NEW WIND社長 風間 新 手記より。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
11月シリーズも終わり、師走を迎えようとしているある日その事件は起こった。
「なにい!南が男と密会だと!?」
「は、はい。」
目撃したのは、買出しに出ていた吉田。
彼女から報告を受け私は思わず腰を浮かした。
「ど、どんな男だ?」
「えっと、社長よりちょっと年上な感じでしたが。」
「・・・私より上か。」
「恋愛対象って感じではないと思いますけど・・・」
と吉田がそっけなく言う。
おいおい私も除外かい?
まあ、まだ吉田は18だしなあ・・・
「まさか援助・・・」
と井上さんが言いかけて口を手で押さえる。
「馬鹿な。給料はちゃんと払っているんだぞ。それも同年齢女性よりも遥かに高額だ。そんな必要はないだろう。」
ちょっとムキになる私。
「で、でも年上のテクニ・・・」
井上さんはとんでもない発言をしてくる。
「あのなあ・・・それは君の願望ではないのか?」
「いえ、そんな事はありません。可能性として申しただけです。」
「あの・・・社長?」
吉田は話についていけないようだ。
大人びて見えてもまだまだ普通なら学校へ通っているくらいの年だからな。
「ああ、すまない。で、どっちの方へ行った?」
「高級なホテルの方へ行きました。レストランがどうとか・・・という男の声が聞こえたので、“まずは”食事だと思います。」
吉田はケロリという。
「“まずは”・・・ってお前なあ、今の発言は問題あるぞ。」
「どこが問題なのでしょうか?」
吉田は顔色一つ変えない。
「・・・わからないならいい。・・・ともかく現場へ行ってみるか石岡君。」
「石岡君って社長は御手洗潔(みたらい・きよし)※か!」
井上さんの絶妙の突っ込み。
「・・・今のは一体??」
吉田にはわからないらしかった。
※島田荘司氏の著作 御手洗シリーズに出てくる名探偵が御手洗潔、そのパートナーで振りまわされるのが石岡君です。
さて、ホテルについた我々は、レストランをチェックしてみた。
「あ、あの・・・何故私はここにいるのでしょうか?」
吉田が不満げに言う。
「それは犯人の顔を見た目撃者だからだよ。な、御手洗。」
「おや石岡君もいうようになったねえ。そういうことだよ吉田くん。」
すっかり探偵気取りの私と井上さん。
「は、はあ・・・」
一人乗れない吉田。
「社長・・・あの男ですよ。」
レストランの窓際の席に座っている男を指差す吉田。今は南の姿はない。
「手洗いにでも行っているんでしょうか。」
「その可能性は高いね石岡君。なにしろ南のコートがおいてあるからね。」
「御手洗、私あの男をどこかで見たことがあるような気がするのですけど。」
私は男をじっと見た。
「・・・あいつはワールド女子の社長だな。」
「引き抜きですかね?」
「それしかないだろう。だけど今更引き抜いてどうするつもりなんだろう?」
「でも御手洗、南選手の実力があればワールドならトップ張れますよ。今のワールドはフリーだったライラ神威がトップに収まっている弱小団体ですからね。」
「ふむ。それもそうだね石岡君。」
などと話していると南が戻ってきた。
「南さん、どうですか考えていただけましたか?」
「考えるまでもない事です。私はNEW WINDで現役を終えますから。もちろん妹は妹の考えがあるでしょうけど、きっと妹も同じ事を言うと思いますよ。」
「まだ出来ますよ、南さん。うちでならエースとして・・・」
「いえ、ワールドさんには悪いですけど、ワールドさんでトップを張っても意味はないわ。
団体としてあまりにも脆弱すぎるし、何より団体を大きくしようという気持ちが感じられないもの。」
「そんな事はありませんよ、南さん。」
ワールドの社長は反論しようとするが、南はそれをさえぎるように言葉を続ける。
「もし貴方がワールドを大きくする気持ちがあるなら、ライラや私のような選手を集めるより、きちんと若手を育てた方がいいと思うの。
NEW WINDが引き抜きをしないで1から選手を育てたように・・・ファンは成長する選手達を応援するものよ。新人のころから知っている選手に思い入れをするのだから。私や妹が移籍したところで古くからのファンは納得しないでしょうし、もしかすると離れてしまうかもしれない。
私たちのファンの何%かはついてきてくれるかもしれないけど、ワールドさんは大事な古いファンを失ってしまう。それでは団体としての成功はないわ。」
ワールドの社長はもはや何も言えなくなってしまったようだ。
”ルッルルルル”とここでワールドの社長の携帯が鳴った。
「妹さんからのようだ。」
といって彼は電話にでる。
そしてがっかりした顔で電話を切った。
きっとハイブリットにも断られたのだろう。
「妹さんも、結論は同じだったよ、南さん。」
「そのようね。」
「南姉妹が移籍してくれれば人気も高まると思ったのだがなあ。」
「それは無理ですねワールドさん。」
私は二人に近づいていき、声をかけた。
「しゃ、社長!」
「か、風間さん!」
二人はびっくりしていた。
「私の、いえ私達のNEW WINDには移籍する選手なんていませんよ。 選手同士の信頼感、選手とスタッフとの絆・・・どれも素晴らしいものです。
それに、うちは一番レベルの高い団体、野球でいえば“メジャーリーグ”です。失礼ですがワールドさんはせいぜい社会人リーグレベルでしょう。 ウチに移籍したい選手はそちらにはいるかもしれませんが、うちにはいません。
うちとワールドさんとは同じ土俵からのスタート、むしろ資金力ではそちらが上でしたがね。ウチがここまでやれたんですから、ワールドさんもまだまだやれるはずです。自力で大きな団体にしてくださいよ、その時対抗戦やれば盛り上がりますよ!」
「風間さんは、よくそう話題づくりを思いつきますな。私にもそれがあれば・・・そして南さんのようなエースが居てくれれば。」
ため息混じりにワールドの社長は言う。
「ライラ神威を負かすだけのベビーのエースが育てば面白いでしょうね。最初はライラにボコボコにされたっていい。ひた向きに悪のライラに向かっていく、その姿に共感してくれるファンが増えれば話題はつくれますから。」
ライバル団体にアドバイスをする私もどうかと思うが、それを頷きながら聴く社長もどうかと思う。
でもライバル団体に元気がないのは困る。
NEW WINDに一極化してしまうのは業界としてはよくないことだから。
ワールドさんももっと上に来て欲しいものだと思う。
人気で見てもワールドさんの本拠地大阪ですら、新女>NEW WIND>>>>ワールドだ。
全国的にはNEW WIND>>新女>>>>ワールドとなっているくらいでまったくの弱小。
実際問題として私の中ではワールドなど眼中にないのだが、リップサービスをしておいた。
もちろん成長してくれた方がいいのは確かだけど、あまり成長されてもやっかいだし。
まだ全ての面でナンバー1になったわけではないのだから、我々も気を引き締めていかないとなあ。
特に関東近郊と大阪・兵庫・京都。さらに北陸で2県に秋田、宮城、西北海道と新女の方がアンケート人気の高い県がある。
ここに攻め込んで、全ての県にNEW WINDの旗を立ててやる。
天下統一へ向けて、“風間の野望 ~全国版~” ってところか。
九州編はとっくに昔に攻略したしね。
しばらくはツアー日程をこの辺りに絞っていくかな。
それで追いつければ、最後は逆転するだけだ。
どう逆転するかだが、実はすでに種は蒔いてある。
「社長、わざわざありがとう。私は本当に・・・好きだから。」
「私も姉と同様にここが好きですから。だから私は移籍なんてしませんよ。」
南姉妹は嬉しい事を言ってくれた。
「さ、事件は解決したね、石岡君。皆でコーヒーでも飲みに行こうか。」
「いつまで御手洗やってんですか。まったく。でも、いいですね、いきましょうか、御手洗。」
私と石岡くんは南姉妹とともにコーヒーショップへと向かうのだった。
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