NEW WIND社長 風間新 手記「新たなる夢のはじまり~飛翔編~」より
※こちらはレッスルエンジェルスサバイバー2のリプレイとなります。
旧作版NEW WINDとはお話上のつながりはありませんが、登場人物などは一部同じものを使用しています。
「よっし、いけっ!」
レインボー岩城レフェリーの合図でスパーリングがスタート。
「ポニーテールの8番は特に格闘技経験はないようですね。」
「ですな。基礎体力テストは及第点ですが、ブリッジのしなやかさと足腰の強さだけはトップクラスです。」
「つまりスープレックス使いの素質があるということですかね。」
「そうなりますな。もう一人長い髪の88番は、全体的にバランスよく高いレベルを叩きだしています。それになんとか流とかいう古武術を基礎にしているとか。ポニーテールの少女の苦戦は免れないでしょうな。」
ダンディさんの言葉通りリング上では88番の攻撃の前に8番はなすすべもない。
「はっ!」
「いたっ…」
「はっ!」
「いたたっ!」
88番の掌打、ローキックのコンビネーションが面白いように決まる。
「くそおおおおっ!」
8番のポニーテールの少女も蹴りを出していくが、古武術を基本としている88番にはまったく通用していない。
「ふむ…8番の攻撃はすべて回避されていますな。」
「逆に88番の攻撃はすべて当たっている。それなのに8番はまだ立っていられるのか。」
「それだけ強靭な足腰をしているのでしょう。いや、8番は打たれているように見えて実は“受け”ているのかもしれませんな。」
確かにそうかもしれない。
「どう見る越後?」
いつの間にか私の横に立っていた越後に私は声をかけた。
「…受けていますね。本人は無意識でしょうが、ポイントをずらしてダメージを軽減しています。」
「くっ…いい加減に!」
88番の掌打が大ぶりになる。
「!」
それをダッキングしてよけた8番は素早く懐に飛び込みそのまま体当たり!
「やりますね。でも…」
88番はそのタックルを受け止めると8番の首に手をまわし、フロントネックロックに決めた。
「ぐう…」
「どうですか牛絞殺の味は。」
88番はグイグイと絞め上げる。
「うーむ。完璧に決まっていますな。」
「8番、ギブアップか?」
岩城レフェリーが声をかける。
「の、ノー!」
かなり苦しいはずだが8番はギブアップを宣言しない。
「8番は、根性はありそうだな…」
「うおおおおおっ!」
8番は左腕を88番の首に回し、右手を股下に差し込むとそのままブリッジで後方へと放り投げた。
「フロントスープレックス!?」
「うーん。どちらかといえばブリザードスープレックスに近い形ですな。まあ、ピンチを脱出するためにがむしゃらに暴れた結果とも見えますが。」
しかし、8番のブリッジは綺麗だな。無我夢中で投げたにせよ、綺麗なブリッジで投げている。しかも15歳とは思えないBがグリップ力を高めている。
「つう…」
投げた方にばかり気を取られていたが、投げられた88番も完璧な受身で技を受け切っていた。
「相当に鍛練しているようですな。素人の受身ではありませんぞ。」
その後も88番が押す展開が続いたが、8番も投げ技でを流れを食い止める。
「しぶといですね…」
88番の顔に困惑した表情が浮かぶ。
「ま、まだまだあ。絶対にやりたいことがあるんだから!」
8番は肩で息をしながらも目は死んでいない。
「残り試合時間30秒。」
時計係を務めていた越後が残り30秒を宣言した。
「決めます!」
体力に余裕のある88番が先に動いた。
「ハッ!」
強烈なローキックを放つと一気に懐に飛び込む。
「これを出すことになるとは…」
裏投げと同じクラッチで8番の体を捕まえる。
「やばっ…」
8番は危険を察知し、必死にこらえる。
「やああっ!」
なおも投げようとする88番の顔面に8番は張り手を叩き込む。
「つう…」
鼻を叩かれ88番が怯んだ。
「いまだ!」
8番はさっとバックへ回ると両腕を腰に回した。
「これが私のジャーマンよ!」
それはお世辞にもスゴイとはいえないジャーマンだった。最高のジャーマンがレベル9だとするのならばレベル2ジャーマンといったところか。
だが、彼女は…8番はずっとこの技を出すタイミングを狙っていたに違いない。
残り試合時間5秒のタイミングで決まったこのレベル2ジャーマンには、彼女のこの技にかける思いが込められていた。
第2部飛翔編-7へ
PR