NEW WIND社長 風間 新 手記より。
「なんだって~!本当かそれ!!」
私の素っ頓狂な大声が社長室に響きわたる。
「は、はい。 間違いありません。」
秘書の井上さんが耳を押さえながら応える。
「今年の女子プロレス大賞のMVPは”カンナ神威”選手だと連絡がありました。 間違いありません。」
「カンナがMVPね・・・さすがに意外だわ。」
「カンナ・・・頑張ってたから・・・」
「冷静ね、遥。 私はてっきり3年連続で遥だと思っていたけど。」
「まったくだ。 さすがに私もびっくりした。 そんなに活躍してたかな・・・?」
色々と考えてみてるのだが、シングルで実績を残したというほどの記憶はない。
だが・・・タッグでは活躍していたのは確かだけど・・・
「最近、関係者およびファンの間ではカンナが最強という評価が高まっていました。 シングルでは確かに実績がありませんが。」
「うーん・・・意外だ。」
あとで確認したところマスコミ関係者&ファンの有志が作る女子プロレスレーティングでは1位カンナ神威=1480 2位伊達遥=1400 とされている。
一般に1000以上がヘビー級挑戦資格選手と判断されているらしいが。
「他には最優秀新人賞に吉田龍子、最優秀外人がローズ、べストバウトは伊達遥Vカンナ神威のEWAヘビー級選手権試合。 ベストタッグバウトはカンナ&結城VSみこと&カオスです。 タイトル戦・リーグ戦・トーナメント戦以外の試合が選ばれるのは異例ですね。」
「確かにな。 たまには目先を変えてみようとミックスした試合だったんだが、確かにいい試合だったし、ファンの評判もよかったんだけど・・・」
どうも納得いかない。
「しょうがないわよ社長。 ああいう賞ってのは結局インパクトなんだから。 もっと内容のいい試合があったとしても、インパクトのあるカードの方が上になってしまいがちだから。」
という女子プロレス大賞の結果を踏まえ、年明け1発目のシリーズの目玉カードは二つ。
一つはWWCAタッグ選手権試合。
カンナ&永沢が返上後、ダイナマイト・リン&ジュディ・コーディが保持している王座に伊達&永沢の
永沢としては2度目のタッグ王座戴冠のチャンスとなる。
もう一つは女王伊達遥が保持するEWA認定世界ヘビー級選手権試合。
女王伊達はすでに5度の防衛に成功している最強王者。
これに挑むのは女子プロレス大賞受賞のカンナ神威。
”カンナ最強説を背負い、女王に挑む。”
このシリーズのカンナは凄かった。
成長著しい武藤めぐみを二日続けてクロスフェイスカンナで潰し、武藤のパートナーの結城も二日続けてクロスフェイス葬。
さらに前哨戦のタッグ対決で伊達をもクロスフェイス葬。
武藤とのシングル戦もクロスフェイスで制し、手がつけられない状況。
挑戦を受ける女王 伊達遥は、前哨戦こそ落したものの、シリーズは好調をキープ。
第7戦で組まれたWWCAタッグ戦では、永沢との合体技”師弟愛ボム”で16分46秒 コーディを沈めタッグ王座獲得に成功している。
「遥さん・・・やったあ!! だけど・・・次は」
「わかっている。 負けられない!」
☆EWA認定世界ヘビー級選手権試合☆
「つええ・・・」
「まじかよ・・・」
客席からため息交じりの声が聞こえてくる。
試合は24分を経過したのだが、完全なカンナペース。
伊達はリズムがつかめないままダメージが蓄積してしまっている。
「遥さーん! 攻めて攻めて!!」
セコンドの永沢の声は、”声よ枯れろ!”といわんばかりの大音量だ。
「くっ!」
伊達はフェニックスニーで反撃、倒れかけたカンナをシャイニングフェニックスで追撃する。
だが焦りのせいか当たりが弱い。
伊達に表情には余裕はなく、いつもの圧倒的な強さを誇る女王の表情ではなくなっていた。
「!!」
カンナは伊達の焦りを感じ取ったのだろう。
攻撃に来る伊達からテイクダウンをとると、クロスフェイスに捕らえる。
「・・・!!?」
もがく伊達だが、完全極められている上に場所が悪い。
「遥さーん!!」
「伊達!!」
永沢と南が懸命にエプロンマットを叩く。
だが・・・その思いは届かなかった。
「伊達ええ!!」
カンナ渾身の最後の一絞りで・・・伊達の心が折れた。
レフェリーの要請でゴングが鳴らされる。
場内からは大歓声。
伊達遥・・・完敗! ・・・そしてカンナ神威が新女王の座を手に入れた。
NEW WINDに新風が吹き始めた。
それは・・・この後に起こる嵐の前触れの風なのか?
伊達の時代の終焉?
カンナ時代の到来?
それとも・・・
この5年目1月を境にNEW WINDは助走の第1章を終え、飛翔の第2章に突入する。
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本編は大きく動き出した様子ですね~
楽しみです♪