NEW WIND社長 風間 新 手記より。
※このお話は全126話で終了した、長編リプレイNEW WIND編および栄光のスターロード編のアフターストーリーです。
ただし、リプレイではなく創作になりますので、通常のゲーム上ではありえない展開になっております。
その辺りをふまえた上で続きへとお進みください。
単独でも楽しめるとは思いますが、人物の設定などはNEW WINDに準拠していますので、NEW WIND編を先に読んで頂く事をお勧めいたします。
◇17年目冬◇
「武藤君!」
「はい。なんでしょうか、社長?」
「旗揚げ17周年記念興行の新日本ドーム大会についてだけど、君はどんなカードがいいと思う?」
私は『秘書』の武藤めぐみに意見を求めた。
「そうですね・・・普通なら団体の看板である『MAX WIND』がメインだと思いますけど。」
いつも意見をハッキリと言う武藤だが、今回は歯切れが悪い。
「・・・なにか含みがあるね?」
「はい・・・」
武藤は躊躇しているようだ。
ま、秘書としてはそれくらい抑えてくれた方がいいのだが、どうも武藤らしくない気がする。
「遠慮しないで意見を言っていいよ、武藤君。」
「はい。では遠慮せずに意見を述べさせていただきます。」
「うむ。では意見をきかせてもらおう。」
私は2代目秘書の顔をじっとみつめた。
「・・・こういってはなんですけど、今の女王であるマイティ祐希子(※12期生)は強すぎます。もう団体内には相手がいませんし、めぼしい海外の強豪はすべて片付けてしまいました。」
「そうだな。一番可能性の高かったスイレンたちが8期生が引退してしまった今、マイティを止めることは誰も出来ないだろう。」
私はリングを去っていったスイレン草薙とシャイニング神威の顔を思い浮かべた。
「はい。現状で可能性があれば、相羽と市ヶ谷ですが・・・二人とも、もう何度も祐希子に負けていますし、それに相羽も衰えを見せ始めていますから。」
武藤は大きくため息をついた。
「このカードではお客さんは入らないかな?」
「そうですね。今のNEW WINDはこう言ってはなんですけど、私たちが現役だった頃ほどのスター選手がいませんし、確実にレベルも落ちています。そして集客力もありません。」
いいにくい事をハッキリと言ってくれるね。
「相変わらずハッキリ言うね、武藤は。」
「当然です。先任秘書の霧子さんから、『社長への意見はズバズバ言ってOKだから』と言われていますし。」
旗揚げ前から私の秘書を努めてくれていた井上さん(井上霧子)は15周年を区切りに寿退社。
今はさる財閥の跡取りの嫁である。
「やれやれ。確かに私にはハッキリ言ってくれるくらいがちょうどいいけどさ。武藤はハッキリ言いすぎなんだよな。」
「それが私のいいところですよ、社長。」
未だに独身なのは、こういった性格のせいだろうなあ。
(※なお武藤は盟友の結城千種と同居している。口が悪い人間の中には、「同居じゃなくて、同棲じゃないの?」という奴もいるらしい。)
「あはは・・・そういうことにしておくよ。それにしても困ったな。今度の新日本ドーム大会・・・なにか目玉カードはないものか・・・」
「難しいですね。そもそも今のウチが新日本ドームを埋めるなんて不可能に近いですから。15周年以降のドーム大会は採算ラインぎりぎりなんですよ。」
NEW WINDの主役だった、かつてのスター選手、伊達遙・南利美・カンナ神威・草薙みこと・武藤めぐみ・結城千種・永沢舞・吉田龍子は14年目までの間に全員引退し、すでにスカイブルーのリング上にはいない。
この段階で集客力には翳りが見えていたが、まだスイレン草薙やシャイニング神威がいてくれた。この二人は人気も実力もあったかので助かっていたのだが、二人ともすでに引退してしまった。
そして今のNEW WINDを支えているのは、すでにベテランとなった9期生のスターライト相羽と、エースである12期生マイティ祐希子だった。
マイティはわずかキャリア2年足らず、弱冠17歳で団体の最高峰である『MAX WIND』を奪取するなど、超1流の実力の持ち主である。
だがしかし、その才能は逆に作用した。
彼女には資質がありすぎたのだ。
周りに比べると実力が一人だけ突出してしまい、女王戦の相手がいなくなってしまったのだ。
その結果、団体人気は低迷。
NEW WINDの人気を支えてくれたのは、過去の歴史を振り返ってみるとわかるが、「ライバルストーリー」である。
1期生の伊達と南、それを追う2期生のカンナとみこと。
さらに3期生の結城と武藤・・・後輩は先輩の背中を追いながら、同期とのライバルストーリーを展開していたものだ。
そして4期永沢・5期吉田・6期ハイブリット南は、先輩たちとの世代闘争でリングを盛り上げた。
マイティにもライバル的な存在はいるにはいた。3期先輩にあたる、スターライト相羽である。
一度は相羽がベルトを奪取し、マイティの壁として立ちふさがったのだが、それもそんなに長くは続かなかった。
その後ベルトはマイティの腰に移り、以後移動していない。
他の選手も頑張ってはいるのだが。
マイティ以外のスター選手不在の中、今一番会場人気があるのが、野生的な魅力で人気のフォクシー真帆だったりする。
「真帆に任せろ!」と元気一杯に叫んでいるが、実力は未だにジュニアレベルだ。
とてもではないが、大会場のメインを任せる事はできない。
「ふう・・・困ったものだ。」
「・・・そうだ・・・社長、思い切って伝説を復活させるのはどうでしょうか?」
「伝説を復活させる?」
私は意味がわからず鸚鵡返しに聞き返した。
「はい。ドームを札止めにしたのが伝説なら、その伝説を復活させてしまえばいいんです。」
「どうやって・・・だ?」
「・・・『レジェンド』を復活させるんです。」
武藤はそういってにこっと微笑んだ。
(つづく)
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コメント
アフターストーリーっていいですねぇ。こういうその後談的なショートストーリーは大好きです。それにしても、確かにリプレイ終了時のマイティは頭2つ抜けていましたし、対抗馬になりうるビューティなお嬢は資質が劣る上に史実と違い後輩になっていましたから、一人勝ち過ぎてプレイヤー泣かせの状態ですよね。
「レジェンド復活」どんな展開になるか楽しみにしています。なんだか、缶コーヒーの『ワンダモーニングショット』の最新CMは故ジャイアント馬場が活躍する話らしいので、それを彷彿しました。Nさんはどんな展開にもっていくか楽しみです。
「レジェンド復活」どんな展開になるか楽しみにしています。なんだか、缶コーヒーの『ワンダモーニングショット』の最新CMは故ジャイアント馬場が活躍する話らしいので、それを彷彿しました。Nさんはどんな展開にもっていくか楽しみです。
posted by 赤猫at 2007/11/11 14:10 [ コメントを修正する ]
いよいよ始まりましたね。『秘書』武藤めぐみ・・・いい響きです。
千種と同棲とは誰が言い出したのかは分かりませんが状況を的確に
掴んでいますね。他人が立ち入れない空気を作っていそうですw
祐希子が絶対女王となったがゆえに人気低迷とは皮肉な結果ですが
この状況はわかりますねぇ。資質Sの成長の凄まじさ故に
対戦相手に困るというのはサバイバーでは良くありましたから。
ライバルがいれば別でしょうがいない状況で「レジェンド」復活にて
状況の打破を図るとはどういう展開になるか楽しみです。
千種と同棲とは誰が言い出したのかは分かりませんが状況を的確に
掴んでいますね。他人が立ち入れない空気を作っていそうですw
祐希子が絶対女王となったがゆえに人気低迷とは皮肉な結果ですが
この状況はわかりますねぇ。資質Sの成長の凄まじさ故に
対戦相手に困るというのはサバイバーでは良くありましたから。
ライバルがいれば別でしょうがいない状況で「レジェンド」復活にて
状況の打破を図るとはどういう展開になるか楽しみです。
posted by こげぱんだat 2007/11/12 00:13 [ コメントを修正する ]
>アワモさん
はい、こう持ってきます。
霧子さんのお相手に関しては本文中で触れる予定は今のところないのですよ。
霧子さんほどの才媛なら、良縁にも恵まれるでしょうということで。
>赤猫さん
その後のお話は書きたいなと思ってはいたのですが、以前ゼロさんとのツリー式合作SSで少し書くことができたのと、とある方からきっかけを頂いたのが全ての始まりですね。
新規リプレイをはじめられない罪滅ぼしではないですが、一番気持ちを入れられるNEW WIND編のアフターをはじめました。
マイティさんは、あのままだと衰えをみせるまで無敵の女王の雰囲気でした。
なので、そのあたりを踏まえて書いています。
続きをお楽しみに。
>こげぱんださん
こんな日が来るかもしれないということで、武藤の『秘書見習い』の伏線を張っておきましたので、有効活用です。
二人は仲良く暮らしているようですヨ。
どんな生活なのかは、想像にお任せします(笑)
強いものが一人だと、盛り上がらないだろうということから始まってます。
レジェンドの投入がどうなるか、また誰が登場するのかは、続編にてご確認ください。
はい、こう持ってきます。
霧子さんのお相手に関しては本文中で触れる予定は今のところないのですよ。
霧子さんほどの才媛なら、良縁にも恵まれるでしょうということで。
>赤猫さん
その後のお話は書きたいなと思ってはいたのですが、以前ゼロさんとのツリー式合作SSで少し書くことができたのと、とある方からきっかけを頂いたのが全ての始まりですね。
新規リプレイをはじめられない罪滅ぼしではないですが、一番気持ちを入れられるNEW WIND編のアフターをはじめました。
マイティさんは、あのままだと衰えをみせるまで無敵の女王の雰囲気でした。
なので、そのあたりを踏まえて書いています。
続きをお楽しみに。
>こげぱんださん
こんな日が来るかもしれないということで、武藤の『秘書見習い』の伏線を張っておきましたので、有効活用です。
二人は仲良く暮らしているようですヨ。
どんな生活なのかは、想像にお任せします(笑)
強いものが一人だと、盛り上がらないだろうということから始まってます。
レジェンドの投入がどうなるか、また誰が登場するのかは、続編にてご確認ください。
posted by Nat 2007/11/12 18:28 [ コメントを修正する ]
そう持ってくる訳ですか。
霧子さんのお相手を気にしつつ、続きを楽しみにしています。