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2024/04/24 04:34 |
NEW WINDの物語 第58話「ジダイ」  

NEW WIND社長 風間新 手記より


 改訂版発行にあたり、編集部よりご挨拶。

 この作品は連載126回で終了した長編リプレイ『NEW WIND社長 風間新 手記』に大幅な加筆・修正を加えた作品です。
 以前の作品と比べると印象が変わる部分もあるかもしれませんが、より深みを増した風間新社長率いるNEW WINDの成長物語を楽しんでみてください。
(※今回はNEW WIND編のその73「ジダイ」に該当するお話です。)



◇7年目1月◇

 今月はWWCAヘビーとAACタッグの防衛期限となっている。そこで次代への期待を込めてWWCAヘビーに永沢、AACタッグは永沢&吉田を挑戦させることにした。
 ただIWWFタッグ戦だけは、ベテランにもチャンスを与えようということになった。挑戦するのはジューシーペア。
 ジューシーペアには、進退を賭けるくらいの気持ちを持って臨んで欲しいと思っている。 

◇NEW WIND1月シリーズ 初夢~新風挑戦~◇  

「相変わらずセンスのないシリーズ名ね。」
 南にあっさりと言われてちょっと傷つく私。
「うるさい・・・毎月考える身にもなれよ。」
「横文字とかでもっとかっこよくならないの?」
「苦手なんだよ!」
 さてこんなつまらないやりとりは置いておいてだ。
「ちょっとこんな恥ずかしいツアー名で戦う私達の身にもなってよね!」


 
 伊達と吉田のシングル戦(ノンタイトル)は、シャイニングフェニックスで伊達が勝利。
 先月の6人タッグでの借りを見事に返す事に成功している。吉田の勢いが上回るかと思ったが、まだまだ伊達の壁は高い。
 その伊達に挑戦予定の永沢は結城とシングルで対戦し、ケンカキックで撃沈。
 新人賞を受賞したフェニは伊達とのご褒美シングル。デビュー戦では何もさせてもらえず、3分で撃沈されたカードだ。
 フェニは半年の成長をみせようと奮闘するも、フェニックス・スプラッシュ→ハイキックと畳み掛けられてしまう。誰もがあの時の映像を思い浮かべるほど完璧に入ったハイキックだったが、フェニはなんとかカウント2.8でクリアしてみせた。これには場内から大拍手。
 だが見せ場はここまでで、起き上がった所に伊達は容赦なくもう一度ハイキック。これはさすがに返せず6分49秒で決着。フェニが決めた技はスリーパーホールドのみ。伊達はフェニとの試合になると鬼だ・・・

 ☆IWWF認定世界タッグ選手権試合☆

 結果は60分時間切れ引き分け・・・もどかしい試合だったな。大熱戦の上での引き分けとかではなく、どうもいただけない試合だった。
 じっくりとした攻防と言えば聞こえはいいが、盛り上がりにかけるというか、沸点がない試合という感じだった。時間だけ流れるような・・・そんな感じ。こんな試合になった原因はジューシーペアの熱のなさだろうか。マッキーは熱くなっていたが、それは通常の試合の領域を出ないものであり、ラッキーは冷静すぎた。
 ラッキーの場合は基本的にいつも冷静なのだが、タイトルマッチでも普段のまま。客席のテンションが上がっていたのに試合をする本人があれでは・・・それにジューシーペアにはどこか南に対する遠慮があったと思う。
 いくら衰えを見せているからとはいえ、まだ南の方がジューシーの二人よりは強い。それなのに遠慮してしまっては、どうにもならないだろう。私は正直がっかりしたし、来てくれたお客様に失礼だと思う。この日この試合でジューシーペアの運命は決まったといえる。

☆AAC認定世界タッグ選手権試合☆

「39分21秒、39分21秒 ブリザードスープレックスで勝者永沢舞!」
 永沢のブリザードでみことが沈み、新世代コンビが歴史あるタッグタイトルAACタッグ獲得に成功。吉田のパワーと永沢のブリッジワークが冴え、1期&2期の旧世代コンビを圧倒。最後は吉田が氷室を押さえている間に永沢がブリザードを決めEND。うーん、王者組にも勝機はあったのだが。

「あんなのに負けるなんて、草薙流の恥です。」
 私はこの言葉を聞き逃さなかった。私が言葉の主を探し、後ろを振り向いた時、その主と思われる少女は、背を向けて歩きだしていた。まだ中学生くらいだろうか。帽子を目深に被っていたし、後ろ姿だったから顔はみていない。
「草薙流の恥・・・か。みことの関係者なのかな?」
 私はその少女を目で追ったが顔は確認できなかった。

 
☆WWCA認定世界ヘビー級選手権試合☆

 AACタッグを奪取し、勢いに乗る永沢。対する王者伊達は直前の大会でライバル南を下し、こちらも絶好調である。伊達のヒザが暴れ、永沢の豪快な投げがうなる。
 NEW WINDの時代の象徴といえる伊達と、次代の担い手である永沢。格がまったく違う二人が師弟の間柄になったのは5年目5月。それから2年と半年が過ぎ、あの頃の実力の差はほぼなくなっている。
「このお!」
 永沢の『たいあたり』を受け止めた伊達は、素早くデスバレーで叩きつけた。昔の永沢ならこれで終わっていただろうが、今の永沢は違う。これを2.8で跳ね除けるとストレッチプラムで伊達を捕らえる。
「伊達、ギブアップ!!?」
「だ、だれが・・するか!」
 永沢は『伊達を倒すには関節技が必要』と判断、ここ最近関節技を練習していた。
 ストレッチプラムを自ら外した永沢はサソリ固めに切り替える。『TVで見て覚えた』というサソリ固めだが、なかなかのもの。
 ガッチリと腰を落とし伊達を完全に捕らえている。
「伊達、ギブアップ!!?」
「くっ・・だれがするかあ・・・」
「そんなこと言うともっとキツイのいきますよ。」
 永沢はさらに絞り上げる。
「くう・・・」
 伊達は苦痛に顔を歪めながら、ロープへとにじり寄る。エスケープに成功した伊達は、足を押さえながらゆっくりと立ち上がったが、それは罠。ゆっくりと立ち上がるとみせかけて、いきなりダッシュしてフェニックスニー!!だが永沢はそれを交わすと伊達のバックをとる。
「勝機は見逃しません!」
永沢は伊達の動きを読んでいたのだろう。ここで永沢が繰り出した技は・・・必殺技『テキーラサンライズ』。
 これは師である伊達から直接教わった、永沢の大事なフィニッシュホールドだ。

バン!「1!」
バンっ!「2!」
 レフェリーのトニー館の手と客席が一体となる。伊達はまだ反応しない。
「伊達!返せ~っ!」
「伊達っ!」
 場内から声援が飛び、セコンド陣がエプロンを叩いて声を出す。 レフェリーのトニー館がちょっと躊躇ったように見えた。
『3入れていいのですね?』トニーの目はそう語っていた。私は軽く頷いた。
 そして、トニー館の右手が振り下ろされ、3度目のマットを叩いた。
バンッ!「スリー!!」場内大騒ぎである。
 3カウントが入っても、伊達はまだ動かなかった・・・
「54分36秒、54分36秒 テキーラサンライズで勝者、永沢舞!!」     
 永沢舞、ついに師匠超え!!永沢の目から涙、そして負けた伊達の瞳も潤んでいるように見えた。
 
 なお、この日を最後に師弟関係は解消され、伊達はフェニを指導する事になった。フェニはちょっと不本意そうだったが、ファイトスタイルも似ているしね。
 次代の担い手永沢が華々しく舞ったのがこの1月シリーズだろうか。永沢舞ヴィクトリーロードはこれを持って完結・・・ではなく、彼女の引退の時までそれは続くが、もうシリーズに組み込む事はないだろう。
 なお伊達と永沢のコメントなどは、彼女達の自著を参照してもらいたい。私がここで書くよりも、ずっと気持ちがわかるだろうから。

「舞の師匠は・・・ずっと遥さんですから。」
「舞に負けたのは悔しいけど、嬉しくもあるの。」   
 彼女達のコメントの一部だけここで引用する。
 伊達と永沢、師弟と呼ばれた二人の間に、強い絆があった。だからこそ、この試合は見るものを引き付けたと私は思っている。


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2009/04/19 18:00 | Comments(0) | NEW WIND 改訂版

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