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2024/04/26 22:28 |
NEW WINDの物語 第52話「愛の力」  

NEW WIND社長 風間新 手記より


 改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。

 この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
 以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編のその66「愛の力」に該当するお話です。)


◇7年目4月

『春の嵐』シリーズ第1戦 第1試合 伊達遥 VS フェニックス遥。
 これはいつもより1月早いデビューであり、対戦相手はあえて伊達にした。ハイブリットの時もそうだったが、どうせ比較されるのなら早い方がいい。伊達遥に対し、敵対心を持つ片倉遙…いやフェニックス遥。客席からは「似ているなあ」という声が聞こえる。

 カアンッ!…フェニックス遥のデビュー戦のゴングが鳴った。
 しかし伊達とフェニは対峙したまま動かない。多分伊達の構えに隙がないから、フェニは動きがとれないのだろう。
「攻めろ~~!!」「動け!!」
 客席から怒声が飛ぶ。
「くっ!」
 先に動いたのはフェニ。プロレス最初の動きはロックアップだった。それに伊達が応じ力比べに入る。見た目も背格好も似ているが、やはり鍛え方が違う。
「くっそ!」
 フェニがどんなに頑張っても伊達は涼しい顔のまま。そして涼しい顔のまま余裕でフェニを押しこんでいく。
「・・・その程度?」と伊達が冷たく笑う。
「くっそおお!!」
 必死になって返そうとするフェニだが、ついにブリッジの体勢に押し込まれてしまった。
「!」
 伊達はそのままフェニの上にポンと乗ると、両手を離してジャンプする。
「ぐえっ!」
 伊達の変形フットスタンプがフェニの腹部を捕らえる。
「カバー!」
 伊達はそのままカバー。
「くそっ~~!!」
 フェニはそれをブリッジで跳ね除けた。
 ようやく立ち上がったフェニに、伊達は容赦のないドロップキック。1発目は胸板を打ち抜き、倒れないとみるや2発目を顔面に打ち込む。
「…」
 ダウンしたフェニを伊達は冷たく見下ろす。
「伊達っ!!」
 フェニはエルボーでの反撃を試みるが、それが伊達に届く事はなかった。突っ込んでくるフェニに対し、伊達はカウンターのハイキックを一閃。フェニはそのまま前のめりに崩れ落ちる。
「レフェリー、ダウンカウント。」
 伊達はフォールには行かず、ダウンカウントを促したが、正直カウントを取るまでもないだろう。フェニはすでに気を失っているのだから。
「3分1秒・・・ハイキックからのKO勝利で勝者伊達遥。」
 なにもさせずに勝利した伊達。これは計算されているのだろう。フェニにファンの同情を集めさせること、そして、差をわからせるために。

「悔しいです。絶対、やり返します。」
 意識を取り戻したフェニは涙を流して悔しがった。頑張れフェニ。悔しさの分だけ強くなれるよ。
「伊達、ずいぶんと厳しい愛情表現だな。」
「ええ。・・・でもこうしないと彼女が負けるから。」
「しかし・・・今まで見たなかで一番容赦のないデビュー戦だったな。」
「ごめん・・・なさい。」
「謝る事はないさ。これをバネにフェニも強くなるだろう。」

 今月はEWAシングルとAACタッグのタイトル戦を組んだ。まずEWAシングルは王者結城が、盟友武藤の挑戦を下し、3回目の防衛に成功。
そしてAACタッグは絶対王者になりつつある『ホワイトスノー』カンナ&みこと組に、先輩タッグ伊達&南が挑む。
 肉体的な衰えを感じ始めた南にとって厳しい相手。だからこそ一番信頼できる伊達と組んでの挑戦を志願。
「これが最後の挑戦かもしれないから・・・遥と組んではね。」と南は笑っていた。
 やはりというべきか『ホワイトスノー』は南に照準を絞ってきていた。勝つためには弱者を狙うのは鉄則だ。それがプロというものだ。
 カンナとみことの波状攻撃を受け、グロッキーになる南。要所要所で繰り出す関節で反撃はするのだが、単発で終わってしまう。 
「くっ…」
 伊達になんとかチェンジしたが、今度はその伊達が連繋技で攻め込まれてしまう。南はカットに入る事もできず、伊達は一気に体力を消耗してしまった。
「遥!」
 南がタッチを要求する。伊達はちょっと迷ったが、タッチする。チャンスと見たみことが南にエルボーをいれて動きを止めるとすかさず『竜巻』を狙った。
「もはやここまで!」と誰もが思ったものだが、南の目はまだ死んでいない。
 南は巧く体勢を入れ替えると、みことの右足を取った。『サザンブレーカー!』だ。 南が最初に使っていたフィニッシュホールドが、ガッチリとみことの右足を捕らえた。
「遥!!」と南が叫ぶ。
「・・・任せて!!」
 伊達も叫び返し、コーナーからリングに飛び出そうとするカンナへ突進。
「させない!!」
 伊達のフェニックスニーがカンナのボディを捕らえ、場外へと叩きだす。伊達はそのまま場外へと降りると、腹部を押さえ悶絶するカンナをハーフボストンクラブで捕獲。
「南さん!!決めて!!」
 伊達が場外から叫ぶ。
「南~~!!」「南さん!!」
 客席から、エプロンサイドのセコンドから声援が飛ぶ。…南が愛されているのがわかる。

 そして・・・レフェリーがゴングを要請した。
「29分4秒、29分4秒、サザンブレーカーにより勝者、南利美!!」
 この瞬間浮かんだ南と伊達の笑顔・・・そしてセコンドの笑顔・・・客席の笑顔。私はけっして忘れる事はないだろう。とても素敵な空間だった。

「私と遥は・・・雨と太陽のように釣り合わないタッグですが、でも・・・最高のタッグパートナーです!ありがとう!!」
 南はそうマイクでアピールすると、伊達をぎゅっと抱きしめる。その光景に再び拍手が贈られる。
 南ファンの女性なのかはわからないが、泣いている女性客もいる。
 南と伊達のお互いを尊敬しあう愛、観客からの南への愛、そして南を慕う同輩・後輩たちの愛。すべてが南を後押しした結果、圧倒的な強さをみせつつあったホワイトスノーを撃破できたのだろうな。

 7年目4月 南利美はまだまだ現役トップレスラーであると自ら証明してみせた。


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2009/04/13 18:00 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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