおおおおおおっ!」
小鳥遊はコリィの足もとがおぼつかないとみるやパワーボムで担ぎあげ、リングへと強烈に叩きつけた。
「おら、フォールだぜ。」
小鳥遊はぐっと体重をかけるとコリィの体をエビに固め首をきっちりと押さえつけた。
バンッ!
「ワンッ!」
バンッ!
「トゥ!!」
コリィは足をばたつかせるが、小鳥遊の重量でがっちり抑え込まれてしまっては…
バンッ!!
「スリー!!!」
3カウントとともに沸き上がる大歓声。
「た~かなし!た~かなし!た~かなし!」
沖縄の観客は総立ちとなって小鳥遊を称えた。小鳥遊は腕を突き上げてその声援に応える。
「た~かなし!た~かなし!た~かなし!」
一度はリングを降りて控え室に戻ろうとした小鳥遊だったが、声援がとだえることがなかったため、急きょリングへと戻りマイクを手にした。
「たかなし~~~っ!」
「ガルさ~~~んっ!」
一礼してから小鳥遊はマイクを構えた。
「こんばんは、ガルム小鳥遊です。」
小鳥遊はおよそヒールとは思えない丁寧なあいさつをする。
「こんばんは~~。」
「丁寧だぞ~~」
「人よすぎ~~」
色々な声が飛ぶ。
「本日はご声援ありがとうございました。私たちはまだまだ未熟です。でも私はお約束します。いつでもどこでも熱い戦いを見せて、このマット界に新たなる風を吹かせます。我々NEW WINDの新たなる風の物語これからも応援お願いします。」
このシリーズをきっかけにガルム小鳥遊人気が一気に爆発!小鳥遊はどこの会場でも大きな声援を受けるようになる。
「私たちが考えていた正規軍VSヒール軍という図式は完全に崩れましたね。」
「…というよりも今はその時期ではないのかもしれませんな。」
ダンディさんは意外な答えを返してきた。
「というと?」
「今の新人たちが成長すればその図式に変わるかもしれませんが、今は外国人選手が強いですし、どうしたって見る側は団体所属選手を応援しますからな。言ってみればうちの選手たちは、全員巨大な悪に立ち向かう正義の味方なのです。」
「なるほど。」
今はスナイパーシスターズ抜きの興行など考えられないが、所属選手たちも確実に成長している。いずれは生え抜きのみでの興業なども打ってみたいものだ。
そのためにもまずは地道に結果を出し続けるしかないし、核となるエースの存在は絶対的に必要だ。今は小鳥遊がそのポジションに一番近いのかもしれない。
第18話へ
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