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2024/04/19 12:55 |
NEW WINDの物語 第7話「AACを巡る戦い」 
 編集部より。

 これは連載126回にて終了した、『NEW WIND社長風間新手記』を加筆・修正した改訂版です。

 無駄な部分をそぎ落とし、表現にも手を入れてあります。

 印象が変わるかもしれませんが、NEW WINDの歴史を再度振り返っていただければと思います。
 
◇2年目11月◇

 新AAC世界ヘビー級王者となった伊達にいきなりの試練が。
管理団体であるAACより、『AACのマットで防衛戦を行え!』との通達。
 防衛戦を行わないとベルトを剥奪されてしまうらしい。

「・・・か、海外遠征・・・?」
 伊達は驚きを隠せない。いつもよりも声が出ていた。
「そうなんだよ。驚いたかい?」
「・・・は、はい。驚きました。・・・でも・・・行ってみたいです。」
 伊達の瞳は輝いていた。彼女が自分で意思を明確にするのは珍しい。
「分かった、私も同行しよう。一人で行かせるわけにはいかないからね。」
「・・・よ、よろしくお願いします。」

 私は、この遠征に2期生のカンナ神威を帯同させることにした。
なぜカンナを連れていくのかといえば、軽い負傷もあって今月は休ませようと思っていたところだし、AACはマスクマンおよびマスクウーマンが多い。
 団体唯一の覆面レスラーであるカンナにとって、お手本になるのは、やはりレベルの高い覆面レスラーだろう。きっと試合運びを見て学ぶものがあるハズだ。
 日本での興行は、現場監督のダンディさんにお任せしておけば大丈夫だろう。
 このシリーズの最終戦では デスピナ&ジョーカー組の保持するAACタッグに、『ジューシーペア』(マッキー&ラッキー)が挑戦する事になっているのでその頃までには戻りたい。
 なお、伊達には写真集のオファーも来ているので、AAC近くの海岸で撮影するスケジュールになっている。

◇AAC認定世界ヘビー級選手権試合◇ 

 AACの至宝奪還を誓い、伊達のベルトに挑戦してきたのはAAC不動のエースであり、前AAC王者のチョチョカラス。
日本でも人気のある選手だが、地元の声援は段違いだった。
 王者伊達の入場時には物凄いブーイングが飛ぶ。
ベルトを奪った張本人だから、当然といえば当然だが。
しかし、伊達はまったく動じない。

「ほう、頼もしいじゃないか。」
 正直意外だったが、伊達はリングに上がると別人になるタイプだからな。 
 むしろセコンドについているカンナの方が表情が強張っている気がする。
 伊達が平然とし、カンナが顔を強張らせた理由は後でわかった。

「遥さんは、言葉がわからないので何を言われても平気だったみたいです。私は独自にスペイン語を勉強していましたので、ムッとしましたけど・・・」
 なるほど、そういう事か。
 試合の方は伊達がフェニックス・スープレックスで快勝。
やはりマットが堅いAACでは投げ技や叩きつける技は有効のようだ。

「私、飛び技をもっと練習したい・・・」
 帰国する飛行機の中で伊達がボソリと呟いた。
「なにか使ってみたい技でも出来たのかい?」と私が尋ねると、伊達はコクンと頷いた。
「どんな技なんだい?」
「う、うん。あのね・・・」
 なるほど。それは伊達にはぴったりの技かもしれないな。きっと見栄えがするだろう。
 難易度が高い技なので、今の伊達では無理だが、練習をすれば使えるように大丈夫だと思う。
「私もかなり得るところがありました。 貴重な経験をさせていただいてありがとうございます。」
 カンナは試合運びや、動作などがかなり参考になったらしい。
実際帰国後のカンナは一気にレスラーとしてレベルアップしていたよ。

◇AAC認定世界タッグ選手権試合◇

 マッキーのパワー技・投げ技で主導権を握ったジューシーペアだったが、ラッキーにチェンジしたとたんに、流れを思いっきりひっくり返されてしまう。
 1期生の中では地味な存在のラッキー。
 氷室とラッキーは伊達・南・マッキーがスポットを浴びる中で常に日陰の存在。
 そのラッキーが初めて得たチャンスが、マッキーとのジューシーペア(チーム名は公募で決定)でのタッグ王座挑戦。

 ・・・結果は・・・
 力の差を痛感させられる結果となってしまった。
ボロボロに痛めつけられたラッキーが、ほぼ戦闘不能に陥り、代わったマッキーが孤軍奮闘し、デスピナ、ジョーカーをともにカウント2.9まで追い詰めたのだが・・・
 悲しいかな、コレはタッグマッチ。どんなに追い込んでも、カットされてしまえば勝利は奪えない。
 二度・三度と勝機はあったのだが・・・ラッキーのカット妨害がほぼ機能しない。
 さすがにこれでは勝てるはずもなく、18分50秒、合体ドロップキックでマッキーが沈んだ。
 この結果に怒り心頭なのはマッキー。

「しょっぱい、しょっぱい、ラッキーしょっぱすぎだ!バカヤロー!てめえとじゃ、ベルトなんか取れねえんだよ!コンビ解消だ!」
「・・・ごめんマッキー。」
「もういい。私の新しいパートナーを紹介してやるよ!」
マッキーは本部席に向かって合図を送る。
本部席ではそれを受けて、入場テーマをかける。かかったテーマは何人かの選手の入場曲をミックスしたもの。
 伊達、カンナ、氷室、南、チョチョ・・・この辺りまでは私も確認できた。
 そして複雑に絡みあっていた曲は徐々に一曲に絞られていく。

 それは・・・南の曲だった。
「私の新パートナーの南利美だ。皆、応援よろしく!」
南といえば伊達とのコンビを組む機会が多かったが・・・
「デスピナ!ジョーカー!今度こそ、私たちがそのベルト奪ってやるよ! ベルトはピッカピカに磨いておけよ!ついでにその首もきれいに洗っておけ!」といってマッキーは用意しておいたらしい磨き布を投げつける。
 ああ・・・そんなことしたら・・・
・・・案の定AAC勢との乱闘が、はじまってしまった。

◇2年目12月◇

 今年も、新女からEXタッグへの参加要請が来たのだが、断った。
 うちは新女とは馴れ合わない。それに今月はうちにもタッグの目玉がある。
 AACタッグにマッキー&南の『上南シスターズ』が挑戦するのだ。
 あの流れを受けてはこのカードを組むのは当然だろう。
あの乱闘の模様は翌週発売のプロレス週刊誌で大きく取り上げられていた。
 これは狙い通りではあるのだけどね、マスコミは上手く使わないといけないのだから。

◇AAC認定世界ヘビー級選手権試合◇

 上南シスターズ・・・強い。
試合が始まる前までは、これほど強いチームになるとは思わなかった。
 マッキーがパワーを活かした豪快な技で、デスピナ&ジョーカーの体力を奪い、南が得意の関節技で残り体力をさらに削って行く。気づくと試合は完全に挑戦者ペース。
 ジョーカーはカットに入ったのだが、それをカットした南のネオ・サザンクロスロックに完璧に捕まり、動きを止められてしまう。
「MAXいっちゃうぞ!バカヤ~ロー!」
 マッキーのフィニュッシュ宣言。
マッキーはデスピナの足をつかんで肩の高さまで持ち上げる。
 この形は・・・フィッシャーマンバスターの体勢に近いが、微妙に違う。
 正解は漫画でお馴染みの『キン肉バスター』。
 男子のプロレスでは使い手は何人かいるが、女子ではマッキーが唯一の使い手。
 ダンディさんの指導を受けて完成した技で、これが初披露となる。

 そして・・・

「25分14秒 MAXマッキーバスターからの体固めで勝者、マッキー上戸!」
 マッキー&南組がAAC認定世界タッグの新王者に。
「へへっ。やったな、南さん。」
「そうね。ベルト取れたのは嬉しいけど、ここで満足してはだめね。狙うのは伊達の持つシングル王座よ。」
 南はそういって表情を引き締めた。

今年の女子プロレス大賞が発表されたが、今年もMVPは新女に持っていかれた。
まあわずか2年でどうにかなるとも思っていなかったが、伊達遥を推す声も多くあったと聞いた。
なお最優秀新人にはカンナ神威が選ばれた。
「光栄です。」


  



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2007/08/11 20:28 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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