編集部より。
これは連載126回にて終了した、『NEW WIND社長風間新手記』を加筆・修正した改訂版です。
無駄な部分をそぎ落とし、表現にも手を入れてあります。
印象が変わるかもしれませんが、NEW WINDの歴史を再度振り返っていただければと思います。
これは連載126回にて終了した、『NEW WIND社長風間新手記』を加筆・修正した改訂版です。
無駄な部分をそぎ落とし、表現にも手を入れてあります。
印象が変わるかもしれませんが、NEW WINDの歴史を再度振り返っていただければと思います。
◇1年目4月◇
所属選手がいないNEW WINDにとって、これから採用する一期生は、団体の屋台骨を担っていく、大事な存在になるだろう。
記念すべき第一回の新人テストには20名の受験者があった。
「少ないですね。」
私は人数の少なさにがっかり。
「今の時代はこれでも多いほうですよ、風間君。一昔前の女子プロレス全盛期だったら何百人という受験者がいたそうですけどね。」
ダンディさんは苦笑しながら教えてくれた。
プロレスファンであった私だが、男子ばかり見ていたので、そんな時代があったことは知らなかった。
「うちの方針では量より質です。いい素材がいてくれればいのですけど・・・」
「祈りましょうか。」
ダンディさんはからかうように笑った。
「勘弁して下さいよ、ダンディさん・・・」
「冗談ですよ。アップの動きをみていた限りでは一人、二人は合格ラインを超えるはずですよ。」
ダンディさんは真面目な顔に戻る。
「アップの動きだけでわかるものなのですか?」
「ええ。もちろん全部はわかりませんが、身のこなしなどで、ある程度は予測できます。」
さすがダンディさんだな。
フリーのレスラーとして、日本のメジャー、インディ問わずに上がり、アメリカやメキシコそしてヨーロッパでも試合をした経験があると聞く。
その長いキャリアの中で色々な選手をみてきたから出来る芸当なのだろう。
「ちなみにどの受験者がよさそうなのですか?」
「15番と18番ですね。」
ダンディさんは小声でそう呟いた。
一人は160後半の身長の持ち主で、髪はショート。体は背のわりには華奢な印象を受けるが、筋肉はしっかりとついている。なかなか可愛らしい。
もう一人は15番よりは背は低いものの、体はしっかりできている。
「なるほど。確かに鍛えられていますね。」
「ええ。それに二人とも美人です。」
「ダンディさん、うちはアイドル路線では・・・」
「わかっていますよ。うちは強さを求めるのでしょう。でも、強い選手が美形なら問題はないわけですよね?」
「確かに・・・」
「昨今、女性アスリートに注目が集まっていますが、彼女たちの共通点は、『強くて美人』
であるということです。」
これは納得だ。
「なるほど。強くて美人だから人気がでるのですね。」
「そういうことですよ、風間君。スター選手を発掘するには、資質が高く、美人であることが必須です。」
体力テストの結果、ダンディさんがいいと言っていた15番と18番の二人が、合格となった。
二人の体力はダンディさんの見立てどおりだったわけだ。
「内田佐知子です。よろしくお願いします。」
18番の子は内田佐知子。リングネームも自分で考えてきており、ダンディさんとも相談した結果OKを出すことにした。
リングネームは『ラッキー内田』である。
「南利美です。よろしくお願いします。」
15番の子は南利美。16歳と言うことだが、もっと大人びて見える。
「よろしく、二人とも、合格おめでとう。」
この子達がうちの屋台骨を支える大事な一期生の最初の入団決定者だ。
「練習は厳しいぞ。今日の体力テストのメニューはまだ序の口、入寮日までにこれだけはやっておくように。」
ダンディさんは二人に自主練習用のメニューを手渡した。
「はい。頑張ります。」
「完璧にこなせるようにしてみせるわ。」
二人はちょっぴり緊張しているようだった。
「どちらも関節技が得意そうなタイプですね。年齢的な面を考えれば内田の方が伸びそうな気もしますが、私が見たかぎり資質では、南の方が上ですよ。」とダンディさん。
どこを見てそう判断するのかは私にはわからないのだが、ダンディさんがそういうなら間違いはないだろう。
「二人とも九州出身ではありませんでした。」
「それは仕方ないですね。あとは宮崎のあの子が入団してくれるかどうかです。」
宮崎のあの子はどうしてもスカウトしたい。
私は宮崎へと向かった。
背の高いスラッとした少女が携帯片手に歩いている。
どうやらメールを打っているようだが、そのスピードは異常に速い。
「なんてスピードだ。・・・高速メール打ち・・・まてよ・・・」
私はかばんから資料を取り出した。
「・・・メールが好きで、そのメールを打つスピードは高速である。」
と資料に書かれており、添付の写真も目の前の人物と同じである。
「間違いない。伊達遙・・・だ。」
私は不審者に思われないかと、どきどきしながら声をかけた。
「あの、伊達遥さんですよね?」
背丈は170cmくらいだろうか。
「そ・・・そうですけど・・・あ、あの・・・」
少女は明らかに警戒した感じだ。不審に思われたか?
「私はプロレス団体を経営している者なのですが・・・」といって私は名詞を差し出した。
ああ・・・我ながらなんて怪しい自己紹介!
会社を経営しているとかなら、なんとなく分かるけど・・・プロレス団体を経営しているなどと自己紹介して通じるものなのか?
「しゃ・・社長さん?」
・・・通じたらしい。
どうやらこの子は不審に思ったわけじゃなくて、人見知りなのだろうな。
「はい。 伊達遥さんに是非うちの団体に入っていただきたくて、お伺いしたしだいです。」
うーん、これでいいのか?
「・・・はい。」
えっ・・・!?
「入団していただけるのですか?」
この私の問いにコクンと頷く伊達。
私は驚いていた。まだ条件提示もしていないし、どんな団体かも伝えてないのに・・・
色々練ってきた作戦がパーだけど・・・ま、いっか。
「はい。よ・・・よろしくお願いいたします。」
「こちらこそよろしくお願いします。詳しくはまたご説明させていただきますね。」
これでNEW WINDの核となるスター選手候補を確保できた。
『伊達遥を絶対スターにしてやる! 』と、私は宮崎の夕日に誓った。
「ス・・・スターですか?」
伊達は目をパチクリさせていた。
☆登場人物紹介 ダンディ須永 (NEW WIND 総合コーチ兼現場監督)
本名は須永英光。
通称『ダンディ・ドラゴン』
ルチャ系フリー選手としてデビューし、その後もフリー選手として、幾多の団体に上がってきた。
ファイトスタイルは、魅せる華麗なプロレス。
DDTならスイング式、ニールキックはスワンダイブ式、パワーボムならジャンピングパワーボムやランニングパワーボム、垂直落下なら旋回式・・・というように、常に一動作多い。
『ダンディ・ドラゴン』だけに、『ドラゴン』がつく技を多数使いこなす。
フィニッシュに使う事が多いのは『ドラゴン・スープレックスホールド』、と『ドラゴンスリーパー』だが、ドラゴンスクリュー、ドラゴンロケット、ドラゴンバックブリーカーを効果的に使ってくる。
また『ドラゴン・ラナ』『ドラゴンカベルナリア』などその他『ドラゴン』がつく技も得意としている。
『丸め込みの須永』という二つ名をも持ち、『ラ・マヒストラル』、『ウラカン・ラナ』、回転エビ固め、4の字ジャックナイフ固めなど丸め込み技の達人でもある。
なお謎のマスクマン、『ダンディ・ドラゴン』の正体としても有名。
ダンディ・ドラゴン変身中はファイトスタイルに力強さと、荒さが加わる。
さらに顔にペイントを施した『スーパーヒール須永英光』という顔も持ち、華麗なる反則攻撃を使用する。
レスラーとしては早めに引退(40歳)したが、そのテクニックはいまだ衰えていない。
今回これという話題のないNEW WINDの旗揚げの目玉として団体に加わる。
あの須永が育てるなら・・・という期待感を持たせたいというのが団体的な意向。
風間新の叔父とは古くからの付き合いがあった。
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(伊達の高速メールとか)
おいらも色々と手直ししたい所満載ですが、区切りがつくまでは保留してますw