NEW WIND社長 風間新 手記「新たなる夢のはじまり」より
※こちらはレッスルエンジェルスサバイバー2のリプレイとなります。
旧作版のNEW WINDとはお話上のつながりはありませんが、登場人物などは一部同じものを使用しています。
◇2年目9月
私はシリーズの概要を発表する前に南を呼び出した。
「きたか。」
「用件は何かしら?」
そう尋ねた南の瞳には怯えが見えた。
「…わかっているだろう?」
そう、わかっているはずだ。
「………まあね。」
5月に行われた若手のリーグ戦で全敗という成績だった南には団体からペナルティが与えられた。
南には6月に行われた慰安旅行への参加を認めず、その期間中は一人福岡に残ってのトレニーングを命じた。
さらに7月も鍛えなおす期間とし、興業への参加を認めなかった。
「では8月興業の査定結果を伝える。」
「…はい。」
南を8月シリーズで復帰させたが、それはあくまでテストのためだ。ようは6月・7月のトレーニングの成果を見極めるための実戦テストというわけだ。
「…まだまだだな。今月は出場停止だ。」
「そんな…」
私の厳しい通告に南は絶句した。
「6・7月の練習の成果が先月のシリーズでまったく見えなかった。」
「…くっ…」
ギリッと唇を噛む南。
「悔しいか?」
私はわかりきったことを聞いた。
「ええ。」
「悔しければ努力しろ。同期には負けたくないんだろう?」
「ええ。負けたくないわ。」
こうして南は9月シリーズを欠場してもう一度鍛えなおすことになった。
「私は…必ずリングで結果を出してみせる。完璧な試合を必ず…」
厳しいかもしれないが、プロとして足りない選手を出す必要はない。
南に欠けているものを彼女自身が気づき、そしてそれを改善することさえできれば必ずやれるはずだ。
南はそれだけのポテンシャルを秘めているのだから。
海外遠征中の市ヶ谷、再調整のために南が欠場と人数的には厳しいスカイブルーのリングだが、他の選手たちの活躍がその穴を埋める。
祐希子とソニックはこのところお互い勝ったり負けたりを繰り返す熱い試合を見せてくれている。(祐希子が5勝4敗で一歩リードも内容は五分)
そして…ここ最近グングン成長している朝比奈は…
「マジかよ!ホントにスリーなんだな?」
レインボー岩城レフェリーに確認する朝比奈。
「マジだよ。間違いなく3つはいったって。」
「ほんとにマジなんだな?」
「やれやれ朝比奈もしつこいなあ。今の試合は”フィニッシュバスターからの片エビ固め”で朝比奈が小鳥遊からスリーカウントを奪って勝利だよ。」
ここで本部席の仲間リングアナが正式な試合結果をアナウンスする。
「ただいまの試合は、19分45秒…フィニッシュバスターからの片エビ固めにより勝者オーガ朝比奈!」
「やったぜ!大将から3つ取ったぜ!」
まさかの勝利をおさめた朝比奈が両腕でガッツポーズをする。
「くそっ…まさかだったな…」
小鳥遊は悔しそうだ。
「ふふっ。災厄が降りかかったようね。」
朝比奈のパートナーを務めた十六夜もまさかの結末に驚きを隠せないでいた。
「すまない小鳥遊。」
「気にすんな北条。たかがタッグでとられただけだ。」
タッグマッチとはいえ小鳥遊が朝比奈にフォール負けを喫するとは…正直これは想定外だったな。
「朝比奈!見事だった。成長したなお前。」
「ヘヘッ、どうでえ大将。」
「だが、負けたのはあくまでもタッグだ。シングルじゃねえ。」
「わ~ってるよ。つうわけで来月のシリーズでシングルマッチだな。」
「そういうことだ。」
こうして朝比奈と小鳥遊のシングル再戦が決まった
「ふむ。しかし小鳥遊が朝比奈に負けるとは。」
小鳥遊は通算成績で見ると負けが多いのだが、それは全て強豪外国人選手につけられた黒星だ。したがってタッグとはいえNEW WINDの所属選手に負けたのはこれが初めでである。
世代交代というにはまだ早いが、若手選手たちは我々の思っている以上に成長しているのかもしれないな。
第51話へ
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