NEW WIND社長 風間 新 手記より。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
◇8年目10月◇
この頃になると南の動きがさらに悪くなった。
パワーの衰えは以前からあったけど、受身のタイミングの遅れ、そして関節のキレが落ちるなど衰えは顕著だ。
以前なら負けるはずのなかったマッキーと氷室に敗退するシーンも目立つようになってきている。
もっともそのマッキーと氷室も全盛期は過ぎていて、かつての輝きは失せてきていたのだが。
もうはっきりとわかる。
”南が現役でいられるのもあとわずか”・・・だ。
私は南の最後の舞台の準備に取り掛かる事にした。
それがいつ来るかはわからないけれど・・・そう遠い日ではないだろうから。
衰えを見せる1期生に代わり、このところは永沢と吉田がメインに登場することが多くなってきている。
「あーっと!ここで吉田が武藤を肩の上に持ち上げた!でるか、必殺のプラズマサンダースライド!でたあ~~炸裂だああ!!」
大日本TVのアナウンサーが声を張り上げる。
「いい角度で決まりましたね!これは武藤選手厳しいかもしれませんよ!」
解説のダンディさんもやや興奮気味だ。
レフェリーのトニー館が横に首を振ってから右手を振り下ろす。
これはトニー館の癖で“ああ返せないな”と思った時にする仕草だ。
吉田にエビに固められた武藤はそのまま静かに3カウントを聞いた。
この瞬間会場からは大歓声、拍手、そして悲鳴があがる。
「やりました!吉田!ついに武藤を破りました~!!」
吉田龍子、現EWA認定ヘビー級シングル王者武藤めぐみを撃破。
「只今の試合は12分41秒 プラズマサンダースライドからのエビ固めで勝者、吉田龍子!!」
仲間リングアナのアナウンスが入ると、もう一度拍手と歓声が。
先月の永沢に続き、5期生の吉田も武藤超えを果たす。
「よっしゃあ!!」
吉田の咆哮を背に結城に担がれて退場していく武藤の姿があった。
バキャン!!
武藤の控え室でなんだか物音がする。
いつでも自信満々な武藤だったが、さすがに後輩相手に連敗となるとそうとう堪えたらしい。
「けっ!あいつらしくないなあ。」
「マッキーか。」
「ああ、ちょっといってくらあ。社長も一応ついてこいよ、これ持ってな。」
マッキーは私に箱を投げてきた。救護箱らしい。
「あ、ああ。」
マッキーは私を引っ張るようにして武藤のところへ入っていく。
「邪魔すんぞ!」
マッキーは返答も待たずにドアを蹴り空け、中に踊りこんだ。
(って普通に入れよ。”ディープダンジョンか!”って・・・古)
「な・・・勝手に入ってこないでよ。」
武藤はびっくりしている。
「フン、カギは開いてたぜ。それにお前に命令される覚えはない。」
「だ、だからといって勝手に・・・」
マッキーは武藤に構わず室内を確認する。
「ああ、お前ロッカーに当たったな? ベッコリいってるじゃねえか。」
マッキーは仕方ないなあという感じで武藤を見る。
私はマッキーが言ったロッカーを見たが、ひどい状態だった。
これは弁償だな・・・
「お前、足怪我しただろ。」
マッキーは有無を言わせず武藤の右足を掴む。
「いった・・・!」
「馬鹿だなあ。いくら鍛えているからって限度はあるだろうが。」
「ば、馬鹿に馬鹿って言われたくありません。」
武藤はいつもの武藤に戻りつつあるようだ。
「確かにお前の方が頭はいいかもしれないけどよ、アタシはロッカーとは試合しないぜ。」
マッキーは私から救護箱を引っ手繰ると、武藤の右足を治療し始める。
「ちょっと染みるけど我慢しろよ。」
マッキーは”わざと”消毒液を大量に塗りつける。
「いたたったたたた!ちょっとマッキー先輩量多すぎです。」
「あっはっは。わりいわりい。」
「もう・・・」
普段いがみあっているようだが、こうしてみるといい先輩・後輩に見えるな。
「ほらよ終わったぜ。」
「・・・ありがとうございます。」
武藤は小声で言う。
「あーん?何かいったかあ?武藤、もっとはっきり言ってくれないかなあ?」
マッキーはニヤニヤ笑う。
「・・・」
沈黙する武藤。
「先輩命令!」
マッキーは大声で言う。
「は、はい!治療ありがとうございました、マッキー先輩!」
これって条件反射だよな。
いくら先輩後輩の仲が”ボーダーレス”なうちの団体とは言え、先輩命令は絶対だ。
最初から生意気だったけど武藤だって入団したての頃にはマッキーの指導は大人しく聞いていたわけだし。
(そりゃ、ぶつぶつ文句は言ってたけどね。)。
実力優先主義のうちの団体ではほんの短い間だったけど。
「それでいいんだぜ武藤。ところでさ、何でお前物に当たるわけ?」
「・・・」
「後輩に負けて悔しいからか?」
マッキーは優しく尋ねる。
「は、はい。」
「そうか・・・」
マッキーは一呼吸置いて大きく息を吸い込んだ。
私は何かを察知し、耳をふさぐ。
「バッカヤロー!!!!」 バシイ!!
マッキーの絶叫と、武藤の顔が張られた音が同時に聞こえたような気がした。
ガシャン!
マッキーが手加減しなかったし、武藤も油断していたんだろう。
武藤は壁まで吹き飛ばされてしまっていた。
「いったああ・・・」
「め、めぐみ!!」
控え室の外から見ていた結城が駆け寄ろうとしたが、南と伊達に手で押しとどめられる。
「今は・・・ダメ」
「大人しくしていなさい。」
伊達と南に言われては結城も進む事はできない。
「めぐみ・・・」
結城は心配そうに武藤を見つめていた。
「マッキー先輩、痛いじゃないですか。」
武藤は左頬をおさえながら抗議する。
「目、覚めたか?」
マッキーは真面目な顔だ。
「お前アタシによく言ってたよな。“文句つけるヒマがあるなら・・・練習した方がいいと思いますけどね”ってな。だから今アタシが言えるのは、“物に当たるヒマあるなら練習しろよ!”って事だ。」
後輩に負けたマッキーに武藤がキツイ言葉を浴びせていたのは周知の事実。
これは武藤なりのエールの送り方だったのだけどね。
それを知らないと只の生意気娘で終わってしまうけど。
「・・・そうですよね。」
「大体1回や2回後輩に負けたからなんだってんだ?アタシなんか何回負けたか覚えてないよ。」
「それはマッキー先輩が弱いからじゃ・・・」
マッキーはニヤリと笑うと武藤の頭を右手でくしゃくしゃと撫で回す。
「はっ、それが言えれば大丈夫だな。アタシみたいになる前にもう少し努力するんだね。武藤は天才肌だから挫折に弱そうだからね。・・・結城に追いつきたい、後輩に借りを返したい!って思ってんなら、練習するんだな。まだまだ伸びるよ武藤は。」
「マッキー先輩・・・」
「邪魔したな。」
マッキーはくるりと背中を向けると私の腕を引っ張って控え室から出て行く。
「マッキー先輩、ありがとうございました。」
私の目の端に素直に頭を下げる武藤の姿が見えた。
「おう、頑張れよ!アタシもまだまだ頑張るけどな。」
マッキーの後輩へのエール。
経験しているからこそわかる気持ち。
それは控え室の外にいた南も伊達もわかっている気持ちだろう。
常に先輩達を突き上げ続けた武藤が初めて味わう後輩の突き上げ。
結城もそうだけど、後輩に負けた経験は彼女達をもう一回り大きくすると思う。
このマッキーの励ましがきいたか、最終戦で組まれたEWA王座戦では武藤が永沢を下して初防衛に成功した。
○武藤(20分14秒 フライングニールキック→片エビ固め)永沢×
3期生VS4・5期生の争いはまだまだ始まったばかり。
かつての1期生VS2期生、1期生VS3期生のように競い合って上を目指して欲しいと思う。
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この頃になると南の動きがさらに悪くなった。
パワーの衰えは以前からあったけど、受身のタイミングの遅れ、そして関節のキレが落ちるなど衰えは顕著だ。
以前なら負けるはずのなかったマッキーと氷室に敗退するシーンも目立つようになってきている。
もっともそのマッキーと氷室も全盛期は過ぎていて、かつての輝きは失せてきていたのだが。
もうはっきりとわかる。
”南が現役でいられるのもあとわずか”・・・だ。
私は南の最後の舞台の準備に取り掛かる事にした。
それがいつ来るかはわからないけれど・・・そう遠い日ではないだろうから。
衰えを見せる1期生に代わり、このところは永沢と吉田がメインに登場することが多くなってきている。
「あーっと!ここで吉田が武藤を肩の上に持ち上げた!でるか、必殺のプラズマサンダースライド!でたあ~~炸裂だああ!!」
大日本TVのアナウンサーが声を張り上げる。
「いい角度で決まりましたね!これは武藤選手厳しいかもしれませんよ!」
解説のダンディさんもやや興奮気味だ。
レフェリーのトニー館が横に首を振ってから右手を振り下ろす。
これはトニー館の癖で“ああ返せないな”と思った時にする仕草だ。
吉田にエビに固められた武藤はそのまま静かに3カウントを聞いた。
この瞬間会場からは大歓声、拍手、そして悲鳴があがる。
「やりました!吉田!ついに武藤を破りました~!!」
吉田龍子、現EWA認定ヘビー級シングル王者武藤めぐみを撃破。
「只今の試合は12分41秒 プラズマサンダースライドからのエビ固めで勝者、吉田龍子!!」
仲間リングアナのアナウンスが入ると、もう一度拍手と歓声が。
先月の永沢に続き、5期生の吉田も武藤超えを果たす。
「よっしゃあ!!」
吉田の咆哮を背に結城に担がれて退場していく武藤の姿があった。
バキャン!!
武藤の控え室でなんだか物音がする。
いつでも自信満々な武藤だったが、さすがに後輩相手に連敗となるとそうとう堪えたらしい。
「けっ!あいつらしくないなあ。」
「マッキーか。」
「ああ、ちょっといってくらあ。社長も一応ついてこいよ、これ持ってな。」
マッキーは私に箱を投げてきた。救護箱らしい。
「あ、ああ。」
マッキーは私を引っ張るようにして武藤のところへ入っていく。
「邪魔すんぞ!」
マッキーは返答も待たずにドアを蹴り空け、中に踊りこんだ。
(って普通に入れよ。”ディープダンジョンか!”って・・・古)
「な・・・勝手に入ってこないでよ。」
武藤はびっくりしている。
「フン、カギは開いてたぜ。それにお前に命令される覚えはない。」
「だ、だからといって勝手に・・・」
マッキーは武藤に構わず室内を確認する。
「ああ、お前ロッカーに当たったな? ベッコリいってるじゃねえか。」
マッキーは仕方ないなあという感じで武藤を見る。
私はマッキーが言ったロッカーを見たが、ひどい状態だった。
これは弁償だな・・・
「お前、足怪我しただろ。」
マッキーは有無を言わせず武藤の右足を掴む。
「いった・・・!」
「馬鹿だなあ。いくら鍛えているからって限度はあるだろうが。」
「ば、馬鹿に馬鹿って言われたくありません。」
武藤はいつもの武藤に戻りつつあるようだ。
「確かにお前の方が頭はいいかもしれないけどよ、アタシはロッカーとは試合しないぜ。」
マッキーは私から救護箱を引っ手繰ると、武藤の右足を治療し始める。
「ちょっと染みるけど我慢しろよ。」
マッキーは”わざと”消毒液を大量に塗りつける。
「いたたったたたた!ちょっとマッキー先輩量多すぎです。」
「あっはっは。わりいわりい。」
「もう・・・」
普段いがみあっているようだが、こうしてみるといい先輩・後輩に見えるな。
「ほらよ終わったぜ。」
「・・・ありがとうございます。」
武藤は小声で言う。
「あーん?何かいったかあ?武藤、もっとはっきり言ってくれないかなあ?」
マッキーはニヤニヤ笑う。
「・・・」
沈黙する武藤。
「先輩命令!」
マッキーは大声で言う。
「は、はい!治療ありがとうございました、マッキー先輩!」
これって条件反射だよな。
いくら先輩後輩の仲が”ボーダーレス”なうちの団体とは言え、先輩命令は絶対だ。
最初から生意気だったけど武藤だって入団したての頃にはマッキーの指導は大人しく聞いていたわけだし。
(そりゃ、ぶつぶつ文句は言ってたけどね。)。
実力優先主義のうちの団体ではほんの短い間だったけど。
「それでいいんだぜ武藤。ところでさ、何でお前物に当たるわけ?」
「・・・」
「後輩に負けて悔しいからか?」
マッキーは優しく尋ねる。
「は、はい。」
「そうか・・・」
マッキーは一呼吸置いて大きく息を吸い込んだ。
私は何かを察知し、耳をふさぐ。
「バッカヤロー!!!!」 バシイ!!
マッキーの絶叫と、武藤の顔が張られた音が同時に聞こえたような気がした。
ガシャン!
マッキーが手加減しなかったし、武藤も油断していたんだろう。
武藤は壁まで吹き飛ばされてしまっていた。
「いったああ・・・」
「め、めぐみ!!」
控え室の外から見ていた結城が駆け寄ろうとしたが、南と伊達に手で押しとどめられる。
「今は・・・ダメ」
「大人しくしていなさい。」
伊達と南に言われては結城も進む事はできない。
「めぐみ・・・」
結城は心配そうに武藤を見つめていた。
「マッキー先輩、痛いじゃないですか。」
武藤は左頬をおさえながら抗議する。
「目、覚めたか?」
マッキーは真面目な顔だ。
「お前アタシによく言ってたよな。“文句つけるヒマがあるなら・・・練習した方がいいと思いますけどね”ってな。だから今アタシが言えるのは、“物に当たるヒマあるなら練習しろよ!”って事だ。」
後輩に負けたマッキーに武藤がキツイ言葉を浴びせていたのは周知の事実。
これは武藤なりのエールの送り方だったのだけどね。
それを知らないと只の生意気娘で終わってしまうけど。
「・・・そうですよね。」
「大体1回や2回後輩に負けたからなんだってんだ?アタシなんか何回負けたか覚えてないよ。」
「それはマッキー先輩が弱いからじゃ・・・」
マッキーはニヤリと笑うと武藤の頭を右手でくしゃくしゃと撫で回す。
「はっ、それが言えれば大丈夫だな。アタシみたいになる前にもう少し努力するんだね。武藤は天才肌だから挫折に弱そうだからね。・・・結城に追いつきたい、後輩に借りを返したい!って思ってんなら、練習するんだな。まだまだ伸びるよ武藤は。」
「マッキー先輩・・・」
「邪魔したな。」
マッキーはくるりと背中を向けると私の腕を引っ張って控え室から出て行く。
「マッキー先輩、ありがとうございました。」
私の目の端に素直に頭を下げる武藤の姿が見えた。
「おう、頑張れよ!アタシもまだまだ頑張るけどな。」
マッキーの後輩へのエール。
経験しているからこそわかる気持ち。
それは控え室の外にいた南も伊達もわかっている気持ちだろう。
常に先輩達を突き上げ続けた武藤が初めて味わう後輩の突き上げ。
結城もそうだけど、後輩に負けた経験は彼女達をもう一回り大きくすると思う。
このマッキーの励ましがきいたか、最終戦で組まれたEWA王座戦では武藤が永沢を下して初防衛に成功した。
○武藤(20分14秒 フライングニールキック→片エビ固め)永沢×
3期生VS4・5期生の争いはまだまだ始まったばかり。
かつての1期生VS2期生、1期生VS3期生のように競い合って上を目指して欲しいと思う。
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