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2024/04/19 21:44 |
『もう一度あの日のように~再会~その26「再会のゴング 」』
NEW WIND社長 風間 新 手記より。

※このお話は、長編リプレイ『NEW WIND編』および『栄光のスターロード編』の『創作アフターストーリー』です。
 このお話の設定には、ゲーム上では再現できない設定を盛り込んでいますので、ご注意ください。
 単独作品としても十分楽しんでいただけるように留意しておりますが、登場人物の設定などは『NEW WIND編』に準拠していますので、NEW WIND編を読まれているとより楽しめると思います。

 ※※再会試合について※※
 この試合に関しては、ほぼリアルタイムでお話が展開します。

 今回は試合開始のゴングから2分30秒までの出来事です。
  



 トニー館の合図を会場にいる全ての人が待っている。トニー館は伊達と南の様子を確認すると、「レディ、ゴー!!」と声を上げ、右手で本部席にゴングを要請した。

 カアンッ!

 吉崎リングアナがゴングを打ち鳴らし、スカイブルーのリングに『偉大なる鳳凰』と『完璧なる関節の女神』の復活を告げるゴングが鳴り「わあああああっ!」という大歓声が新日本ドームに鳴り響いた。

 伊達と南はコーナーから動かずにらみ合い、お互いの様子を伺っている。
「だて~~!」「みなみ~~!!」
 少しの間にらみ合った二人だったが、二人同時に動き出した。このあたりのタイミングはブランクがあっても関係がないようだ。二人は数歩前に出ると、円を描くようにリング内をゆっくりとゆっくりと右回りに回りだした。数年ぶりの復帰戦…ファーストコンタクトはどうなるのか。場内は固唾を呑んで二人を見つめている。6万人の観客がいるドームにきゅっ!きゅっ!と二人のリングシューズがマットと擦れる音だけが響いている。

「さあ、どうでるか…」
「楽しみですな。」
 きゅっ!きゅっ!きゅっ!きゅっ!
 二人は一定のリズムで円を描きながら、徐々に描く円を小さくしてゆく。二人の距離が縮まって行くのに比例して場内の緊張感が増す。
「……」
 先に動いたのは南だった。リング中央で立ち止まると、左手をゆっくりと上げた。
「力比べですね。」
「基本です。」
 ダンディさんは満足そうな笑みを浮かべた。伊達は躊躇したのか動きがとまり、表情に迷いが出た。それを見て南は上げた左手を前に突き出した。これは「かかって来なさい!」ということだろう。
 伊達は心を決めたか、右手をゆっくりと上げた。お互いの指先が細かく動き、いいポジジョンをとろうと無言の駆け引きが続く。力比べに入るまでの動作でこれだけドキドキするのは初めてだし、今後も経験することはないだろう。場内は二人の指の動きに意識を集中する。そして…南の左手と伊達の右手が合わさると、皆一息ついた。
 しかし、二人の駆け引きはまだ続く。今度は南の右手と伊達の左手が、よいポジションをもとめて、細かく指先を動かしながら徐々に…徐々に接近していく。南の右手と伊達の左手のポジションが決まると、両者は「ハアッ!」「タアッ!」と気合を入れて胸と胸を突き合わせた。

「手四つからのプロレスですね…ダンディさんの教えに忠実ですよ、二人は。」
「ふふ、一期生にはよく言い聞かせていましたからね。嬉しいですよ。」
 徐々に両者の腕に力が入っていく。単純な力比べではあるが、二人の纏うオーラ、そして闘志溢れる表情が観客を惹きつけている。

「やるわね、遙。」
「南さんこそ…」
 二人の力比べは互角だ。
「ハアッ!」「タアッ!」
 二人ともさらに気合をいれて押し込みあう。
 南が押し込むが、伊達はそれを押し返す。「おおっ!」
「みなみ~!!」
「だて~~!!」
 それぞれが優勢になるたびに声援が飛ぶ。気合の入った表情をしている二人だが、久しぶりのライバルとの邂逅ということもあって、両者どことなく楽しそうだ。
「これならどう?」
 南がさらに力を込めれば、伊達も「まだまだっ!」と気合を入れる。
 単なる力比べではあるが、されど力比べ。技を出していないというのに観客の心を掴むあたりは二人ともさすがだな。
「ぐぐぐっ…」
 互角の力比べをみせる両者だったが、1分ほど経ったところで徐々に差が出始めた。先に険しい表情になったのは…南の方だった。
「ぐっ…」徐々に押し込まれていく南。押し込んでいる伊達はまだ余裕のある顔つきだ。
「基礎のパワーでは伊達の方が上か?」
「でも南さんにはテクニックがある。まだどうなるかわかりませんね。」
 実況席のゲストの二人、上戸と内田がお互いの感想を話している。今のところ放送は上手くいっているようだな…二人とも頼むぞ。
「くっ…」南の表情が苦しさを増すのと比例して、南の腕が下へと押し込まれてゆく。
「みなみ~~!!」南を後押しする声援が飛ぶが、劣勢を跳ね返せない。
「タアッ!」
 伊達は気合を入れて、一気に押し込んだ。
「グウッ…」
 あっと言う間に南のヒザがつく。
「…タアッ!」
 伊達がさらに力をこめると、南の体が後ろにのけぞってゆく。
「くっ…」南は必死に抵抗するが、この体勢になってしまっては苦しい。まず挽回は無理だろう。
「南はよく頑張りましたね。」
 ダンディさんはそういうと、顎を右手で撫でた。
「くううう…」
 南はついにリング上でブリッジの態勢にまで押し込まれた。伊達が体重をかけるが、綺麗なブリッジでそれに耐えている。
「南さんは早く抜けないとまずいですね。」
「…だな。あの体勢になった伊達はやっかいだぞ。」
 内田と上戸の表情が険しくなる。確かにあの体勢は危険だ。
「…タアッ!」
 完全に南を押し込んだ伊達は、トンッとリングを蹴ると、腕を支点にして両足を空中へと持ち上げた。南の無防備な腹部へ変形のフットスタンプを決めるつもりか?それともヒザを落とすのか?
「させないっ!」
 伊達の意図を察知した南は、首の力で体を支えながら、さっと足を跳ね上げ、空中で伊達の体を後方へと投げ飛ばした。モンキーフィリップの応用というべきか、それとも巴投げの応用だろうか。だが、技の名称はともかく南が伊達の攻撃を凌いだのは確かだ。

「いいぞ!みなみ~~~!!」
 本部席後方の特別リングサイドから大きな声が飛んだ。
この声の主は”豆腐屋の哲”と呼ばれていた男性だろう。南の大ファンだった彼は南の引退とともに会場から姿を消していたのだが…彼が南の勇姿を見逃すはずがないか。これも一つの再会だな。

 投げ飛ばされた伊達は何事もなかったように立ち上がり、南をじっと見た。その口元には笑みが浮かんでいる。
「…そうこなくっちゃ…」というところだろうか。
 そして、南もまた笑みで返す。こちらは「まだまだこれからよ。」だろう。
 どちらにせよ試合はまだ始まったばかりだ。


 【2:30】

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2008/05/01 18:00 | Comments(3) | もう一度あの日のように

コメント

なんと、自分が登場してる!!
嬉しいですね~
実に良い誕生日プレゼントになりました(^O^)
posted by 豆腐屋の哲URLat 2008/05/01 20:43 [ コメントを修正する ]
伊達が南を押し込んだ時点で、
「あの技だな」と期待しながら読んでいたんですが、
なるほど巧く返したあたりは流石にテクニシャンの南という感じです。

本当は全部終わってからコメントをつけようと思っていたんですが、
予想以上に密度の濃い内容になりそうなので我慢できませんでした。
今後の展開も注目しています。

と、最後になりましたが14万ヒットおめでとうございます。
そして川柳お疲れ様でした。
posted by ライトオURLat 2008/05/01 22:27 [ コメントを修正する ]
>豆腐屋の哲さん

 お誕生日おめでとうございます。
本来はもう少し後半に挿入するつもりだったのですが、お誕生日ということで登場を前倒しにしてみました。
 喜んでいただければ幸いです。

>ライトオさん

 ありがとうございます。
 そう、伊達はあの技を狙っていたはずですが、いきなりあの技はキツイですし、南はちゃんと技を知っているので回避させました。
 序盤も序盤ですしね。
 いや~コメントいただけると嬉しいですよ。この2分半の試合描写に込めたパワーは通常の試合文章よりも遥かに多いですから(笑)
 
 川柳はきっかり作りでしたけど、無事に終わってほっとしています。
posted by Nat 2008/05/02 00:18 [ コメントを修正する ]

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