NEW WIND社長 風間新 手記より
改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。
この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編のその44「女王の座」に該当するお話です。)
「本当か!?」 私の素っ頓狂な大声が社長室に響きわたった。
「は、はい。間違いありません。」秘書の井上さんは耳を押さえながら答える。
「今年の女子プロレス大賞のMVPは『カンナ神威』選手だと連絡がありました。 間違いありません。」
「カンナがMVP。さすがに予想外だ。」
「カンナ・・・頑張っていた…」
「冷静ね、遥。私はてっきり3年連続で遥だと思っていたけど。」
「さすがに私もびっくりしたよ。カンナってそんなに活躍していたか?」
思い起こしてみるが、シングルでの実績はほとんど残してはいないが、タッグ戦線では大活躍だった。
「最近、関係者およびファンの間ではカンナが最強という評価が高まっていました。シングルでは確かに実績がありませんが。」
「うーん…意外だ。」
「最優秀新人賞に吉田龍子、ベストバウトは伊達遥Vカンナ神威のEWAヘビー級選手権試合。ベストタッグバウトはカンナ&結城VSみこと&カオスです。タイトル戦・リーグ戦・トーナメント戦以外の試合が選ばれるのは異例ですね。」
「確かに。たまには目先を変えてみようとミックスしたのだが、確かにいい試合だったし、ファンの評判もよかったのだけど…」
どうも納得いかない。
「仕方がないわよ、社長。結局インパクトなのよ。もっと内容のいい試合があったとしても、インパクトのあるカードの方が上になってしまいがちだから。」
この女子プロレス大賞の結果を考慮し、年明け1発目のシリーズの目玉カードは二つ。
一つは『WWCAタッグ選手権試合』カンナ&永沢が返上後、リン&コーディが保持している王座に、『NEW WIND師弟コンビ』伊達&永沢が挑戦する。永沢としては2度目のタッグ王座戴冠のチャンスとなる。
もう一つは王者伊達にカンナが挑戦する『EWA認定世界ヘビー級選手権試合』だ。
どちらも十分王座移動のありえる楽しみなカードだ。MVPを受賞したカンナがどのような試合を見せてくれるか…ファンのみならず、団体関係者・マスコミ関係者までもがカンナに期待していた。
そして、カンナはその期待を裏切らない。とにかくこのシリーズのカンナは凄かった。
凄みを増した『クロスフェイス・カンナ』で、武藤と結城から4連続タップを奪ったかと思えば、前哨戦のタッグ対決で伊達からもギブアップを奪ってみせた。
一方の挑戦を受ける側の女王伊達は、前哨戦こそ落したものの好調をキープ。
第7戦で組まれたWWCAタッグ戦では、永沢との合体技『師弟愛ボム』で、コーディを沈めタッグ王座獲得に成功している。
「遥さん…やったあ!! だけど…次は」
「…うん…負けられない!」
☆EWA認定世界ヘビー級選手権試合☆
「つええ…」
「マジかよ…」
客席からため息交じりの声が聞こえてくる。試合は24分を経過したのだが、完全なカンナペース。伊達はリズムがつかめないままダメージが蓄積してしまっている。
「遥さ~ん!攻めて攻めて!!」
セコンドの永沢の声は、「声よ、枯れろ!」といわんばかりの大音量だ。
「くっ!」
伊達はフェニックスニーで反撃、倒れかけたカンナをシャイニングフェニックスで追撃したが、ダメージの影響か当たりが弱い。伊達の表情には余裕はなく、いつもの圧倒的な強さを誇る女王の表情ではなくなっていた。
「!!」
カンナは伊達の焦りを感じ取ったのだろう。攻撃に来る伊達からテイクダウンをとると、クロスフェイスに捕らえる。
「…!!?」もがく伊達だが、完全に極められている上に場所が悪い。
「遥さ~ん!!」
「遙!!」永沢と南が懸命にエプロンマットを叩く。
「伊達ええ!!」このカンナ渾身の最後の一絞りで…伊達の心が折れた。
伊達遙、無念のギブアップ。タップを確認したレフェリーの要請でゴングが鳴らされ、場内からは大歓声が巻き起こった。
エース伊達遙、まさかの完敗。この瞬間NEW WINDに新風が吹き始めた。
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