編集部より。
これは連載126回にて終了した、『NEW WIND社長風間新手記』を加筆・修正した改訂版です。
無駄な部分をそぎ落とし、表現にも手を入れてあります。
印象が変わるかもしれませんが、NEW WINDの歴史を再度振り返っていただければと思います。
これは連載126回にて終了した、『NEW WIND社長風間新手記』を加筆・修正した改訂版です。
無駄な部分をそぎ落とし、表現にも手を入れてあります。
印象が変わるかもしれませんが、NEW WINDの歴史を再度振り返っていただければと思います。
◇1年目12月◇
「社長、新日本女子プロレスさんよりお手紙です。」
秘書の井上さんから手紙を渡される。
「珍しいな・・・なんだろう?」
私は普段ははさみを使うのだが、このときはちょっと驚きと興奮が入り混じっていたので即座に指で封筒をあけてしまった。
「あっ!しゃ、社長、カミソリが入っていたら・・・」
おいおい、何をいい出すのだか。
あの女子トップ団体の新女が、そのような事をするとは到底思えない。
「ふ~ん、これはちょっと驚いたな。まさかEXタッグリーグの招待状が来るとはね。」
中身は新女の年末のビッグイベントEXタッグリーグの招待状だった。
「参加されるのでしょうか?」
「いや、参加はしない。うちの選手の実力で通用するほど甘くはないだろう。だが、対抗してシングルのリーグ戦をやってやるさ。」
「社長も好きですねえ、そういう遊び心。」
シングルリーグは6月以来になるわけだし、成長ぶりを確認するにはいいアイデアなんじゃないかな。
例によって記者さんには、「うちのシングルリーグはあえて、EXにぶつけた。」とでも会見してみよう。「プロレスの強さはシングルでわかるのですよ。」とか適当なこと言って。
話題作り?その通りです。これぐらいはやらないとね。
シングルリーグの優勝はデスピナだった。これは順当だけど、第6戦では波乱が起きている。
南がAACJr王者、ミレーヌからギブアップを奪ったのだ。
新技、サザンクロスロック(飛びつき式裏十字固め)でミレーヌを撃破。
ミレーヌ本人はギブアップしていないと否定したのだが、確かにタップしている。
それは映像にも残っているし、観客・セコンドを含めて皆確認している。
ミレーヌは試合後にマイクアピールし、南とのタイトル戦を要求してきた。
「OK。来月の最終戦でタイトル戦を組みます!」
南はこれが2度目の挑戦となる。
今度はベルト奪取の期待が高まるところだが・・・
どうなることやら。こればかりはやってみないとね。
「では来月は、これ以上ない完璧なタップをとってあげるわ。」
南は自信たっぷりに言い切った。
◇1年目1月◇
プロレス大賞は年間集計で、対象期間は1~12月。そして団体経営は年度でやっているから、まだ1年目の1月だ。
このズレは意識しておかないといけないな。
さて今月の目玉カードは、『AAC認定世界ジュニアヘビー級選手権試合』だ。
ここまでうちの選手には負けた事のなかったミレーヌ・シウバだったが、昨年末のリーグ戦で南にギブアップを奪われるという事件(?)があった。
今回のタイトル戦は王者ミレーヌのアピールを受けて実現しただけに、向こうも必勝の構えでくるだろう。
すでに事前に来日し、体調を整えているとも聞いている。
そしてタイトル戦当日。
ここまでのシリーズ7戦では南とミレーヌは当てていない。
前哨戦を組む方法もありだと思うが、あえてここはプレミア感を演出してみた。
セミファイナルが終了し、ついにメインイベントを迎える。
挑戦者南には、伊達がセコンドにつく。
これは伊達が言い出した事で、あまり主張しない彼女には珍しいことだ。
「が、頑張って・・・」
「ベルトを奪ったら、真っ先に遥と防衛戦するわ。」と宣言した南。
王者ミレーヌの方も、かなりの気合だ。
「これは死闘になるかもしれないですね。」
このゴング前のダンディさんのコメント通りの試合となる。
ミレーヌも、南も素晴しいファイトを見せてくれた。
「このお!」
南の関節技が次々と決まり、ミレーヌの腕や脚を痛めつけていく。
だがしかし、ミレーヌの方も負けてはいない。
ここ一番での強さをみせつけ、南を何度もマットに這わせる。
20分が過ぎ、30分が過ぎてもまだ試合は終らない。
さらに40分を過ぎたころ、南のサザンクロスロック(飛びつき式裏十字固め)がリング中央でがっちり決まる。
これは決まる!と誰もが思った。
セコンドの伊達も「離さないで!絞って~!」と声を出していた。
・・・あと少し、あと少し絞れれば!
だがミレーヌはさすがだった。
この絶体絶命の危機を何とか脱すると、渾身のバックドロップ!
「返して、南さん!」
「くっ!!」
カウントは2.8。
起き上がって関節をとりにいく南を、もう一度バックドロップで投げるミレーヌ。
客席から返せ!という声が飛び交う。
私も思わず「返せ、南~~!!」と絶叫していた。
(あとで試合のビデオをみてみたところ、赤面するほどデカイ声だった・・・少なくても代表がやることではない。猛省だ。)
カウント3・・・いやぎりぎり2.9で南は肩をあげてくれていた。
デビューから一年に満たない選手がこれほどの激闘を繰り広げてくれる。
私の目からは自然と涙がこぼれ落ちていた。
連発でバックドロップをくらい、意識朦朧としながらも、南はサザンスクリューでミレーヌをマットに倒す。
右足を押さえて倒れているミレーヌの脚を決めにいこうとしたのだが、これをミレーヌは意地で防ぎ、ボディにパンチを叩きこんで南の動きを止めると、この試合3度目のバックドロップ!
しかもかなりの急角度だった。
「あ~~」 という客席からのため息。
私も溜息をついていた。もう返せないだろう。
そして・・・カウント3が入った。
南は力尽きたのか、ピクリとも動かなかった。
「48分36秒 バックドロップからの片エビ固めで勝者、ミレーヌ・シウバ!」
勝てない試合ではなかったが・・・それよりも・・・
私は試合の結果より南の体が心配だった。
だがしかし私には認定書を読み、王者へのベルトを巻く仕事が残っている。
セコンドの伊達やうちの選手たちに任せるしかなかった。
幸い南には怪我はなく、次の2月シリーズも普通にこなしていた。
「心配してくれてありがとう、社長。負けた事の方が悔しいわ。次は必ず勝ってみせる。」
「社長、新日本女子プロレスさんよりお手紙です。」
秘書の井上さんから手紙を渡される。
「珍しいな・・・なんだろう?」
私は普段ははさみを使うのだが、このときはちょっと驚きと興奮が入り混じっていたので即座に指で封筒をあけてしまった。
「あっ!しゃ、社長、カミソリが入っていたら・・・」
おいおい、何をいい出すのだか。
あの女子トップ団体の新女が、そのような事をするとは到底思えない。
「ふ~ん、これはちょっと驚いたな。まさかEXタッグリーグの招待状が来るとはね。」
中身は新女の年末のビッグイベントEXタッグリーグの招待状だった。
「参加されるのでしょうか?」
「いや、参加はしない。うちの選手の実力で通用するほど甘くはないだろう。だが、対抗してシングルのリーグ戦をやってやるさ。」
「社長も好きですねえ、そういう遊び心。」
シングルリーグは6月以来になるわけだし、成長ぶりを確認するにはいいアイデアなんじゃないかな。
例によって記者さんには、「うちのシングルリーグはあえて、EXにぶつけた。」とでも会見してみよう。「プロレスの強さはシングルでわかるのですよ。」とか適当なこと言って。
話題作り?その通りです。これぐらいはやらないとね。
シングルリーグの優勝はデスピナだった。これは順当だけど、第6戦では波乱が起きている。
南がAACJr王者、ミレーヌからギブアップを奪ったのだ。
新技、サザンクロスロック(飛びつき式裏十字固め)でミレーヌを撃破。
ミレーヌ本人はギブアップしていないと否定したのだが、確かにタップしている。
それは映像にも残っているし、観客・セコンドを含めて皆確認している。
ミレーヌは試合後にマイクアピールし、南とのタイトル戦を要求してきた。
「OK。来月の最終戦でタイトル戦を組みます!」
南はこれが2度目の挑戦となる。
今度はベルト奪取の期待が高まるところだが・・・
どうなることやら。こればかりはやってみないとね。
「では来月は、これ以上ない完璧なタップをとってあげるわ。」
南は自信たっぷりに言い切った。
◇1年目1月◇
プロレス大賞は年間集計で、対象期間は1~12月。そして団体経営は年度でやっているから、まだ1年目の1月だ。
このズレは意識しておかないといけないな。
さて今月の目玉カードは、『AAC認定世界ジュニアヘビー級選手権試合』だ。
ここまでうちの選手には負けた事のなかったミレーヌ・シウバだったが、昨年末のリーグ戦で南にギブアップを奪われるという事件(?)があった。
今回のタイトル戦は王者ミレーヌのアピールを受けて実現しただけに、向こうも必勝の構えでくるだろう。
すでに事前に来日し、体調を整えているとも聞いている。
そしてタイトル戦当日。
ここまでのシリーズ7戦では南とミレーヌは当てていない。
前哨戦を組む方法もありだと思うが、あえてここはプレミア感を演出してみた。
セミファイナルが終了し、ついにメインイベントを迎える。
挑戦者南には、伊達がセコンドにつく。
これは伊達が言い出した事で、あまり主張しない彼女には珍しいことだ。
「が、頑張って・・・」
「ベルトを奪ったら、真っ先に遥と防衛戦するわ。」と宣言した南。
王者ミレーヌの方も、かなりの気合だ。
「これは死闘になるかもしれないですね。」
このゴング前のダンディさんのコメント通りの試合となる。
ミレーヌも、南も素晴しいファイトを見せてくれた。
「このお!」
南の関節技が次々と決まり、ミレーヌの腕や脚を痛めつけていく。
だがしかし、ミレーヌの方も負けてはいない。
ここ一番での強さをみせつけ、南を何度もマットに這わせる。
20分が過ぎ、30分が過ぎてもまだ試合は終らない。
さらに40分を過ぎたころ、南のサザンクロスロック(飛びつき式裏十字固め)がリング中央でがっちり決まる。
これは決まる!と誰もが思った。
セコンドの伊達も「離さないで!絞って~!」と声を出していた。
・・・あと少し、あと少し絞れれば!
だがミレーヌはさすがだった。
この絶体絶命の危機を何とか脱すると、渾身のバックドロップ!
「返して、南さん!」
「くっ!!」
カウントは2.8。
起き上がって関節をとりにいく南を、もう一度バックドロップで投げるミレーヌ。
客席から返せ!という声が飛び交う。
私も思わず「返せ、南~~!!」と絶叫していた。
(あとで試合のビデオをみてみたところ、赤面するほどデカイ声だった・・・少なくても代表がやることではない。猛省だ。)
カウント3・・・いやぎりぎり2.9で南は肩をあげてくれていた。
デビューから一年に満たない選手がこれほどの激闘を繰り広げてくれる。
私の目からは自然と涙がこぼれ落ちていた。
連発でバックドロップをくらい、意識朦朧としながらも、南はサザンスクリューでミレーヌをマットに倒す。
右足を押さえて倒れているミレーヌの脚を決めにいこうとしたのだが、これをミレーヌは意地で防ぎ、ボディにパンチを叩きこんで南の動きを止めると、この試合3度目のバックドロップ!
しかもかなりの急角度だった。
「あ~~」 という客席からのため息。
私も溜息をついていた。もう返せないだろう。
そして・・・カウント3が入った。
南は力尽きたのか、ピクリとも動かなかった。
「48分36秒 バックドロップからの片エビ固めで勝者、ミレーヌ・シウバ!」
勝てない試合ではなかったが・・・それよりも・・・
私は試合の結果より南の体が心配だった。
だがしかし私には認定書を読み、王者へのベルトを巻く仕事が残っている。
セコンドの伊達やうちの選手たちに任せるしかなかった。
幸い南には怪我はなく、次の2月シリーズも普通にこなしていた。
「心配してくれてありがとう、社長。負けた事の方が悔しいわ。次は必ず勝ってみせる。」
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そういえば2話を見て思いましたが、須永さんメキシコにコネクションがあるんでしたね。須永編ではその絡みがあるのでしょうか?気になりますね(^^)
公私ともに忙しいでしょうが、これからも楽しみにしています!