NEW WIND社長 風間 新 手記より。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
※この手記は基本的にリプレイですが、風間 新 社長視点で書かれており、創作要素を多分に含んでいます。
ここでの各登場人物の設定は公式なものでなく、管理人N独自のものです。
それをご了承の上、つづきへとお進みくださいませ。
NEW WIND8年目2月興行 第7戦高知総合体育館大会
本日のメインイベントは南利美VSハイブリット南。
これが南最後のメインイベント出場。
地元高知を舞台に最後の姉妹対決となる。
シングルで当たるのはかなり久しぶり。
正直な事を言ってしまうとこのカードは“禁断のカード”でした。
ハイブリットの成長と、南の衰え。
この二つの要素を考えると、組めなかった。
常々“妹に負けるようなら引退する”という言葉を口にしていた南だから・・・
だから・・・このカードはできることなら実現させたくなかった。
禁断のカードとなったこのカードが組まれるという事は、南が引退してしまうという事だから・・・
そして対決の時を逃しているうちに南はさらに妹ハイブリットよりもさらに後輩のフェニに敗れ引退を決意してしまったのです・・・
このカードは組みたくなかった・・・でもこれは南の希望。
最後の輝きを妹相手に見せることができるのか。
姉としてではなく、一人のレスラーとして引き際になにを残してくれるのか・・・
私はそれを見届けたい。
もっと大きな会場でやることもできたけど、南の最後のメインイベント出場は地元高知。
収容人数4500人の会場は超満員札止め。
南よ・・・思い残す事なくハイブリットに全てを伝えてくれ・・・
「青コーナー 高知県出身132パウンドー! ハイブリット~南!!」
ハイブリットはアピールすることもなくじっと南を見つめていた。
「赤コーナー 高知県出身132パウンドー! 南~とし~み~~!」
南カラーの紙テープがリングを埋め尽くす。
南はどんな思いでこの高知のリングに立ったのだろう・・・
それは南にしかわからない。
南は四方に丁寧にお辞儀をする。
“今までありがとう”
そんな気持ちが込められているように感じた。
試合はロックアップから始まり、南姉妹らしい関節の攻防へと移行していく。
すでに関節技の技量でも南を上回ったハイブリットがペースを握るが、今日は観客は全て南の味方だった。
南が劣勢に陥ると、大“利美コール”。
いつもなら地元の声援を受けるハイブリットにブーイングまで飛ぶほどだった。
この大声援を背に南は奮戦。
隠しフィニッシュホールドであるジャーマンスープレックスでハイブリットをカウント2.9まで追い詰める。
ハイブリットはとどめを狙う南が組み付いてくるところでカウンターの裏拳。
これをまともに貰ってしまった南はヒザから崩れ落ちた。
場内からは悲鳴があがる。
だけど、南はこれをカウント2.9で返すと、“まさか”という顔をしているハイブリットを強引に倒し、グランドに持ち込む。
必殺のネオ・サザンクロスロックが炸裂。
「まだできるだろ!」、「まだやれるだろ!」と思わせる。
だが、これが南の高知でみせた最後の技。
これを耐え切ったハイブリットは涙を浮かべての裏拳で南をマットに沈めた。
×南利美(13分10秒 裏拳→体固め)ハイブリット南○
「ありがとう高知のみんな。ありがとう・・・ありがとう・・・」
南最後の高知大会は・・・こうして終わった。
リングを去る南に暖かい拍手が送られ、南はその声援に応え、深々とお辞儀をして控え室へと下がっていった。
「あと一試合・・・か。」
私は溜息をつく。
「ええ。あと一試合ね。さすがに体は悲鳴を上げてるわ。この間の新日本ドームのカオスとメガライトはさすがに堪えたわよ。」
南は湿布薬の匂いをプンプンさせている。
私はちょっと鼻を押さえながら・・・
「・・・なんだかおばあちゃんみたいな匂いだな・・・」
と言ってみた。
「ちょっと人が一生懸命にやっているのにひどい言い草ね。私だって好きで湿布臭いわけじゃないのよ。」
「ふふ。完璧じゃないな。」
「うるさいわね。もう完璧じゃないわよ。だから引退するんじゃない。」
南はムキになる。
「ふふ、そういうとこは変わらないな8年間。」
「・・・ま、まあね。でもそれをいうなら社長も同じよ。性格は何一つ変わってないわ。いえ、ちょっと性格悪くなったんじゃないの?」
南の口も結構悪くなったと思うけどね。
「そうかもね。初めの頃はもっとおとなしかったけど、結構ヒールやらされたからね。」
「あのグラサン姿は似合わなかったわね。Ex-sの頃だったわよね。懐かしいわ。」
「あの時は似合うっていってくれたのにね。」
「・・・そうだったかしら? 完璧じゃないわねって言った記憶しかないけど・・・」
南とこうやって話すのも今日が最後か。
なんだか寂しくなるな。
南の引退試合は明日。
九州ドーム大会のチケットは売れ行き好調と聞いている。
あとは当日券がどれくらい伸びるか・・・だね。
「ねえ社長。私はどんなレスラーだった?」
「・・・完璧じゃなかったわね。」
私は南の口真似をする。
「もう!茶化さないで真面目に答えて頂戴。」
「悪い悪い。そうだな・・・いいレスラーだったと思うよ。常に高みを目指すその姿は後輩にも、そして観客にも共感を与え、応援したくなる・・・そんな選手だった。
強さも、もろさもあわせもった、とても感情移入しやすいヒロイン型のレスラー。決して最強ではなかったけど、でも伊達とともにNEW WINDの大事な宝だった。 正直いなくなるのは惜しいね。南さえよければまだ・・・」
南は右手を上げてそれをさえぎる。
「社長、プロレスラーにとって引退は引退ではないって言いたいんだろうけど、ここまでのツアーをしてもらっているし、私に悔いはないわ。だから復帰や引退撤回はないわね。過去にはドーム大会で引退を表明して即復帰した人(※1)や、解散を宣言してそれを撤回した団体(※2)もあったみたいだけど、そんな事は私はしないわ。」
そういうと思ったよ。
「南、明日は悔いを残さないように思いっきり暴れてこいよ。」
「社長こそ、緊張しすぎて倒れないでよ。」
南は笑う。
そう私は明日はリング・アナをやることになっているのだ。
仲間リングアナには悪い事をしたかもしれないけど、最後のコールはどうしてもしてあげたくて・・・以前仲間リングアナの代打でちょっとだけやった事はあったけど、これが実質リングアナ風間のデビュー戦・・・
心よく譲ってくれた仲間リングアナのためにも、きちんと仕事をしないといけない。
「南・・・お疲れ様。」
「社長、まだ早いわ。明日の南利美現役最後の姿をきちんと見届けてね。」
南の引退はとうとう明日・・・九州ドーム大会。
南の最後の輝きを多くの人に・・・見届けて欲しい。
南利美ファイナルマッチはライバル伊達遥とのシングル。
南利美が南利美であるために、最後に選んだ相手。
南の引退を受け止められるのはきっと彼女だけだろうね。
NEW WINDのリングは、今は静かにその時を待っている。
※1 および ※2 GEAR JAPAN編参照のこと。
作者であるNのお遊びです。
↓ご感想などはこちらからどうぞ。
本日のメインイベントは南利美VSハイブリット南。
これが南最後のメインイベント出場。
地元高知を舞台に最後の姉妹対決となる。
シングルで当たるのはかなり久しぶり。
正直な事を言ってしまうとこのカードは“禁断のカード”でした。
ハイブリットの成長と、南の衰え。
この二つの要素を考えると、組めなかった。
常々“妹に負けるようなら引退する”という言葉を口にしていた南だから・・・
だから・・・このカードはできることなら実現させたくなかった。
禁断のカードとなったこのカードが組まれるという事は、南が引退してしまうという事だから・・・
そして対決の時を逃しているうちに南はさらに妹ハイブリットよりもさらに後輩のフェニに敗れ引退を決意してしまったのです・・・
このカードは組みたくなかった・・・でもこれは南の希望。
最後の輝きを妹相手に見せることができるのか。
姉としてではなく、一人のレスラーとして引き際になにを残してくれるのか・・・
私はそれを見届けたい。
もっと大きな会場でやることもできたけど、南の最後のメインイベント出場は地元高知。
収容人数4500人の会場は超満員札止め。
南よ・・・思い残す事なくハイブリットに全てを伝えてくれ・・・
「青コーナー 高知県出身132パウンドー! ハイブリット~南!!」
ハイブリットはアピールすることもなくじっと南を見つめていた。
「赤コーナー 高知県出身132パウンドー! 南~とし~み~~!」
南カラーの紙テープがリングを埋め尽くす。
南はどんな思いでこの高知のリングに立ったのだろう・・・
それは南にしかわからない。
南は四方に丁寧にお辞儀をする。
“今までありがとう”
そんな気持ちが込められているように感じた。
試合はロックアップから始まり、南姉妹らしい関節の攻防へと移行していく。
すでに関節技の技量でも南を上回ったハイブリットがペースを握るが、今日は観客は全て南の味方だった。
南が劣勢に陥ると、大“利美コール”。
いつもなら地元の声援を受けるハイブリットにブーイングまで飛ぶほどだった。
この大声援を背に南は奮戦。
隠しフィニッシュホールドであるジャーマンスープレックスでハイブリットをカウント2.9まで追い詰める。
ハイブリットはとどめを狙う南が組み付いてくるところでカウンターの裏拳。
これをまともに貰ってしまった南はヒザから崩れ落ちた。
場内からは悲鳴があがる。
だけど、南はこれをカウント2.9で返すと、“まさか”という顔をしているハイブリットを強引に倒し、グランドに持ち込む。
必殺のネオ・サザンクロスロックが炸裂。
「まだできるだろ!」、「まだやれるだろ!」と思わせる。
だが、これが南の高知でみせた最後の技。
これを耐え切ったハイブリットは涙を浮かべての裏拳で南をマットに沈めた。
×南利美(13分10秒 裏拳→体固め)ハイブリット南○
「ありがとう高知のみんな。ありがとう・・・ありがとう・・・」
南最後の高知大会は・・・こうして終わった。
リングを去る南に暖かい拍手が送られ、南はその声援に応え、深々とお辞儀をして控え室へと下がっていった。
「あと一試合・・・か。」
私は溜息をつく。
「ええ。あと一試合ね。さすがに体は悲鳴を上げてるわ。この間の新日本ドームのカオスとメガライトはさすがに堪えたわよ。」
南は湿布薬の匂いをプンプンさせている。
私はちょっと鼻を押さえながら・・・
「・・・なんだかおばあちゃんみたいな匂いだな・・・」
と言ってみた。
「ちょっと人が一生懸命にやっているのにひどい言い草ね。私だって好きで湿布臭いわけじゃないのよ。」
「ふふ。完璧じゃないな。」
「うるさいわね。もう完璧じゃないわよ。だから引退するんじゃない。」
南はムキになる。
「ふふ、そういうとこは変わらないな8年間。」
「・・・ま、まあね。でもそれをいうなら社長も同じよ。性格は何一つ変わってないわ。いえ、ちょっと性格悪くなったんじゃないの?」
南の口も結構悪くなったと思うけどね。
「そうかもね。初めの頃はもっとおとなしかったけど、結構ヒールやらされたからね。」
「あのグラサン姿は似合わなかったわね。Ex-sの頃だったわよね。懐かしいわ。」
「あの時は似合うっていってくれたのにね。」
「・・・そうだったかしら? 完璧じゃないわねって言った記憶しかないけど・・・」
南とこうやって話すのも今日が最後か。
なんだか寂しくなるな。
南の引退試合は明日。
九州ドーム大会のチケットは売れ行き好調と聞いている。
あとは当日券がどれくらい伸びるか・・・だね。
「ねえ社長。私はどんなレスラーだった?」
「・・・完璧じゃなかったわね。」
私は南の口真似をする。
「もう!茶化さないで真面目に答えて頂戴。」
「悪い悪い。そうだな・・・いいレスラーだったと思うよ。常に高みを目指すその姿は後輩にも、そして観客にも共感を与え、応援したくなる・・・そんな選手だった。
強さも、もろさもあわせもった、とても感情移入しやすいヒロイン型のレスラー。決して最強ではなかったけど、でも伊達とともにNEW WINDの大事な宝だった。 正直いなくなるのは惜しいね。南さえよければまだ・・・」
南は右手を上げてそれをさえぎる。
「社長、プロレスラーにとって引退は引退ではないって言いたいんだろうけど、ここまでのツアーをしてもらっているし、私に悔いはないわ。だから復帰や引退撤回はないわね。過去にはドーム大会で引退を表明して即復帰した人(※1)や、解散を宣言してそれを撤回した団体(※2)もあったみたいだけど、そんな事は私はしないわ。」
そういうと思ったよ。
「南、明日は悔いを残さないように思いっきり暴れてこいよ。」
「社長こそ、緊張しすぎて倒れないでよ。」
南は笑う。
そう私は明日はリング・アナをやることになっているのだ。
仲間リングアナには悪い事をしたかもしれないけど、最後のコールはどうしてもしてあげたくて・・・以前仲間リングアナの代打でちょっとだけやった事はあったけど、これが実質リングアナ風間のデビュー戦・・・
心よく譲ってくれた仲間リングアナのためにも、きちんと仕事をしないといけない。
「南・・・お疲れ様。」
「社長、まだ早いわ。明日の南利美現役最後の姿をきちんと見届けてね。」
南の引退はとうとう明日・・・九州ドーム大会。
南の最後の輝きを多くの人に・・・見届けて欲しい。
南利美ファイナルマッチはライバル伊達遥とのシングル。
南利美が南利美であるために、最後に選んだ相手。
南の引退を受け止められるのはきっと彼女だけだろうね。
NEW WINDのリングは、今は静かにその時を待っている。
※1 および ※2 GEAR JAPAN編参照のこと。
作者であるNのお遊びです。
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