NEW WIND社長 風間新 手記「新たなる夢のはじまり」より
※こちらはレッスルエンジェルスサバイバー2のリプレイとなります。
旧作版のNEW WINDとはお話上のつながりはありませんが、登場人物などは一部同じものを使用しています。
◇2年目11月
「オーホッホッホ。ただいま戻りましたわ。」
ビューティ市ヶ谷がWWCAへのプロレス留学を終えスケールアップして戻ってきた。
「戻ったか市ヶ谷。」
「お帰り麗華。」
「社長そして利美。出迎えご苦労さまですわ。」
「どうだったWWCAは?」
「そうですわねえ。私のファンを2億人ほど増やしてきましたわ。オーホッホッホ。私の美しさの前には造作もないことですけども。」
相変わらずな市ヶ谷は。もっとも彼女がいないNEW WINDは平和ではあったが何か物足りなさを感じていたのも事実だ。やはり市ヶ谷の存在感というのはすごいものがある。幼いころから財閥の令嬢として鍛えられただけのことはあるな。
「…さいたまは相変わらず“さいたま”ね。」
祐希子が嫌味をいうが、市ヶ谷は意に介さない。
「…あら誰かと思えばマイティ祐希子さんじゃありませんの。私が海外で大きく成長している間に少しは貴女も成長したのかしら?」
いつもならケンカになるところだが、意外なことに市ヶ谷はサラリと受け流した。
もっとも皮肉というなのスパイスがピリリと効いてはいるが(苦笑)
「…意外ね。」
南が思わず呟く。それはその場にいた全ての人間の総意でもあった。
「どうしたのさいたま?何か悪いものでも食べた?」
言い方は悪いが祐希子も市ヶ谷を心配する。
「…カレーばかり食べている貴女こそ大丈夫なのかしら?」
「カレーは体にいいのよ!」
祐希子はムキになる。
「ま確かにそうですわね。食べ過ぎなければですけども。」
おかしい。これは絶対におかしい。
「どうした市ヶ谷、何かあったのか?」
私は心配になって尋ねた。
「別になにもありませんわ。」
市ヶ谷はあっさりと否定した。
「なにか…影響を受けたものとかなかった?」
南が私をフォローする形で尋ねる。
「影響を受けたもの?…そうですわね。一つありますわね。」
「へえ、それはなに?」
「なにというよりも場所なのですわ。私はそこで感銘を受けましたわ。影響を受けたといえばれですわね。」
市ヶ谷の性格に影響を与えたある場所とはいったいどこなのだろうか。
「その場所とはどこだい?」
「…ナイアガラの滝ですわ。」
ナイアガラの滝か!確かにあの光景は雄大だし、市ヶ谷が感銘を受けてもおかしくはないだろう。
「あの大きな滝を見て私は思いましたの。小さなことにこだわっている場合ではないと。私もあのナイアガラの滝のような大きな人間になりますわ。」
まさかそこまでとは…あの市ヶ谷がそんなことを感じるとはね。いや、自然というものは素晴らしい。やはり我々にはない力を持っているな。人類がどんなに進化し、技術が進歩したとしても自然の力に勝つことはないだろう。
「私はあの美しく雄大なナイアガラの滝を見て新必殺技のヒントを得ましたわ。私がすべての頂点に立つための必殺技を。」
「それって……まさかナイアガラドライバー…じゃ…」
南がぼそっとつぶやく。確かにナイアガラドライバーという技はあるのだが…まさかね。
「…そのセンスのかけらもない恥ずかしいネーミングはなんですの?美しさのかけらもないネーミングですわね。」
やっぱりな。
「ではどんな技名なんだ?」
私は興味を惹かれて尋ねた。
「ナイアガラのように華麗で雄大かつ…高貴な技ですわ。まさにこの技は私にふさわしい技…その名前は……」
「その名前は?」
全員がゴクリと唾を飲み込んだ。
ここまで言うからには想像を超えるネーミングに違いない。
「もったいつけてないで早く教えなさいよ。」
「いいでしょう。私が新たに身につけた究極の必殺技…その名前は…」
もう一度言うがナイアガラドライバーではないそうだ。
「………」
「………」
「その名前は……”ビューティボム”ですわ。」
その場で皆がこけたとは言うまでもないだろう。
あれだけの話のあとにビューティボムとは…驚いたよ。
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