NEW WIND社長 風間 新 手記より。
※このお話は全126話で終了した、長編リプレイNEW WIND編および栄光のスターロード編のアフターストーリーです。
ただし、リプレイではなく創作になりますので、通常のゲーム上ではありえない展開になっております。
その辺りをふまえた上で続きへとお進みください。
単独でも楽しめるとは思いますが、人物の設定などはNEW WINDに準拠していますので、NEW WIND編を先に読んで頂く事をお勧めいたします。
※※ご注意事項※※
ストーリーの都合上、登場人物に恋愛などの設定が加味されています。
そのような表現が苦手な方はご遠慮ください。
17周年記念大会まであと一ヶ月となったある日、NEW WINDの道場に伊達遥の姿があった。
この一月前に道場に姿を現した南は、伝説のレスラーの凄さを見せつけた。
果たして伊達はどうだろうか。
レジェンドの凄さを感じた現役選手たちは伊達が来ても反発することはなかったのだが、ただ一人伊達に噛みついたものがいた。
「あなたが、遠い昔にエースだった方ですの。」
リング上で受身の練習をしている伊達を、リング下から市ヶ谷が挑発する。
「…」
伊達はそれには答えず黙々と練習を続ける。
「ちょっと、私を無視するなんていいご身分ですわね。」
市ヶ谷がさらにつっかかるが伊達は何も答えない。
「キーッ!とことん私を無視するなんて許せませんわ。大体がして伝説だかレジェンドだか知りませんけれど…どうせ単なる昔の人、カビの生えた古臭い生き物にすぎませんわ。」
市ヶ谷は一気にまくし立てる。
「そしてっ!この高貴なる私が上がるリングに、そのようなカビの生えた生き物が上がるなんて、許されることではありませんわ!」
「…」
伊達は市ヶ谷をチラリと見やるがすぐに目をそむけてしまう。
うーん、市ヶ谷は勝手に誤解しているだけなんだよなあ。
伊達は無視しているわけじゃなくて、はじめて会う相手だから人見知りをしているだけなのだよね。
「…あの…」
伊達はようやく口を開こうとしたのだが、すでに市ヶ谷は聞いちゃいない。
「大体あの貧弱貧乳娘が、南だか北だかいう過去の生き物に好き勝手されてしまうからいけないのですわ。ここは現在のNEW WINDで最高の力を持つこの私が、過去なんて現在には不要だという事を証明して差し上げますわ!」
「…あの…」
やれやれ…そろそろ助け舟を出すかな。
「すまないな、伊達。麗華がピーチクパーチクうるさくて。練習に集中できないだろう?」
「あ…社長…別に大丈夫…」
「すまないな、まだまだコイツは成長しきれない雛鳥だから。すまないな。」
「聞き捨てなりませんわね、社長。言うに事欠いて私の事を雛鳥ですって?」
「ああそうだよ。MAX WINDのベルトを奪うことも出来ない半人前の雛鳥だろう。」
私はあえて痛いところをついてみた。
「なっ!」
「なあ伊達、ちょっと久しぶりの実践練習にこの雛鳥を遊んでやってくれないか?」
「…うん…社長がそういうなら…」
「なっ!上等ですわ。私こと過去の伝説などに何の価値もないことを証明して差し上げますわ。」
「…やるだけ…やってみる。」
こうして伝説の『偉大なる鳳凰』伊達遥と、『最凶わがままお嬢様』ビューティ市ヶ谷のスパーリングが行われることになったのだ。
私としては伊達の仕上がりもチェックできるし、伊達とリングで向かい合う事で、市ヶ谷に何かを学んで欲しいという思いがある。
市ヶ谷が頂点へと突き抜けるためには今のままじゃだめだ。
このスパーリングを通じて、市ヶ谷がそれを気づくことができるかどうかだなあ。
「いきますわよっ!」
先ほどの勢いそのままに市ヶ谷が伊達に襲い掛かる。
完全に相手を見下しているのはわかるのだが、市ヶ谷…伊達はリングに上がると別人だぞ。
ドゴオッ!
「がふっ…」
伊達の右ヒザが突っ込んできた市ヶ谷の腹部にめり込んだ。
ガクンとヒザをつく市ヶ谷。
「あっちゃあ…知らないというのは怖いなあ…」と相羽。
相羽は現役時代を知っているし、あのヒザの威力を体で知っている。
「それにしても…現役ではトップクラスの市ヶ谷が一撃でヒザをつくとは…」
「さすが遥さん。姉さんの永遠のライバルなだけあるわね。今のヒザの威力…完璧だわ。」
南三姉妹の三女南智世が嘆息する。
「よ、よくもっこの私にいっ!」
片ヒザをついて立ち上がろうとする市ヶ谷。
「あっ!それ駄目!」
相羽が思わず声を発したが、もう遅かった。
伊達は素早く間合いを詰めると、必殺のシャイニングフェニックスを市ヶ谷の顔面に向かって放っていたのだ。
「ガフッウッ!」
市ヶ谷はゆっくりと後方に倒れこんだ。
うーん…『“暴れん坊なヒザ”の威力は健在なり!』だな。
いくら市ヶ谷が油断していたとはいえ、こうもあっさりとやられるとは。
「なんの、まだまだですわ。ちょっと様子を見ただけですわ。」
ヒザをガクガクさせながら立ち上がる市ヶ谷。
「…そうこなくちゃ…」
伊達は嬉しそうに笑みを浮かべた。
伝説のエースと最強わがままお嬢様のスパーリングはさらに続いたのだった。
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