NEW WIND社長 風間新 手記「新たなる夢のはじまり~飛翔編~」より
※こちらはレッスルエンジェルスサバイバー2のリプレイとなります。
旧作版NEW WINDとはお話上のつながりはありませんが、登場人物などは一部同じものを使用しています。
私の合図で入ってきたのは、入団テストで素晴らしい動きを見せてくれた88番の長い髪の少女ではなく、ポニーテールの少女…8番の方だった。
「よ、よろしくお願いします。永原ちづるです!」
永原は思いっきり緊張しながら挨拶をした。
「ほう。ジャーマン娘か。」
「はい!永原ちづる、ジャーマンをやるためにプロレスラーになりました。好きな技はジャーマンで、得意な技はジャーマンです。尊敬するレスラーはカール・ゴッチさんです。あとジャーマンが得意な人も好きです。」
永原は元気よくジャーマンの事を語った。
全員あっけにとられていたが、我に返ると拍手で永原を迎え入れた。
「ガルム小鳥遊だ。厳しいこともたくさんあると思うがくじけるなよ。スパーリングの時の“レベル2ジャーマン”程度じゃ私は投げられねえぞ。頑張れよな。」
「は、はい!」
「ロイヤル北条だ。仲間入りを歓迎する。やるからには完璧なジャーマンをマスターするんだ。」
「は、はい!」
大御所二人に声をかけられ、永原は緊張のピークに達しているようだ。
「越後、いろいろ教えてやってくれよ。」
「は、はい。って…なぜ私なのでしょうか、社長?」
「なぜって?…なんとなく。」
「は、はあ…」
越後は困惑の表情を隠せなかったが、私はこれでいいと思う。
「社長、逸材の88番を逃してまで永原を採用したのはなぜですかな?」
採用を決めた時、ダンディさんは困惑の表情を浮かべていた。
「資質で言えば88番の方が上でしょう。彼女はルックスもいいですし、将来的にNEW WINDを背負って立つ存在になったかもしれません。ですが…」
「………」
ダンディさんはじっと私の言葉を待っている。
「…私はあの子の…永原のまっすぐな気持ちに将来を見出したのです。たった一つの技に込める情熱…あれだけあれば彼女はきっと素晴らしい選手になれますよ。しかもそれを実現するだけの土台はあるわけですしね。それに…」
「それに?」
「なんとなくですが、私はあの子を最初から育てないといけない気がしましてね。自分でもなぜかはわからないのですが。」
「なるほど。ならば私もあの子を伸ばす手助けをするとしましょう。」
ダンディさんはやさしい笑みを浮かべた。
「お願いします。あの一途な情熱はきっと“王座への夢の架け橋”へとつながりますから。」
ディアナと永原がトップへと食い込んできたときはきっとすごい団体になっているだろうな。
その時まで二人を優しく厳しく見守っていこうと思う。
◇第4戦広島大会
「いくぞ!」
越後が右腕を突き上げた。
「いけ~ジャスティス~~!」
ちびっこファンからのジャスティスコールが飛ぶ。
「天・空・剣!」
正義のパワーが宿った越後の右ハイキック“天空剣”が桜崎の左側頭部を打ち抜き、そのまま3カウントが入った。
「勝者、越後しのぶ!」
勝った越後に、大きな歓声が降り注いだ。その歓声の大きさは、この日のメインWINDで小鳥遊が十六夜を下し初防衛に成功した時を同じくらいのボリュームがあった。
この試合ではタッグで激突した桜崎と越後だったが、第6戦・第7戦とシングルで連戦を行い、第6戦では天空剣で越後が勝利し、第7戦では、桜崎の新技メイデンストレッチQ(顔面を締め上げる変形のスタンディングストレッチプラム)で桜崎が雪辱している。
一時期は桜崎がリードしていたが、ここにきて二人の実力は五分になってきたといえるだろう。
このシリーズを南&市ヶ谷は欠場し新女のシリーズに参戦し、二人でパンサー理沙子&六角葉月の保持するアジアタッグ王座に挑戦するも、60分時間切れ引き分けで王座奪取には失敗してしまった。(王者組が34度目の防衛に成功。)
「粘りだけは一流ね。」
「勝てる相手でしたのに…残念ですわ。」
勝利は十分あっただけに南・市ヶ谷としてはもったいない挑戦失敗となってしまった。
この激闘を評価され、市ヶ谷は六角の持つアジアヘビー王座への挑戦権を得るが六角のベテランの味に翻弄されギブアップ負けを喫してしまった。
「翻弄されたわね。」
「…悔しいですわね。あんな技で…」
ここで王座を奪取し、MAX WIND挑戦を狙っていただけに市ヶ谷としては残念な結果となってしまった。
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