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2024/04/19 04:22 |
イナエさんの投稿作品 その2「パートナー」
 『コレクターズ』軍団長イナエさんの投稿作品第2弾です。
 単独でも楽しめるように書かれているとのことですが、第1弾のライバルの続きになっていますので、先にライバルを読んで頂くことを推奨させていただきます。


2.パートナー

某新女が主催するEXタッグマッチがもうすぐ開催される季節となった。
近藤真琴が所属する団体もようやくそれに声を掛けられるくらいの実績を積み重ねてきた。
近藤「社長、あたしに用事とは?」
小さくボロボロな社長室、頼りない社長はあることを口にする。
社長「キミをEXタッグマッチに参戦させようと思うんだけど、どうかなぁ?」
通常の興行と違って、各団体からの猛者たちと試合が出来る絶好のチャンスでもある。無論それを断る理由は無い。近藤はすぐに「もちろんいいですよ!」と迷わず返答した。と、そこで問題になってくるのはタッグパートナーだ。まだまだ小さなこの団体、ある程度誰がパートナーになるかは想像できなくもない。そんな考えを巡らしていくと、ドアをノックする音と共に……。
秋山「秋山入ります」
屈託のない笑顔で入ってきた秋山美姫は、一応この団体でメインイベンターな存在だ。何でも社長が適当に新人スカウトに中国地方へぷらっといって、すぐに発見、即スカウトをしてしまったという逸話がある。ちなみに近藤はその社長が更に九州地方に南下してたまたま見つけたから、とスカウトされたらしい。
そんないい加減な社長のスカウト話はともかく、秋山の実力は見た目の可愛らしさとは裏腹に、相当なものだった。特にその天性の器用な手先から繰り出される関節技は一度決まったらなかなか抜け出すことは出来ない。関節技の類が苦手な近藤にとって、秋山との対戦は相性が悪かった。
社長は秋山にこれまでのいきさつを話し、近藤のほうを指差した。
社長「今回は秋山、近藤のタッグで参戦するぞ!」
やっぱり、と近藤は心の中で呟いた。すると秋山は元気よく頭を下げる。
秋山「よろしくお願いしますね、近藤さん」
近藤「あ、ああ、よろしく」

ジムへと移動した近藤と秋山。早速トレーニングウェアーに着替えてトレーニングを開始する一方、秋山はなぜかホウキとちりとりを持って隅々掃除を始めた。
近藤「……秋山」
秋山「はい、何でしょうか?」
近藤「どうして……今掃除をしているんだ?」
すると秋山はえっ? という表情をしながらも、普段どおりに答えた。
秋山「毎日こうして掃除するのは変でしょうか?」
近藤「毎日?」
秋山「はい、トレーニングを始める前にこうして綺麗にしているんです。トレーニング後はさすがにクタクタでやる気が起きませんから。たははは……」
近藤は知らなかった。ジムはいつもこうしてピカピカなものだと思っていたが、今思えば、こんな弱小団体なんかに、清掃業者を雇うお金なんてあるわけがない。ほかの所属選手も特に汚れたところを掃除するくらいは、気にすることはない。いや、こうやって秋山がこまめに掃除しているからこそ、近藤や所属選手は練習に打ち込めるわけだ……。そう思うと近藤の動きが鈍る。今まで気が付かなかったからといって、秋山ばかりに掃除を任せるわけにも行かない。トレーニングを切り上げ一人でホウキとちりとりを使いこなす秋山のところへ向かう。
近藤「あたしにも何か手伝えるかな……」
気恥ずかしそうに訊ねる近藤に対し、秋山は少し考えてニコッとちりとりを渡した。
秋山「それじゃあ、あそこの運動器具の辺りから始めていくからね」
近藤「ああ、任せろ」

数十分の清掃作業のおかげで、目に付く場所の埃やゴミはあらかた片付く。
秋山は掃除道具を片付けながら、再びトレーニングに戻った近藤にあることを口にする。
秋山「近藤さんは、実はやさしいんですね」
その言葉に一瞬近藤の足元がもたつく。
秋山「私、今まで近藤さんのこと、強くなるために一に特訓、二に特訓って、かなりストイックな生き方をしている人だと思っていました。でも……」
近藤「でも……?」
秋山「……いえ、私たちきっとパートナーとしてうまくやっていけますよ!」
根拠はない。ただ、自信たっぷりに口にする秋山に感化されたのか、近藤も恥ずかしそうに答える。
近藤「あ、あたしも、あんたとならうまくやってけるかも……」
お互い3年間顔を合わせてきて、初めて知った隠れた一面。そんな一面に触れることで、また少しだけ距離を縮めた二人だった。
近藤「ところで、さっき何か言いかけたけれど、あれは何だ?」
秋山「いやぁ、そんな大したことじゃないですよ」
近藤「パートナーだからこそ、隠し事なく教えてくれ」
秋山「え、えっと、本当に言っちゃっていいんですか?」
近藤「ああ、はっきりと言ってくれ」
秋山は少し困った表情を見せながらも、その言葉の続きを口にした。
秋山「でも、女性らしい一面もしっかり持ち合わせているなぁ――」
近藤「!!!!!!!」
近藤は顔を真っ赤にした。自分を女性と認識していない彼女にとって、女性らしさを指摘するのは厳禁だった。もちろんそんなことは百も承知の秋山はあえて黙っていたのに……。
結局その日の近藤は、終始トレーニングに身が入ることはなかった。

社長「ううっ、これは……」
一方の社長はEXタッグマッチの対戦表を見て首を大きく捻っていた。
第1日目の秋山と近藤の相手が……遥と南の強烈最強タッグだった。



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2008/05/30 18:00 | Comments(0) | 参加企画

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