NEW WIND社長 風間新 手記「新たなる夢のはじまり」より
※こちらはレッスルエンジェルスサバイバー2のリプレイとなります。
旧作版のNEW WINDとはお話上のつながりはありませんが、登場人物などは一部同じものを使用しています。
◇3年目5月
5月はNEW WINDにとって特別な月である。といっても元々興行団体にとって休日の多い5月は特別な月なのだが、我々NEW WINDにとって特別な月である理由は別にある。
この手記の連載をずっと読んでいる読者の方なら当然知っていることとは思うが、私が社長をしている女子プロレス団体NEW WINDは2年前の5月に博多ギャラクシーレーンで旗揚げを行っている。
昨年のこの時期は旗揚げ1周年記念興行としてビッグマッチを開催し大成功を収めた。
もちろん今年も2周年記念興行を打つ予定であり、すでに大会場を押えている。
昨年のメインは小鳥遊と北条の初のシングルマッチをラインナップしたが、今年はそれ以上のカードを用意している。
「早いものですな。もう一年ですか。」
「ですね。あっと言う間の一年でした。」
ダンディさんと一年を振りかえろうとして、私は既視感(デジャブ)を感じた。
なんだか去年も同じような事を言っていたような気がするがきっと気のせいだろう。
この1年間での収穫は、やはり各選手が大きく成長したことだと思う。去年の今頃は経験者である小鳥遊・北条・十六夜・朝比奈に頼っていた。だが、今は違う。
市ヶ谷・祐希子・ソニック・南といったこの団体でプロデビューした選手たちが上位戦線で活躍しはじめているのだ。
他の団体でデビューしている経験者組・NEW WINDデビュー組のそれぞれの成長イコール団体の成長となり、今は場所にもよるが5000人くらいの会場までならばなんとか埋まるようになってきた。これも選手たちの頑張りあってのことだ。
「…本来ならこの2周年記念大会は所属選手全員がそろっての大きな大会を開催する予定だったのですがね。まさか…この節目の興行を前にして南が入院することになるとは…残念です。」
大きな事件やサプライズもなく、無事に終わるかと思えた4月シリーズ。ところが最終戦の試合中、南が右ヒザを痛めてしまうアクシデントが発生。なんとかネオサザンクロスロックで市ヶ谷をギブアップさせ試合には勝ったものの、試合終了後に立ちあがることができずに担架で退場。
そのまま医務室へ担ぎこまれたのだが、無理をして試合続行したのが裏目に出てしまい勝利と引き換えに大きな代償を支払うことになってしまった。
結局南は救急車で病院へと運び込まれ、そのまま入院コースになってしまったのだ。
「膝の負傷はレスラーにとっては職業病ともいえるものですが…程度が問題ですな。どうしても負担がかかる個所だけに、正直なところこの先どうなるかはわかりませんぞ。」
ダンディさん自身もヒザの故障を経験しているだけに言葉が重い。
「……」
私は言葉がでなかった。
「膝の負傷は最悪の場合“引退”もありえますからな。社長も覚悟はしておいた方がよいと思います。」
「い、引退…ですか…そんな…まさか…」
南はまだキャリア2年の18歳だ。引退するにはあまりにも若すぎる。
「…その可能性もあるということです。引退までにはいかなくても、医者に復帰は無理と診断され、懸命にリハビリにリハビリを重ね、ようやく復帰したというレスラーもいます。 確か…復帰までに5年以上かかったという話でしたな。また、ずっと完治せずに横向きでないと階段を昇降できないレスラーもいますからな。膝の負傷というのはとかくやっかいなものです。」
南が復帰までに6年もかかったら…24歳か。もうピークは超えてしまっているだろう。
また、横歩きで階段を昇降する南の姿を想像してみたが、そんな風にはなって欲しくはない。
「…最近は大きく成長してくれていたのに…」
私ががっくりと肩を落とした。
第64話へ
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恐るべし暴虐スキル
うう、今は南さんの怪我が無事に治るように祈るしかないですね・・・ハァ