このお話はもう一度あの日のように~再会~後のNEW WINDを舞台にしています。
「いくよっ!」
綾さんが軽やかにコーナーに駆け上がり、ダイビングヒップアタックを繰り出した。
「おぶっ…」
顔面に柔らかなヒップがめり込みディアナは耐えられずに倒れ込んだ。
「フォール!!」
綾さんはそのまま体を浴びせ、フォールを奪う。
一度・二度…ギムレット美月レフェリーの右腕がマットを叩く。
「返せっ!」
私は思わず控え室のモニターに向かって叫んでいた。
「まだデス!!」
カウント3ギリギリでディアナは右肩を上げた。
「いいぞ新人!」
歓声があがる。
「うんもう。終わったはずだったのにい。」
綾さんはかなりぷりぷりしている。
「オラ綾、遊んでないで決めろ。」
セコンドの八島先輩が声を飛ばした。
「は~い。これで終わりだよ!」
綾さんはさっとロープへと走った。
「今デス。」
ディアナは最後のエネルギーを振り絞って綾さんを追う。
「はああああああっ!」
「えええっ?!」
綾さんがロープで反動をつけた瞬間、ディアナはその体をキャッチ。そのまま綺麗なフロントスープレックスで綾さんを投げ飛ばした。
ディアナはそのままヘッドスプリングで起き上がり、クルンと体をスピンさせてエルボードロップを綾先輩のボディへと落とす。
「フロントスープレックス&スピニングエルボードロップ!出たっ!」
ディアナが選んだオリジナリティは単独の技を昇華するのではなく二つの技を使ったコンボ技だ。
投げのセンスが高いディアナは、同じように飛び技への適正も高く、その二つの特徴を利用したスピーディかつ美しいコンボだと思う。
「ま、まけないもん!!」
でも綾さんはそれを返した。やっぱり一年もまれているのは違うなあ。
ディアナはもう最後の力を出し切ってしまっていた。最後は綾さんのボディスラムからの押さえ込みでフォール負け。デビュー戦を勝利で飾ることはできなかった。
「負けてしまいマシた。」
ディアナはぎゅっと唇をかみしめながら控え室に戻ってきた。
「おしかったよ。」
「いえ、紙一重だったかもしれませんが、その一重に大きな差を感じました。綾さんはサスガでした。」
綾さんはああみえても、一年のキャリアがある。
「ディアナ…」
「ダイジョウブです。落ち込んではいませんから。むしろ嬉しいんデス。」
「嬉しい?」
「これでプロにナレタのがうれしいデス。」
確かにそうだよね。
「おめでとうディアナ。」
「ありがとうございますアヤナさん。アヤナさんも頑張ってください。」