NEW WIND社長 風間新 手記「新たなる夢のはじまり」より
※こちらはレッスルエンジェルスサバイバー2のリプレイとなります。
旧作版のNEW WINDとはお話上のつながりはありませんが、登場人物などは一部同じものを使用しています。
「OK、ブレイク!」
レフェリートニー館の声が響く。
他の競技であったならこの技で決まっていてもおかしくはなかったのだが…そうこれはプロレス。祐希子の右足がかろうじてサードロープに届いていた。
「くっ!なんてことですの!」
しかし市ヶ谷も大したものだ。なんと!そのまま離さずにもう一度絞めあげたのだ。
「BUUUUUU!!」
場内からブーイングが飛ぶが市ヶ谷は意に介さない。
そう、これもプロレス。ロープブレイクだからといって馬鹿正直に技を外すだけがプロレスではない。
しかし、デビュー戦のレスラーがこれをやるとは思わなかったな。
「市ヶ谷っ!ロープだロープ!離せコラッ!」
トニー館が注意するが市ヶ谷は離さない。
「市ヶ谷っ!1・2・3・4!」
カウント4で市ヶ谷は力を緩める。それを見てトニー館のカウントが止まるが…市ヶ谷にニッと笑うとまた絞めあげた。
「市ヶ谷っ!」
トニー館レフェリーは市ヶ谷の腕を外しにかかるが、市ヶ谷の腕力は強く、トニー館レフェリーの腕力では技を外せない。
「市ヶ谷っ!!」
トニー館レフェリーはここでローキックを市ヶ谷の背中に叩きこんだ。
あまり知られていないが、トニー館は元レスラーで、基本的な技程度なら使うことができるのだ。
「何するんですのっ!」
背中を蹴りとばされ、市ヶ谷は怒りに満ちた形相でトニー館レフェリーの方を向いた。
「ブレイクだと言っているだろう!」
場内からはトニー館レフェリーへの声援が飛ぶ。
「あんたの相手は私だよっ!」
ここで蘇生した祐希子が再びフライングボディアタック!
市ヶ谷の背中側から決まったため、市ヶ谷は受身をとりそこなった。
「くっ…このっ!」
大きなダメージを受けた市ヶ谷だったが、すぐに起き上がって祐希子に向かって突っ込んでいく。
「はああああっ!」
そこへカウンターぎみに祐希子のボディソバットが決まる。
「そんなへなちょこキックなんてっ!」
市ヶ谷は全くダメージを受けていないかのように祐希子の体を捕まえるとロープへと振り、勢いよくあとを追う。
「死になさいっ!」
ジャンピングニーを放とうとした市ヶ谷に対し、祐希子はロープの反動を利用してトペ・レベルサで反撃。
「このっ!ちょこまかとっ!」
市ヶ谷も大したものだ。トペ・レベルサを食らったというのにダウンせず、そのまま祐希子の首根っこをわしづかみにし、高々と持ち上げた。
「これで終わりですわっ!!」
強烈な喉輪落としが決まり、祐希子の体が大きく跳ねた。
「フォール!!」
市ヶ谷は自信に満ちた顔でフォールに行く。
「OK、ワンッ!」
バンッ!
「トゥ!」
バンッ!
「おおおおおおおっ!!!」
場内から驚きの声があがった。なんとカウント3ギリギリで祐希子が肩を上げたのだ。
「このおっ!生意気ですわっ!」
市ヶ谷はクイックモーションのパワーボムを狙い祐希子の体を高々と持ち上げた。
「ハアアアアッ!」
祐希子は新人離れした動きでこのパワーボムをウラカン・ラナで切り返し、市ヶ谷の体を丸めこんだ。
バンッ!
「ワンッ!」
バンッ!!
「トゥ!!」
トニー館が一瞬タメを作って、場内の視線を一身に集める。
バンッ!!
「スリー!!!」
場内はまさかの結末に新人のデビュー戦とは思えない大盛り上がりを見せた。
「いよっしゃあああああっ!」
勝利した祐希子が吠える傍らで、敗れた市ヶ谷がトニー館に右手の指を3本立てて「スリー?」と確認している。
「ただいまの試合は、8分43秒、8分43秒…ウラカン・ラナによりまして勝者マイティ祐希子!」
「納得いきませんわ!貧弱娘に私が負けるなんてありえませんわっ!」
「ヘヘッ…スリーだよ、スリー!3つ私がとったんだから私の勝ちだよ。」
「あんな姑息な技でなんて認めませんわっ!」
市ヶ谷はほとんど勝っていた試合を落としただけに納得がいかないのだろう。
「ばっかじゃないの?どんな形であれ、3つとった方が勝ちなんだよ。そんなこともわからないの?」
「なんですって!!」
市ヶ谷と祐希子はリング中央で掴みあう。
カン!カン!カン!カン!カン!
仲間リングアナがリングを乱打。ソニックと南が慌ててリングに飛び込み二人を引きはがす。
新人のデビュー戦とは思えない試合展開と試合後のやりとり。これが永遠のライバルとなる二人のデビュー戦であった。
第9話へ
PR
これは生涯を通してのいいライバルになっていきそうですね