NEW WIND社長 風間新 手記「新たなる夢のはじまり」より
※こちらはレッスルエンジェルスサバイバー2のリプレイとなります。
旧作版のNEW WINDとはお話上のつながりはありませんが、登場人物などは一部同じものを使用しています。
◇女子プロレス大賞
男子に比べると規模は小さいが、女子プロレスにも大賞は存在する…いや存在するようになった…というべきか。実はこの女子プロレス大賞はこれが初の開催となるのだ。
「えっ?」
私は思わず耳を疑った。
「何かの間違いではないのか?」
私は隣に座っていたダンディさんを見る。
「いえ、確かに”ベストバウト・オブ・ジュニア”に選ばれたのは”NEW WIND7月興業のソニック・キャットVSダイナマイトリン”でしたな。」
これはまったくの想定外だった。この場にソニックは連れてきていないし、リンに至っては帰国中である。
「うーん…選ばれていうのもあれですが、私はまったく記憶に残っていない試合なのですが…」
「コリィとの試合の前に組まれていましたな。内容としては…正直新人VS中堅の域を出ていなかったとは思いますが。」
現在の女子プロレス界はジュニアの人材不足なので、そのあたりも影響しているのかもしれない。
「これが選ばれるということは、女子プロレス界はこれから…ということですよ。」
ダンディさんはそう呟いた。確かにそういう考えはありかもしれない。今はまだこの程度だったとしても、この後レベルをあげていけばいいわけなのだから。
「!!」
「ほほう…あの試合ですか。」
またまた驚いた。今月行われたばかりの小鳥遊&十六夜VSコリィ&バニーの試合がベスト・タッグバウトに選ばれたのだ。
「確かにいい試合でしたが、正直なところ以外でしたな。」
「確かに…」
この試合も確かにいい試合だったが、タイトル戦でもないし受賞するとは思っていなかった。
「へえ。私の試合がねえ。」
まるで人事のように語る小鳥遊。
「嬉しくないのか?」
「さあね。正直満足しているって試合でもないしね。どっちかって~と…心配だね私は。」
「心配?」
私は意味が分からず聞き返した。
「あの程度の試合で表彰されるってことが…さ。女子プロレスってジャンルとしてはあんまりよくないんじゃないかねえ。」
「ふむ。その意見は半分は正しいですが、半分は間違ってますぞ。何しろ、これが初の開催ですからな。来年はもっといい試合をすればいいだけのことですよ。」
「まあ、正当な意見だわな。私も頑張るとするよ。」
小鳥遊はニカッと笑った。
「おおっ!」
「ほう!」
私たちはさらに驚きの声をあげた。
なんとベスト・バウト部門を受賞したのが、7月に行われた小鳥遊VSリリィの試合。まさかの3つ目の受賞に驚くしかなかった。
「へえ。もう一つとはねえ。まっ、負けた試合じゃもらっても微妙だけどね。今度は勝って受賞できればいいと思うよ。」
小鳥遊はそういう風にコメントを残している。
「!!」
「ほほう…しかし…これはいいのですかな?」
私たちは首をひねった。なぜなら最優秀新人に選ばれたのが、まさかの十六夜だったから。
「正確には今年デビューしたわけではないですからな。」
「新人テストを合格したのがよかったのですかね?」
「ふむ。このあたりはこれから基準を考えないといけないのでしょうな。」
こうしてまさかの4部門獲得という結果で、女子プロレス大賞は幕を閉じた。
「男子の方も選考基準に疑問点がありましたが、女子の方がさらに選考基準がわかりにくいですな。」と、ダンディさん。
「うーん…制度的に完成してないのでしょうね。受賞したのは嬉しいですが、なんとなく素直に喜べないような…」
私も首を捻る。
「制度的なものはともかく、私たちの団体の選手が評価されたのは喜ぶべきですぞ。励みにもなりますし、それに選手を知ってもらうことができますからな。」
「そうですよね。私たちNEW WINDはまだ始まったばかりですものね。」
「そういうことですよ。」
今年はMVPをとることはできなかった。私は社長としていつかはMVPをとるような選手を育てたいものだと思った
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