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舞にとっての遥さん 
永沢舞 『maigoroku』より。



 改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。

 この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
 以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編の挿入話「”舞にとっての遥さん” その73.8」に該当するお話です。)

永沢舞『maigoroku』より。

☆師匠伊達遥について☆

 舞にとって遥さんはとても頼りになるタッグパートナーであり、最高の師匠であり・・・そしてライバルであったと思います。遥さんは舞が初めてNEW WINDを観戦した時から輝いている人で、すっごく憧れていたんですよ。スラッとした立ち姿がとってもカッコよくってときめいちゃいました(笑)あ、舞はそういう趣味はありませんよ~。でも、同世代の男の子なんか比べ物にならないくらいカッコよかったです。ああいうカッコいい女性になりたいって憧れましたね。
 「路線が全然違うだろ?」ですって??余計なお世話です。私は遥さんのようなカッコいいレスラー目指しています。
 でも…まさかその遥さんに、舞が弟子入りする事になるとは思いもしませんでしたけど。ちなみに舞が遥さんの弟子としてついていた期間は2年半強でした。期間としては長いような短いような・・・でもこの経験がなかったら、舞は今の舞ではなかったと思います。
 遥さんと組んでの試合経験や、常に最前線で試合をし続けた遥さんの背中を、セコンドとして見続けた経験・・・こういったものが今の舞を支えています。
 遥さんは常に上を見ている人です。普段は大人しい人だし、リング外では小さく見えますけど、ずっと上を目指している人。舞はその背中を見ていました。遥さんとは何度も査定試合という感じで対戦しましたけど、最初は全然歯が立ちませんでした。なんでこんなに差があるのよー・・・ってずっと思っていましたね。舞と遥さん達一期生とのキャリア差は3年。
『3年なんてたいした事ない』と思っていたけれど、想像以上の差がありました、ありました。
 遥さんが専属コーチになってくださった時、私のキャリアは1年でした。ジュニア王座に手が届くかどうかというレベルでしたし、まだまだ新人の域を出ていなかったと思います。
 だから、最初の『ヴィクトリーロード』の時は、まだまだ遥さんに頼っていましたね。
 『2』の頃には、シングルで、1期生の蒔絵さん(マッキー上戸=上戸蒔絵)と佐知子さん(ラッキー内田=内田佐知子)からピンを取ることができるくらいになっていました。すべて遙さんのおかげです。
 あの時の遥さんは、自分のことみたいに喜んでくれました。嬉しかったなあ・・・あ、でも紫月さんに負けたら怒られちゃいましたけど(笑)
 蒔絵さん、佐知子さん、紫月さんはあまり目立たなかったですけど、当時日本女子マット界では10本の指に入る選手でしたし、あの頃は本当に強かったんですよ。
 蒔絵さんのパワー、佐知子さんのクレバーな関節・・・思い出しただけでも、あちこちが痛くなります(笑)なかでも特に紫月さんは強くて、何度も紫龍でギブアップさせられました。「これも運命です。」って何回言われたことか。その度に遥さんに怒られて、練習を一杯させられました。
「なんでこんなに・・・」と思うほど厳しかったなあ・・遥さんは、「舞はもっともっと出来る子だからね。」って口癖みたいに言っていましたね。
 でも舞・・・本当は知っていたんですよ、遥さんが辛かったってこと。
 遥さんにとって1期生の人達は旗揚げから苦楽をともにした大事な仲間で、絆も強くて・・・後輩達の追い上げを感じながらも、みんなで団結して、壁になって、そこで満足しないで上を目指していたわけですから。
 でも苦労して紫月さんを破った時・・・遥さんは満足そうに笑ってくれました。寂しさもあったと思うけど、それを出さないのが遥さん。
「成長したね、頑張ったね、舞。紫月に勝てるようになるなんて、最初の頃は想像できなかったよ。」って優しく言ってくれました。
 でも・・・そんな遥さんでも、寂しそうな顔をした事があります。それは舞が南さんに勝った時。あの時だけは、嬉しいよりも寂しいが強かったと思います。
 遥さんと南さんは本当の同期で、寮に入ったのも同じ日と聞いています。ライバルであり、親友だったわけで・・・舞が南さんに勝った時は本当に複雑だったと思います。ちょうど南さんのパフォーマンスが落ちてきた頃でしたし。もしあれが、全盛期の南さんからだったらまた違ったのかなあ・・・なんて思ったりもします。
 全盛期の南さんには舞は手も足もでなかった印象しかないです。正確に言えば手も足も出すと関節にとられてしまうんですけど(苦笑)
 でも、遥さんは私の頭にポンと手を乗せると、「頑張ったね。」と一言だけ言ってくれたんです。さすが師匠ですね、ちゃんと弟子の頑張りは認めてくれるんです。私はニコッと笑ってこう応えました。
「ありがとうございます。次は遥さんに勝ちますね。」って。 
 南さんを倒した私の次の目標は・・・遥さんになりました。遥さんを倒す為の練習を遥さんに見てもらう・・・そんな状況になっても遥さんは優しく、そして厳しかった。
「舞、そんなんじゃこの先はないよ!」
「舞、できるようになったね。」
この繰り返しでした。
 その後、シングル・タッグ含めて何度も遥さんと当たったけどまだまだでした。

 それでも7年目の12月にシングルで当たった時は手ごたえがありましたね。あと一歩まで行ったけど、最後は遥さんの引き出しの多さにやられました。
 これが『伊達遥の強さ』だと思いました。けれど、もう届かない相手ではない。そう感じたからこそ、社長も遥さんとのタイトル戦を組んでくれたんだと思います。
 そして迎えた運命の一戦。私はその直前の大会で2期生であり、トップグループの一人みことさん(草薙みこと)をフォールしてAACタッグ王座を獲得していました。南さん、みことさんを撃破したという実績は舞に自信を与えてくれました。ファンのみなさんも「今なら勝てるかも」って空気でしたね。

「遥さん・・・今日こそ、恩返しします。」
「私は・・・負けるつもりはない。」
 ゴング前のリング上でにらみあいをした時に交わした言葉です。
 この時の遥さんは最初から本気の伊達遥でした。師匠の顔などどこにもない、一人のレスラーとしての顔。それも日本マット界で有数の実力者。
『NEW WIND=伊達遥』とまで呼ばれる遙さんは、まさに団体の象徴です。
 NEW WINDの女王は伊達遥。カンナさんや千種さん、めぐみさんがどれだけ頑張ってもファンの皆さん、そして関係者も、『NEW WIND=伊達遥』なんですね。
 重い打撃を武器にしているけど、投げ・飛び・関節、そしてパワー…全てにおいて高レベルの遥さん。唯一の弱点は関節に弱いということだけ。舞はそこを突くつもりでしたし、遥さんもそれはわかっていたと思います。
 舞が関節を狙おうとすると、早め早めに打撃で潰されましたし、遥さんは常にロープとの距離を測っていました。さすがですよね。関節を極めさせない戦い方を熟知しているし、極められたときの事まで考えて、常に先を見ているんですよお。
 でもコッチも負けられないんです。遥さんの打撃・・・特にヒザは脅威です。社長の手記でネーミングされた『暴れん坊なヒザ』をいかに食らわないようにするか、そして切れ味・破壊力ともに抜群のハイキックをいかに避けるか・・・この辺りには気を使いました。
 そして・・・舞はついに遥さんを超える事が出来ました。最後はどうしてもこれで取りたかった、舞の一番のお気に入りの技、ドラゴンタイガー(テキーラサンライズ)。
 カウント3までの間がとてもとても長く感じました。もしあれを返されていたら、舞は多分負けていたと思います。もう技は出し尽くしていたし、気持ちが切れてしまっていたかもしれないから。
 よくプロレスって体力を奪って勝利するものだと思われますけど、そうではなくて『もう返したくない』って思ってしまった時、つまり心が折れたら負けなんですよ。相手にもうこの技を食らいたくないと思わせれば勝てるんです。
 色々な思いを込めた『ドラゴンタイガー』は、遥さんの心を折るだけのパワーがあったんだと思います。
 舞は遥さんに勝ちました。それは勝ったというだけで、本当の意味で超えてはいません。
『NEW WIND=永沢舞』 と言われるようになった時、初めて遥さんを超えたと言えると思います。
 だから舞は試合後にこう言いました。
「舞の師匠は・・・ずっと遥さんだけですから」って。
 そしたら遥さんはニコッと笑って、「・・・舞はもともと出来る子だったから。・・・だからもう私にとらわれずに大きく羽ばたきなさい。楽しかったよ、苦労させられたけど。」と言ってくださいました。
 この後社長の指示と、私達の合意もあって、師弟関係ではなくなりましたけど、舞が遥さんから学んだ事はちゃんと生きているんです。

 遥さんに感謝、カンシャ! 師弟関係は形の上では解消されましたけど、舞にとって遥さんは永遠の師匠です。
 『永沢舞を語るには伊達遥抜きでは語れない。』そして『伊達遥を語る上で永沢舞抜きでは語れない』んですよ。


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2009/04/20 18:00 | Comments(2) | NEW WIND 改訂版

コメント

こんばんわ、シローです。
すみませんが記事とは関係ないですが
ちょっと拍手を入れさせて頂きました。
すみませんがご確認お願い致します。
posted by シローURLat 2009/04/21 01:18 [ コメントを修正する ]
 シローさん

 お手数おかけします。
posted by Nat 2009/04/23 00:42 [ コメントを修正する ]

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