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2024/11/29 11:48 |
イナエさんの投稿作品 その1「ライバル」
 この作品はレッスルエンジェルス愛で、『コレクターズ』の軍団長をされているイナエさんの投稿作品です。
 
 今回は初回ということで、まずはイナエさんからのメッセージをお伝えしますね。


 今回はNEW WINDのサイトで『創作の為の45のお題』を拝見し、すごい感銘を受けました。皆さん自分の好きなキャラクターたちを自由に表現して、ゲームだけじゃ伝わらない彼女たちの一面を見させてもらいました。そしてレッスル愛を感じました。

 そんな皆さんに感化されたのか、自分も何個か勢いに身を任せてSSを書いちゃったりしてしまったり。でも、サイト持ちじゃないので、こうしてNさんにメールを送ったしだいです。

 それにせっかく知ったサイトだし、このまま見てるより、微力ながらなにか力になれないかと……。


Nより イナエさん、ありがとうございます。
 では、続きより、作品へどうぞ。


1.ライバル

――声援が飛び交うリング上で、二人の女子レスラーの因縁の戦いがまさに始まろうとしていた。
青コーナーに立つのは長いポニーテールがトレードマークの元キックボクサーの近藤真琴。その表情には闘志が満ち溢れている。
近藤「今度こそあたしは……勝つ!」
一方の赤コーナーに立つは、オドオドとぎこちない様子だが、モデル並みの身長と後ろに束ねた長い紫の髪は女性として非常にいいものを持っている――伊達遥である。
近藤だって女子から見たらきっと身長は高いほうだし、男っぽい性格さえなければきっともっと男のファンだって出来るはずだ。しかし会場から響き渡る声援は……遥のほうが圧倒的に多い。
無口でクール、でも何だか間が抜けている。ファンからはそんな遥の姿が愛されているのだろう。
だが、近藤はそれだけが彼女の魅力だとは思っていない。その本当の理由は……。
近藤「秘めた強さ……」

――3年前、この新興団体にスカウトされてプロレスの道へと誘われた近藤。キックボクシングによって培われた打撃だけは誰にも負けないと自負していた。自分と同じような打撃が得意な他団体の同期、越後や真田、村上姉妹などの挑戦や殴りこみなどでそれなりの試合を披露した。そんな中、とてもとてもプロレスとは無縁と思える性格の子がいた。体格はいいとしても、闘志がない相手に負けるわけがない。もちろん近藤はその試合で勝利した。その試合後のロッカールームで彼女は泣いていた。
近藤はそんな泣いている彼女に声を掛けてやろうと思ったが……やめた。
なぜならスーツを着た男が入って彼女を励ましたからだった。
男「努力すればきっと勝てる! 君には素質が十分あるのだから」
後々、その男は彼女が所属する団体の社長であり、プロレスなんかに向かない性格の彼女を、無理やりこちらの世界に引き込んだ社長さんだったことを、近藤は知った。

リングアナウンスの後ゴングが鳴った。
先に動いたのは近藤だった。近藤が繰り出すエルボーは普通のエルボーより鋭さが違う。
近藤「そこだ!」
遥「……っ」
近藤「!!!」
遥が繰り出したのも同じくエルボー、先に仕掛けたのは近藤だ。しかしエルボーが顔面にヒットしたのも近藤。しかもそれだけではなく、続けざまに連続のエルボーが近藤を襲う。それと同時に会場から歓声が沸く。
近藤は間合いを取り体勢を立て直して遥の表情を窺う。そこにはゴングがなる前までのオドオドとした彼女の表情ではなく、本気で相手を叩きのめすというくらいの闘志が感じ取れた。そこには同情も手加減もない。今の彼女には「静かなる不死鳥」という言葉がしっくりきた。
近藤「これだ……あたしが倒そうとしている伊達遥は!」
再び近藤は遥の前に出た。得意の打撃ただ一つに力を振り絞って。

入団してから2年目。近藤は再びあの彼女がいる団体と試合をする機会が訪れる。
オドオドと小さく頭を下げて「……あの、よろしく……おねがい…します……」と、顔を赤くさせていた彼女は全然進歩が見られないように見えた……いや、一つ変わったことがあるとするなら、近藤の顔を真っ直ぐ見ている。憧れ、目標、とにかく何か期待している、そんな感じがした。
そして試合。近藤は何が起きたのかすぐに理解は出来なかった。なぜならことごとく自分の打撃技が凌がれる。決定打が与えられるまま、そのときが訪れる。近藤の一瞬の隙に、彼女の放つシャイニングウィザードが後頭部へと繰り出され、そのまま3カウントを取られてしまう。
その3秒間の間に近藤は全てを理解した、彼女――遥が成長したのだと……。

リング上ではさながら総合格闘技を行っているようだった。プロレスに関する投げ技、飛び技は登場することは殆どなく、ただひたすらにお互い打撃攻撃に拘り続ける。
近藤はまだしも、今の遥の実力ならば投げや力技を織り交ぜて近藤にフィニッシュを掛けることも可能だっただろう。しかし、どうしてか遥は打撃に拘る。観客たちもその行方を黙って見守る。
やがて、お互いの足元はフラフラとおぼつかなくなってきた。双方とも流血している……。
先に膝を崩したのは近藤のほうだった。
遥「……これで、終わりです…」
勝負時と見たか、遥はあのシャイニングウィザードを放とうと足を動かし始める。
それに応じて近藤も額からの汗と出血を拭うと、その腕で拳を固めた。こちらも必殺のバックブローで応戦するつもりだ。
近藤「さぁこおおおおおおぉい!!!」
その気合に合わせて、遥は駆け出す。タイミングを見計らった近藤のバックブローが、カウンターのごとく技を繰り出そうとする遥の腹部へと直撃し、遥はその場で崩れ落ちた。あとはそのまま覆い被さって3カウント取れば近藤の勝利。最後の力を振り絞ってフォールに向かうのだが……。
遥「……負け……られ…ません…………」
遥が顔を上げた、そのことに近藤は驚く。確かにバックブローは腹部に直撃。遥は今激痛でとてもとても動くことは出来ないはずだった。しかし遥の視線は決して近藤を見ているわけではなかった。
近藤もその視線の先に何があるのか気になって後ろを向く。そして、口元を緩ませる。
リングサイドには今にも泣きそうな表情の、あの遥の団体の社長が懸命に遥の声援を挙げていた。
その様子を見て近藤を支えていた最後の力が抜けていく………………。

近藤の気が付いたときには試合が終わっていた。いつの間にかリング頭上で輝く照明が見える位置にいた。そこにひょっこりと顔を出す遥は手を差し出した。
遥「……ありがとう……ござい……ました……」
そこにはまたあのオドオドとした遥がいた。そして近藤はため息をついてその手を掴む。
その瞬間、会場は両選手の声援がこだました。


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2008/05/29 18:00 | Comments(0) | 参加企画

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