「引退しようと思って。」
富沢レイの口から出た衝撃発言。
あまりに予想外の言葉に、衝撃を受け思わず引っ張ってしまったが、話を続けよう。
予想していない言葉に私は言葉が出ず「はあ?」と間抜けな声を出すのが精一杯だった。
「ほんとごめんなさい。折角代表に推薦していただいたのに。」
ちなみにハッピープロジェクトはNEW WINDの総資金の25%を投入して作った会社だ。
代表は旧知の者に依頼して快諾を頂いている。
もちろん”ダンディ須永さん”にも相談役に就任して頂き、実際にレスラーを見てもらっている。
「どうしてだ?」
私はうめくような声を出す。
「・・・満足しちゃったからです。今まで100人、200人のところでしか試合したことなかったのに、4000人や8000人の会場で試合をさせてもらえて満足したっていうか。」
わからなくもないが・・・
「それでいいのか?」
「はい。ずっとあこがれていた大きなリングに立てて幸せでした。なぎさちゃんと試合して思ったんです。やっぱりNEW WINDに入ってくる新人の子は違うなって。」
これが富沢のSAYONARAの理由(わけ)か。
「・・・そうか。富沢、決意が堅いようなら引止めはしないが、一つだけ命令していいかな。」
富沢は緊張する。
「はい。」
間。
「来月も試合に出てください。そしてドームで引退してください。」
「・・・私がドームに・・・?いいんですか?」
「レイ大尉、悲しいけどこれって命令なのよね。」
ニヤリと笑う私。
「・・・社長、世代がばれますよ。折角レイとシンなんだから、”ディスティニー”ネタにすべきだと思いますが。」
うっ・・・さすが。
「・・・見てはいたが、笑い飛ばしていたからな。程度の低いシリーズの焼き直し作品だったよ。」
「コスプレをするにはあのザフトの制服いいんですよ。結構人気あったんですから。」
「そうか。」
富沢はちょっと考えてから
「”この先何があろうと、誰が何を言おうと議長を信じろ。”」
と同作品中のセリフを言ってくる。
「”ドラマの親父みたいだな”」
多分こんなん。よく見てないから覚えてない。
「”俺はクローンだ”」
間。
「これでいいのか?富沢。」
「ありがとうございます。わがままを聞いていただいて。」
たった2ヶ月だったけど、NEW WINDに明るさを届けてくれた富沢。
ありがとうの気持ちを込めて最後にドームのリングを味わってほしい。
衣装のデザインなどで今後もお世話になるかもしれないしね。
そして5月シリーズは、カンナの引退ロードとして、メモリアルなカード編成となる。
史上最強タッグの呼び名も高い、伊達との”サイレントヴォイス”最後の結成に始まり、みこととの”ホワイトスノー”、シャイとの”神威シスターズ”の最後の試合を見せ、タッグでの役目を終える。
カンナの歴史はNEW WINDの歴史。
常にトップであり続けたからこそ、一つ一つのカードに思い入れがある。
その後も後輩への伝承試合を順調に消化し、迎えたシリーズ第7戦は九州ドーム大会。
超満員札止めの観客が見守るなか、セミファイナルで組まれたのは伊達遥VSカンナ神威。
全盛期の二人の対決ならば、ドームのメインだったであろうカード。
かつて頂点を競いあった二人の最後の対決となる。
どちらもピークは過ぎているが、それでも出来うる全てをだしての戦い。
伊達の”暴れん坊なヒザ”が、カンナの鋭い関節技が・・・あの頃をフラッシュバックさせる。
「伊達ええ!!」
カンナ渾身の”クロスフェイスカンナ”今までに伊達を何度もタップさせた恐怖の技だ。
飛び交うカンナコールと伊達コール。
じりじりと伊達がロープへと這い、そしてロープブレイク。
「勝機、見逃すわけにはいかない。」
お馴染み伊達のフィニッシュ宣言、そして・・・必殺技”シャイニングフェニックス”がカンナの顔面を貫き、カンナはそのまま静かに3カウントを聞いた。
「負けてしまいましたが、やはり楽しかったですね。」
伊達とはシングルで激闘を繰り広げ、タッグでは組んでよし戦ってよしの好敵手同士だった。
「ありがとう遥先輩、”あなたがいたから私はここまでになれた。”と伝えておいてください。」
直接いわないのは照れくさいからだろうな。
「先にやめるとは・・・思わなかったのに。」
伊達が寂しそうに呟く。
後輩が先に辞めるのは確かに予想していなかっただろうな。
そして“カンナファイナルロード”最終戦 どさんこドーム大会。
第3試合で組まれたのは、富沢の引退試合。
相手は富沢の希望もあって、伊達。
懸命にくらいついた富沢だったが、伊達の余裕を崩す事はできず、最後はフェニックスソードで撃沈。
わずか2ヶ月、されど2ヶ月。
退場する富沢には大きな拍手が送られた。
希望によりセレモニーはなし。
功労者のカンナと同じ扱いでは失礼だと言うことだろう。
「私にとってNEW WINDといえば伊達遥選手でした。最後に戦う事が出来てよかったです。ありがとうございました。」
とコメントを残している。
ハッピー枠1号富沢レイは2ヶ月で引退となる。
なぎさとの試合は前座の名物カードとなりえただけに残念だ。
カンナの引退試合は、同期みことと最後の対決。
熱い攻防を魅せたが、クロスフェイスをロープに逃げられた直後、投げ技を狙って組に行ったカンナを上手くいなし、体勢を入れ替えてから放たれた”草薙流兜落とし”が炸裂し、カンナはそのまま最後の3カウントを聞いた。
セレモニーは苦手というカンナの最後の挨拶は
「これで、さよならです・・・」だった。
カンナ神威は後輩と同期、そしてOB含む先輩たちに見送られ花道を退場してゆく。
花道を歩きながらカンナはマスクのヒモを解き、バックステージに消える直前にマスクを天高く放りあげた。
「北海道出身、“史上最強のマスクウーマン” カンナ~神威~!!」
コールとともにひらひらとマスクは舞い落ちた。
カンナ神威、神威マスクを残し引退。
その後カンナ神威の姿を見たものはいない。
カンナの残した神威マスクは、最強のマスクとして、そしてカンナの身につけたアイテムは最強のコスチュームとして、後の世まで語り継がれていったという。
そして伝説へ・・・
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コメント
無題
なんだかカンナがドラ○エⅢの勇者ロトみたいに・・・南さんや氷室のようにNEW WINDでは(文章的には)目立たなかったが、ついついラストでホロリ(;;)そういえば今回のレイみたいな獲得即引退は自分も23歳の霧島軍曹の時起きました(^^;
posted by 赤猫at 2007/01/30 00:25 [ コメントを修正する ]