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2024/04/20 03:03 |
作品名:『必殺技』  H・N小金餅さんの作品 
 この作品は、H・N小金餅さんの投稿作品です。
”30のお題+α”より、『必殺技』になります。

 以前は別サイト(お題専用)にて頂いた記事をUPしていましたが、管理人Nの手違いでサイトを消去してしまったため、改めて本館にて再公開いたします。



 初めまして、小金餅というものです。
 川柳をたまに送ってますが、レッスル界に足を踏み入れるのはこれが最初です。
 
 結構長くなってしまいました。
文才の欠片も見当たらない稚拙な文章ですがお読みいただければ幸いです。
なお文章を作るに当たって少々N様のSSの設定を使わせてもらってます。

 ※小金餅さんから頂いたメッセージを抜粋して使わせていただいてます。



「必殺技が欲しいですって?」
後輩レスラーである榎本綾の唐突な発言にビューティ市ヶ谷は思わず聞き返した。
「うん。もっとこう、麗華様みたいに強くて派手なの。」
「少々お待ちなさいな。貴女はまだデビューしたてでろくな技も使えないでしょう。 それを必殺技とは十年早いですわ」
 市ヶ谷にしては珍しく理屈の通った台詞ではあるが…
「だってどんな技を出しても全部受け止められたり避けられたりしちゃうんだもん」
「物事には順序というものがありますわ。今の貴女に必要なのは基礎体力の強化と受身の練習を…」
「とにかく綾も、もっとすっごく強いのが欲しい~」
 綾が駄々をこね始める。
こうなってしまえばさすがの市ヶ谷にも彼女を黙らせることは出来ない。
(地頭など怖くないですけど泣く子には勝てぬというのはよく言ったものですわ…)
「えぇい、仕方ありませんわ。確かに指標の一つでも作れば練習嫌いの貴女でもやる気は出るでしょう。これ!そこの下僕1号!」
「わ、私ですかぁ!?」
 市ヶ谷が呼んだのは小縞だった。
「これからこの小娘の特訓を行いますわよ!ちょっとばかり手伝いなさいな」
「でも私は…」
「でももへったくれもありませんわ!伸びの悪い同期が成長する姿を見たくはありませんの!?」
「…はぁい」
 結局強引に引き込まれてしまった小縞である。


その1「スプラッシュマウンテン編」

「やるからには徹底的にやりますわよ!最強の技を叩き込んでやりますわ!」
「わ~い」
「でもこれはいきなり難易度高すぎじゃあ…」
「お黙りなさい!」
 練習着に着替えてやる気満々の榎本と市ヶ谷である。
「というわけで下僕1号、技を受けて御覧なさいな」
「いきなりですか」
「さっさとおやりなさい!」
「は~い」
リングに上がる榎本と小縞。
「ほら、やって御覧なさい」
「えっと…」
とりあえず小縞に前傾姿勢になってもらって頭を跨いで腹に手を回し、体勢を整える榎本。
「持ち上げて…」
「…」
「……」
「持ち上げて……」
「………」
「…………」
「持ち上げて………」
「……………」
「……持ち上がりませんのね」
「無理だよぉ…」
 精一杯踏ん張る榎本と微動だにしない小縞に冷ややかな目線を送る市ヶ谷。
「やはりこういう技は基礎から固めていかないと無理ですわね」
「だから言ったのに…」
「何かおっしゃいまして?」
「いえなんでも」


その2「JOサイクロン編」

「次はこれですわ!」
「は~い」
「もっと難しいような気がするんだけど…」
「お黙りなさい!心頭滅却すれば火もまた涼し。その気になれば何でも出来ますわ」
「もう何が何やら」
 もう突っ込むのに疲れたらしい小縞。これから先もつのか心配である。
「ところで小娘。ブリッジは得意ですの?」
「え~と…よいしょ」
 その場でブリッジを行う榎本。
「あら…思ったよりは綺麗なのですね。それなら可能性はありますわ」
「ほんと!?」
 はしゃぐ榎本と呆れる小縞。
「では下僕1号、受けて御覧なさいな」
「またですか」
「しのごの言わずさっさとおやりなさい!」
「へーい」
 小縞の後に回り、股に頭を通して腕をホールドする。
「持ち上げて…」
「お」
 今回は何とか肩車の体勢で持ち上げることができた。
「そのまま後にブリッジを……あわわわ」
 あまりの重さに榎本は後にバランスを崩し始めた。
「ちょ、ちょっと待っ…そっちはリング外…」

 どんがらがっしゃん

 しばらく後退してから崩れ落ちたので小縞はリングから放り出されて地面に落下した。
「…やはり無理ですわね」
「いたたたた…」
 頭を押さえて何とか立ち上がる小縞。
「というか貴女もなかなかタフですのね」
「いっつも鍛えられてますから、はい」
 何やら皮肉的な意味合いが込められていそうだが市ヶ谷はまったく気付かない。
「やはりリフトアップ系はまだ厳しいですわね」
「だったら最初からやらせなきゃいいのに…」
「何かおっしゃいまして?」
「イエナンデモ」


その3 「ドラゴンカベルナリア編」

「握力が必要とはいえ、コツを掴めば関節技は何とかなりそうということでこれですわ!」
「本当にそんなに単純なんですかねぇ…」
「お黙りなさい!」
 何度もこの展開を繰り返しているような気がする。
「というわけでやって御覧なさいな」
「もう私が受けること前提ですか」
 リングに上がる榎本と小縞。
「えっと…ここをこうしてそこをあぁして…」
「………」
「………」
 足を絡め、まずはロメロスペシャルの体勢に入ろうとする。
「よいしょ…っと……」
「………」
「………」
 続いて首を取り、カベルナリアへ移行。
「よ…っと」
「………あ、いい感じかも」
「………ちょっとお待ちなさい」
 市ヶ谷が技を止めた。
「なーにー?」
「一体技を極めるのに何時間かけているのですの?」
「え?え?」
 これは市ヶ谷の過剰表現であるが実際に数分を要している。
「確かに物凄く待たされたけどね…」
「これでは使い物になりませんわ。別の手を考えねば」
「もう少し簡単なのにすればいいのに…」
「お黙りなさい!この私が教えるからには最高の技でなくてはなりませんわ!」
「へーい」


その4 「コンビネーションキック編」

「投げだの関節だの技術を要するものはダメですわ。打撃なら適当にやってればそれなりに映えるでしょう」
「それは打撃を舐めているような気がするんですけども…」
「見てくれさえよければ良いのですわ。この際威力は問いません」
「うわ、ぶっちゃけたよこの人」
「さぁ、やって御覧なさい!」
「は~い」
「へ~い」
 リングに上がる2人。その足取りは実に対照的である。
「まずはローキック!」
「えいっ」
 可愛らしい掛け声とともに蹴りを放つ綾。

 ぺちっ

「………」
「…つづいてミドルキック」
「やぁっ」

 ぺしっ

「………」
「……そしてとどめのハイキック」
「えーいっ」

すかっ

「………」
「…まぁそれなりに予測できた結果ではありますが、まさか届かないとは……」
「というか当たっても微動だにしません」
「そこはプロ精神をもって派手に受けなさい!」
「そんな無茶な」
「貴女も貴女でもう少し気合を入れなさい!」
「は~い」
「…はぁ」
 榎本の生返事に突っ込める者はいない。


その5 「シューティングスタープレス編」

「こうなったら貴女の唯一の長所である身のこなしを使うしかありませんわね。最強の飛び技をマスターしてもらいますわよ!」
「もうオチは見えているような気もしますけど」
「オチなどと言うのではありません!諦めたらそこで最後ですわ!」
(時々良いこと言うんだけどなぁ、この人)
「ではやって御覧なさいな」
「だからいきなり出来る技じゃないって…」
「そのやり取りはいい加減聞き飽きましたわ。さ、早く」
「はいはい」
 リングに寝そべる小縞。
「よいしょ…っと」
 普通に足をかけて上ろうとすると大変なのでぴょんと飛び上がってポストに立つ榎本。
「さて、ここからが…」
「勝負か…」
「…………………」
 案の定榎本は最上段で膝を笑わせる。
「…無理しなくてもいいんだよー」
「そうですわね…やはり貴女にはまだ早かった……」
「……~~えーーーーい!」
「え!?」
 2人が諦めかけた瞬間、榎本は小縞に向かって大きくダイブした。

 ドスン!

「ぐはっ!!」
 空中で後方一回転した榎本は小縞に腹から落下した。
「………まぁ」
 自分で与えた試練とはいえ、驚きを隠せない市ヶ谷。
「……ふぇ~ん、怖かったよ~。麗華さま~」
 榎本がリングから降りてきて市ヶ谷に飛びついた。
(まぁ…技を放つたびにこんなことになってしまっていては使えませんわね…)
 市ヶ谷は榎本の頭を撫でながら考えた。
「これで必殺技の会得がいかに難しいか分かったでしょう?榎本さん?」
「…うん、私、頑張る……」
「よろしい。まぁ今のところはそのお尻でも擦り付ける必殺技にしておきなさいな」
 市ヶ谷は榎本のお尻をぺチンと軽く叩く。
「は~い」
「では、練習も終わったところでケーキでも食べに行きましょうか、榎本さん?」
「わ~い、ケーキだケーキだー」

 そんなこんなでぐだぐだと練習場を去る二人であった。



 そして今回の哀れな犠牲者が一人。

「…………私、忘れられてない?」


 (終)
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2008/02/25 19:00 | Comments(0) | 参加企画

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