ＮＥＷ　ＷＩＮＤ

ＮＥＷ　ＷＩＮＤ社長風間新　手記より。


※サバイバー１版のリプレイの設定を使用していますが、これはリプレイではありません。

「まだ参ったしませんか～？」
　普通のレスラーならとっくに技を解いている時間が経過しているが、みぎりは涼しい顔でカンパーナを極め続けている。
「さすがは、大空みぎり……あのパワーは女子プロレスラーの域を遥かに超えていますからな」
　実際に肌を合わせたことのある……いやこの表現は微妙か。ここは巨匠のサイトではないから、実際に対戦をしたことがあるが適正だろう。とにかく実戦で経験しているダンディさんの言葉だけに重みがある。
「だ、誰がこの程度でっ……ぐがあっ……」
「意地っ張りですねえ。そんな貴女にはとっておきをみせちゃいますよ～」
　みぎりはカンパーナを決めたままのっしのっしとコーナーポストへ歩いていく。
「”コーナー”へいきますよ～。本当の釣鐘ですっ！」
　ブザーが鳴るが、みぎりは気にするそぶりもみせずに、そのまま大きく前後へ岩城を揺らし、岩城の顔面をコーナーへとぶち込んでいく。
「ぶわっ……がっ！　ぶえっ！」
　カンパーナは和名を釣鐘固めというくらいだから、今みぎりが行っているのはコーナーを利用した釣鐘打ちというところか。
「このまま１０８回までやっちゃいましょうかあ？」
　……除夜の鐘か。
「ぶへっ！　ぎょわっ……」
　岩城の顔面が容赦なくコーナーへと打ちこまれる。
「彩菜ちゃん！」
　岩城を救出すべく、榎本がカットに入る。
「させるかよっ！」
　その無防備な背中へと椅子を投げ付け、動きをとめたライラは薄笑いを浮かべ榎本に近づいていく。
「ひゃっはっ！　チビすけはこっちで押さえておくぜ。おい、みぎり容赦なく食らわしてやれ！」
「は～い」
「ひゃっはっは！　じゃあこちらも行くかな……確かメキシコの技なら引っかからないんだろ？　いくぞ、”メキシカン”・”ストレッチ”」
　ライラは榎本に関節を仕掛けたが、いきなりブザーが二つ鳴ってしまった。
「なんだと？　どういうことだ？」
「確かにメキシコの技ですが、勘違いをしていますな。あくまでも先ほど引っかからなかったのは、技名がスペイン語だったからです。今貴女が使ったメキシカン・ストレッチは英語なんですよ」
　ダイビング・セントーンに続いてまた落とし穴に嵌ったか。同じようにキン肉マンがロビンマスクを破った技として有名なメキシカン・ローリング・クラッチホールドも英語である。
「くっそおおっ！」
「げほっ……げほっ……」
　腹いせとばかりに、ライラはチョーク気味に喉を絞める。
「こらっ！　反則だ。　ちょ……喉を絞めるな！」
　ミスターＤＥＮＳＯＵはチョークと言いかけて、言葉を改めた。
「ああん？　聞こえねえなあ？？　ちゃんと言ってくれねえと聞こえねえよ」
　ライラはニヤニヤと笑いながらＤＥＮＳＯＵを見る。
「く、くうっ……英語を言わせる気かよ……」
　レフェリングが止まるＤＥＮＳＯ。
「くくっ……どうしたよＤＥＮＳＯＵ。お前の正義なんて所詮はそんなもんなんだよ。たかが千円にびびりやがってよ」
「く、くうっ！」
　レフェリーとしての窮地に追い込まれたミスターＤＥＮＳＯＵ。さあ、どうでるか？？
「ライラ、反則だ！　離せ！」
「いやだね。ちゃんといつもどおりにいってみろよ？」
「このやろう……いくぞ～～～！　い～ち～！　にい～！」
　ビブラートの効いた美声でカウントを取り始めるＤＥＮＳＯＵ。右手を大きくあげて指でカウントを示している。
「だから離さないっつーの」
「さ～ん！　……ダアアアアアッ！！！」
　突然拳を突き上げるＤＥＮＳＯＵ。
「ダアアアアッ！」
　場内の観客も思わず拳を振り上げる。
　……いや、私も含め、ダンディさんも、リング上のライラもみぎりも思わず右拳を振り上げてしまっていた。
「今だっ！」
　この隙をついて岩城と榎本がエスケープに成功した。
「しまった！　ついうっかりやっちまったぜ！」
「あら？　あらら？」
　普段空気を読まないみぎりまでもがしっかりと乗ってしまった。
「これが我々の性ってもんなんだよ。ＨＡＨＡＨＡ！！」
　なるほど。プロレスに関係していればある意味反射的なものなのかもしれない。さすがは名物レフェリーのミスターＤＥＮＳＯＵだ。この切り返し方は想像がつかなかったな。

　みぎり＋１（５）、ライラ＋２（２０）