編集部より。
これは連載126回にて終了した、『NEW WIND社長風間新手記』を加筆・修正した改訂版です。
無駄な部分をそぎ落とし、表現にも手を入れてあります。
印象が変わるかもしれませんが、NEW WINDの歴史を再度振り返っていただければと思います。
これは連載126回にて終了した、『NEW WIND社長風間新手記』を加筆・修正した改訂版です。
無駄な部分をそぎ落とし、表現にも手を入れてあります。
印象が変わるかもしれませんが、NEW WINDの歴史を再度振り返っていただければと思います。
◇2年目8月◇
先月末にAACより、AAC王者『チョチョカラス』が8月シリーズに参戦すると連絡があった。
『AAC認定世界ヘビー級王者』チョチョカラス。
実力はAAC『No1』であり、世界的に見てもトップ10には入る存在だ。
そんな選手がついにうちのリングに上がってくれる。とてもありがたい話だし、旗揚げした頃には考えられないことだった。
うちも誠意を見せよう。今出来る最上級のおもてなしをしなければね。
私はマスコミに次期シリーズの概要についてFAXを送った。
「これなら、文句はないだろう。」
☆サマーチャンピオンズカップ・トルネード(8人参加シングルリーグ)☆
参加予定選手 『AAC世界ヘビー級王者』チョチョカラス、『AACタッグ王者』ジョーカー・レディ&デスピナ・リブレ、『AACJr王者』伊達遥、南利美、マッキー上戸、ラッキー内田、氷室紫月
このリーグ戦の観客動員はチョチョ効果のおかげで絶好調で、3000人会場が面白いように埋まり満員御礼を連発。
これは経営者としては素直に嬉しいのだが、肝心なのは中身だ。
やはり折角きていただいたお客様に「次回も観戦したい。」と思わせる試合をお見せできないようでは困る。
うちの選手たちもデビュー当初に比べればかなり逞しくなり、魅せるプロレスは出来てきている。だけど、まだまだチョチョカラスの存在感には敵わない。
客席が一番沸くのが、チョチョカラスの試合というのは、正直悔しいね。伊達や南の試合が一番沸くようにならないといけないな。
なおリーグ戦は、チョチョカラスが圧倒的な格の違いを見せつけ全勝優勝。
伊達と南の二枚看板はデスピナを撃破する事は出来たが、王者チョチョカラスどころか、ナンバー2のジョーカーレディにすら勝つことは出来なかった。
優勝 チョチョカラス(全勝)
2位 ジョーカー・レディ
3位 伊達 遥&南 利美
リーグ戦で南が現Jr王者伊達を撃破。
この結果、次回のシリーズで伊達VS南のジュニア王者戦の開催が決定。
南の悔しさが力になるか、それとも伊達がエースの意地を見せるか。楽しみな一戦になりそうだ。
さてこのリーグ戦では勝ち星こそ伸びなかったものの、マッキー上戸が『AAC王者』チョチョをかなりの所まで追い詰めてみせた。
得意の投げ&力技を駆使してカウント2.9まで王者を追い込む大健闘。
AAC側はこの戦いぶりを評価し、マッキーは次期シリーズでのチョチョの防衛戦の相手に指名された。
・・・半分かませ犬のつもりかもしれないが、あの試合を見る限りは、マッキーにもチャンスはある!
「マジかよ!これはチャンスだぜ!」
さすがにこの決定には一同びっくりしていた。
「くっ・・・」
伊達とのジュニア王座戦が決まっている南だったが、この決定は不満そうだ。
ジュニアを飛び越してのヘビー王座への挑戦。
伊達&南に比べ遅れていた感のあるマッキーの大チャンス。
このチャンス、逃すなよ、マッキー。
◇2年目9月◇
第7戦高知大会、ここは南の地元。
地元でのタイトル挑戦とあって、超満員札止めの観衆を集めることができた。
この試合最大の山場は23分過ぎ。
南の必殺ネオ・サザンクロスロック(変形STF)がリング中央でがっちりと決まった。
この瞬間、地鳴りのような大歓声が場内に響きわたる!
「南~~絞れ~~!!!」「離すな~~!!」「落とせ~~!!」
観客からの声援は南に集中。
ベビーフェイスの伊達なのに、これでは完全にヒール扱いだな(苦笑)
それにしてもSTFで「落とせ」はないよなぁ・・・フェイスロックだぞ。
必死にロープに逃げようとする伊達。
絞る南! あと少し!
ロープに手が届きそうになった伊達を、リング中央まで引き戻す!
伊達はかなり苦しそうだ。
「遥~~!!」
わずかにいるらしい伊達ファンから必死の声援が飛ぶ。
それに応えるかのようにロープににじりよる伊達。
ついに伊達がロープをつかむと、客席から溜息が漏れる。
(ここだ!)
私はここが勝負どころだと思った。
この技が解けた瞬間が勝負の分かれ目だと。
技を解き立ち上がろうとした南が、一瞬気を抜いたのが分かった。
(あっ・・・)
その瞬間だった。
伊達の『必殺』シャイニングフェニックスが南にクリティカルヒット。
南にとっては痛恨の一撃だったか・・・
バン!
バンッ!
トニー館レフェリーが首を左右に振ってからマットを叩く。
バンッ!
カウント3が入り、伊達の逆転勝利。
南が気を抜いた瞬間を狙い済ましたような一撃だった。
「・・・ありがとう。」
右手を差し出す伊達。
「あそこまで完璧だったのに・・・」
南は伊達の握手を拒否し、マットを殴りつけるとさっさとリングを降りてしまった。
「南はまだまだ強くなれそうだね。」とダンディさん。
「ええ。伊達の存在は彼女にとっていい励みになりますよ。」
伊達遥 初防衛に成功!!
☆AAC認定世界ヘビー級選手権試合 60分1本勝負 ☆
ありがたい事にシリーズ最終戦の鳥取大会は超満員札止めだ。
マッキーの凱旋興行であり、その凱旋興行がタイトルマッチ、しかも団体初のヘビー級のシングル王座挑戦。これで盛り上がらないわけがない。試合開始前から熱気ムンムンだ。
「しかしマッキーが挑戦権を手に入れるとはね~」
「普通は伊達だろ?」
「なんか前回のシリーズでの内容がよかったからさ、王者直々の指名らしいよ。」
「ふーん、かませ犬じゃなければいいいけどさ。」
こういったファンの反応はある程度予想済みだ。
私がファンの立場だったらそう思うだろうしね。
同期より遅れていたマッキーにとってココは大チャンスだ。勝てば、逆にリードできる場面なのだから。
青コーナーから入場してきたマッキーは気合がみなぎっている。
行け、マッキー。
そして試合が始まった。
先月のリーグ戦同様、キャリアおよび総合能力で上回るチョチョの手数が多い。格下のマキー相手でも慢心せず、常に先手・先手をとってくる。
成長したとはいえマッキーは得意技に偏りがある。そのせいか試合運びがまだまだ荒い。
パワーはあるから、一撃一撃は重いので、技さえ決まれば流れを引き戻すことは出来る。
このあたりは伊達・南にはないマッキーの特徴だ。
17分過ぎ、ここまで互角の流れだったが、ここでチョチョが一気にスパート。
ボディスラムでマッキーをリングに叩きつけると、高速でポストに駆け上がり、『必殺』のムーンサルトプレス!
「ぐうっ!!」
マッキーの呻き声が聞こえる。
これはまずいかもしれない、どこか痛めたのかも・・・
マッキーはなんとかこの一撃を2.9でクリア。
右手で左の肋骨を押さえてフラフラと立ち上がる。
そこへチョチョのラリアットが炸裂し、マッキーの体がマットへ沈む。
「マッキー~!」
場内から悲鳴のような声援が巻き起こる。
技は完璧に決まっていたし、3カウントが入る可能性が高い。
「まだだ!」
カウント3寸前でサードロープへ足をかけるマッキー。
「OK.ロープ!」
なんとかロープエスケープで3カウントを回避したマッキーは、ここ一番でしか出さない大技に行く。
「バ・カ・ヤ・ロ~~!」
マッキー渾身の『マッキータイガー(ダブルアーム式ジャンピングパイルドライバー)』が火を噴く。
マッキーならではの豪快な一撃。
だがしかし・・・この一撃を2.5でクリアしてみせるチョチョカラス。
(これが世界レベルか・・・)
今までの外国人選手だったらこれで決まっていたはずだ。
「嘘だろ? マジかよ。」
マッキーは呆然としつつも、起き上がってきたチョチョカラスへ『マッキーボンバー』を叩きこみに行く。
だが、その勢いをボディスラムで切り返えされてしまう。
そして素早くコーナーを駆け上がったチョチョカラスは、再度、ムーンサルトで華麗に舞った。
2度目のムーンサルトプレスを返す力はマッキーには残っていなかった。
「21分47秒、ムーンサルトプレスからの体固めで、勝者チョチョカラス!」
敗れはしたものの、この試合でマッキーの評価は一気にアップ。
伊達・南との差はないと、評価は一気に高まったのだが・・・
残念な事にこの試合でマッキーは肋骨を痛め、次期シリーズを欠場する事になる。
PR